2016年8月25日
国内有数のフルーツの生産地である福島県。そこで育まれる様々なフルーツの魅力や生産者の取り組み、思いなどについて語り合う催し「体感!フルーツ王国ふくしまプライド。IN東京」が、先月30日に国際連合大学(東京都渋谷区)で開かれた。多彩なパネリストによるトークセッションなどの模様をダイジェストで紹介する。
トークセッション
石黒 彩さん(タレント)
平尾 由希さん(料理家・フードコーディネーター)
佐藤 ゆきえさん(農業生産法人 まるせい果樹園)
内堀 雅雄知事(福島県)
<司会>槙 あやなさん(フリーアナウンサー)
一年を通して 果物を楽しめる フルーツ王国
槙 フルーツの産地として、福島にはどのような特徴があるのでしょうか?
内堀 いまの時期だと桃、その後は梨、ぶどう、柿、りんご、さくらんぼと、一年を通しておいしい果物が味わえる「フルーツ王国」です。47都道府県の中で3番目に面積が広く、地域ごとに様々な種類のフルーツがとれるのも特徴です。また、桃の消費量は、全国の県庁所在地の中で最も多いのが福島市。地元の人が大好きでたくさん食べているものは、間違いなくおいしいです。
石黒 テレビの料理番組で福島の食材を使用したことがあるのですが、フルーツに限らず、様々な農産物が本当においしいですよね。
福島のフルーツの おいしさを 暮らしの中に
槙 福島のフルーツのおいしい食べ方などを教えてください。
佐藤 福島県民には親しまれている硬い桃ですが、もし苦手な場合は、よく洗って表面の毛を落とすと追熟(ついじゅく:収穫後に熟させること)が進みます。水に漬けっ放しにすると味が抜けるので、水気はすぐにとってください。
平尾 桃は部位により甘さが異なり、上部のお尻のような部分が一番甘く、その次に種の周り、そして中心部と続くそうです。
石黒 体は水分を求めているのに強い空腹感がない運動後にフルーツは最適。我が家では冷蔵庫にフルーツを常備しているのですが、今朝食べた桃は福島県産でしたよ。
槙 フルーツは食べやすくて、運動の時にもいいですよね。
県と生産者が 総力を挙げて 安全対策を実践
槙 安全対策についてはいかがでしょうか?
内堀 食べ物において「安全」は根本です。原子力発電所の事故が起こってからは、農地や果樹の「除染」と「モニタリング検査」という2つの対応を徹底して行っています。これまでに16万件以上、農産物等のモニタリング検査を行ってきましたが、平成25~27年度の3年間、放射性物質の基準値を超えたフルーツ・野菜は1件もありません。
佐藤 私どもの農園では、安全性の確保などに取り組む農場に与えられる認証「JGAP」を取得しており、すべてのフルーツに対して放射性物質検査を行っています。「そろそろいいのでは」という考えもありますが、継続性が大切なので続けているんです。
石黒 取材で福島の生産者を訪ねた際に印象に残ったのが、とにかく素敵な笑顔と「おいしくて安全なものをつくりたい」という熱意です。細かくて時間がかかる検査を「これが信頼につながる」という思いで行っている姿を見て、強い安心感を覚えました。
真手(までい)な農業で おいしさと安心を 全国に届ける
槙 最後に福島やフルーツの生産に対する思いを聞かせてください。
佐藤 私は農業が大好きです。東京生まれの私は福島に来て農家に嫁ぎ、主人に出会って農業が好きになりました。震災などがあっても福島で農業をやり続けていこうと決めた理由は、やっぱり愛だと思います。これからも愛を込めてフルーツをつくり続けていきます。
平尾 一番魅力的なのは、生産に関わっている人たちだと思います。「震災前よりも、もっといいものつくっていかなければならない」とひたむきに努力をされていますから。福島のフルーツを食べるだけでなく、多くの人に福島へ足を運んでほしいです。
石黒 今日、皆さんの話を聞いて、もっといろいろなことを知りたいと思いました。最近では、スーパーなどで福島の農産物を手に取ることが多くなったように感じていますが、これからも子どもたちとおいしく食べさせていただきます。
内堀 福島県民は控えめでPRが苦手といわれていますが、「いま行動しないでどうする」と、汗をかきながら全国で農産物の魅力を伝えている最中です。福島の方言には「真手(までい)」という言葉があり、これは「丁寧に手間ひまをかけて」という意味。「真手」な思いを生産や安全対策に込めることこそが福島の誇り、「ふくしまプライド。」だと考えています。
フルーツ王国体験レポート
生産・研究・販売の現場を取材
トークセッションにも参加した平尾さんが、福島県の生産者や研究機関、農産物直売所などを視察した様子と、そこで感じたことをレポート。農業総合センター果樹研究所では、福島を代表するブランド桃「あかつき」が長年の研究の末に栽培できるようになったという秘話を聞き、「我慢強い福島の県民性が表れていて感心した」と語った。
ハウス桃生産農家である加藤和雄さんの農園を訪れた際には、フルーツに対する深い愛情を実感しただけでなく、「黄金桃」の「いままでの概念を覆すようなシャキシャキとした食感」に驚いたとのこと。レポートには、視察先の一つである「まるせい果樹園」の佐藤さんも同席し、安全性に関する取り組みなど、生産へのこだわりを来場者に伝えた。
平尾さんは、福島のフルーツを使ったオリジナルレシピも発表。「桃とモッツァレラチーズとミントのサラダ」「まるごと桃の焼きドーナツ」という、個性あふれる2品を提案した。
青山ファーマーズマーケット 福島県ブース
大好評で売り切れ続出!
会場前の広場で開催された「青山ファーマーズマーケット」に、福島の生産者がブースを出展した。フルーツはもちろん、トマトやきゅうりをはじめとする夏野菜、シードル(りんご酒)などの売れ行きが上々で、売り切れや品薄の状態となる商品も。東京の地で福島の農産物や加工品の魅力をアピールする絶好の機会となった。
内堀知事をはじめとするイベントの出演者が顔を見せたほか、平尾さん考案の「まるごと桃の焼きドーナツ」(限定500個)の配布も実施。試食した来場者は「福島の桃の自然な甘みが味わえて素晴らしい」と満足していた。