2016年1月28日
今年5月26・27日には「伊勢志摩サミット」が開催されますが、過去のサミットで各国の首脳は何を主張し、何を決めたのでしょうか。9月に「G7神戸保健大臣会合」が予定されている神戸市で、これまでに日本で行われた5回のサミットで主要テーマとなった「エネルギー」「市場開放」「環境」「IT技術」について語り合う〝集会〟が開かれました。
- 主催:
- 読売新聞社
- 共催:
- 内閣官房
映像や議論を通じて過去を学び未来を考える
集会の冒頭では、映像「未来をひらけ!伊勢志摩サミット」を上映。日本がサミット主催国となった各時代の社会情勢や生じた課題、それに対する我が国の取り組みなどを懐かしい映像とともに振り返りました。
パネルディスカッションでは、4人の専門家がそれぞれのテーマにおける現状や見通し、過去のサミットが果たした役割などについての見解を披露。誰もが暮らしやすい未来に向けて、分野を横断して意見を交わしました。
来場者は現代日本がたどった道筋やサミットの重要性を再認識するとともに、伊勢志摩サミットが契機となり様々な課題が解決されることへの期待を膨らませました。
パネルディスカッション
サミットの歩みを振り返る
伊勢志摩サミットに向け、いま何に取り組むべきか。
長年にわたり世界を牽引
1975年に第1回のサミットがフランスのランブイエで開催されてからいままでの間に、世界における日本の存在感はますます強くなりました。主催国を務めたこれまでのサミットで重要な問題に真正面から取り組み、その答えを見いだそうとしたように、多くの国際的な努力の中心には我が国の姿があるのです。
今年の伊勢志摩サミットでは、どのようなことが語られるのか。今日に至るまでの日本の歩みを踏まえながら、皆で考えていきましょう。
【コーディネーター】
髙島 肇久氏(株式会社
海外通信・放送・郵便事業支援機構取締役会長、元NHK解説委員長)
エネルギー 省エネが国際的に浸透
山下 ゆかり氏(一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 理事)
サミットは1973年の第1次石油危機による世界経済の停滞を受けて75年に始まりましたが、第2次石油危機の起こった79年に開催されたのが東京サミットです。各国で異なる原油輸入量の上限枠を設けることなどが決められました。
その後、日本は原子力など石油代替エネルギーの開発・導入やエネルギー源の多様化に取り組み、危機を乗り越えました。ただ、最も重要な役割を果たしたのは省エネです。79年施行の省エネルギー法にも促され、右肩上がりに伸びていたエネルギー消費量を一定水準にまで抑え込みました。
現在では省エネが、より少ないエネルギー消費で経済・社会活動を続けることを可能にする一種の〝エネルギー源〟であるという考え方が、国際的に浸透しつつあります。省エネ先進国である日本が、官民の連携などによってさらに効率的なエネルギー利用の仕組みを確立し、世界でイニシアチブをとっていくことが期待されます。
市場開放 品質とブランド力で勝負
宮治 勇輔氏(NPO法人農家のこせがれ ネットワーク 代表理事、株式会社みやじ豚 代表取締役社長)
1986年の東京サミットでは、貿易自由化に向けた話し合いの中で、農業分野の交渉が難航したとのことで、各国が昔から農業を重視していたことが分かります。
国際的な市場開放を考える上では、海外の安価な産品にどう対抗していくかが重要。日本はほかの先進国と比べても耕地面積が小さく、農業に適しているとはいえません。この条件下では、価格ではなく、品質で勝負していくべきなのです。
日本の生産者は世界一おいしいものをつくる力があります。愛媛県のみかん「紅まどんな」や、近年人気の短角牛などのように、品質を高めてブランド力をつけることがポイントでしょう。また、皆さんも、料理をするなどして、食材の産地を意識するようにしてください。そうすれば、自然と国産品や地元の産品の需要が高まるはずです。
環境 技術・制度・心の豊かさを
北野 大氏(工学博士、淑徳大学人文学部 教授)
環境問題の中でも重要なのが温暖化。2008年の北海道・洞爺湖サミットでは、あらゆる国に責任がある一方、その重さが違うことを示す「共通に有しているが差異のある責任」という言葉が大きく取り上げられました。
日本における対策としては、いかにCO2の排出を抑えるかがカギで、そのためには省エネや最適なエネルギー源の選択が必要です。昨年のCOP21では2013年を起点とした17年間でCO2を含む温室効果ガスの排出量を26%削減することを約束しました。
目標達成のためには、水素社会の実現など、技術によるブレイクスルーや、現在も実施されている再生可能エネルギーの固定価格買取制度など、制度による後押しが不可欠。また、私たちが〝心の豊かさ〟を持つことも大切です。多ければ多いほどよい〝モア・イズ・ベター〟から、十分にあればよい〝イナフ・イズ・ベター〟の意識にシフトすれば、多くの環境問題の解決につながるでしょう。
IT技術 IoTで次代のIT社会へ
原田 要之助氏(情報セキュリティ大学院大学 教授)
日本は1994、5年頃からマルチメディアの普及を目指して様々な実験を重ね、感化されたアメリカも「インフォメーションスーパーハイウェイ」という高度情報通信ネットワークの構想を打ち出しました。その流れの中で行われた2000年の九州・沖縄サミットでは、日本がITの重要性について発信し、世界のIT化のきっかけをつくったのです。
IoT※という言葉が注目されていますが、ICチップなどを駆使して多様なモノがインターネットで結ばれると、エネルギーや環境、農業の分野にも好影響をもたらすでしょう。すでに、家庭内のエネルギー消費を最適化するスマートハウスや、農地の環境情報を収集・分析して利用者に届けるサービスなどが実現しています。伊勢志摩サミットでは、IoTを生かした未来のIT社会が再び日本から発信されることを願っています。
※Internet of Things=モノのインターネット
当日の様子は政府広報オンラインよりご覧いただけます。