広告 企画・制作 読売新聞社ビジネス局

産婦人科医が解説 子宮頸がんの検診と予防の大切さ

11月は子宮頸がん予防啓発月間です。日本では毎年約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約3000人が死亡しています。他のがんに比べて20代~40代の女性が多く罹患し、ちょうど妊娠・出産時期にも重なることから「マザーキラー」とも言われている深刻な病気です。

子宮頸がんとはどのような病気なのか、予防するにはどのような方法があるのか。女性の健康についてSNSを中心に幅広く発信しており、子宮頸がんなどHPV(ヒトパピローマウイルス)感染症の予防啓発プロジェクト「みんパピ!」のメンバーでもある産婦人科医の重見大介先生に話を聞きました。

今回お話を聞いた産婦人科医の重見大介先生

—— 子宮頸がんという病気について教えてください。

子宮頸がんとは、子宮の頸部にできる悪性腫瘍のことです。日本では毎年1万人程度が新たに診断され、約3000人が死亡しています。また、子宮頸がんと診断されると9割近くの人に抗がん剤の投与や子宮摘出など心身ともに大きな負担がかかる治療が必要となります。

子宮頸がんとは子宮頸部にできる悪性腫瘍のこと(イラストは重見先生監修)

—— 子宮頸がんの死亡者数は1970年から漸増しています(厚生労働省「2018年人口動態統計」より)。その理由は何だと考えられますか。

死亡者数が漸増しているのは、人口の高齢化による影響が大きな原因です。年齢構成の違いを考慮して補正を行うと、死亡者数はほぼ横ばいになります。

ただ、海外では検診を中心とした予防策が進み、年齢補正後の死亡者数は減少しています。一方で日本では横ばいにとどまっていることは予防策が十分にうまくいっていないと考えられ、あまりよくない状況です。

—— 子宮頸がんの自覚症状はありますか。どんな人が気を付ければよい病気ですか。

がんになる前の「前がん病変」と呼ばれる段階では、ほとんど自覚症状が出ません。がんに進行した際には、不正出血やおりものが増える、子宮が刺激に弱くなりすぐ出血してしまうなどの症状が出る場合があります。

子宮頸がんのほとんどはHPVが原因であることがわかっています。このHPVは性交渉を通じて感染するため、性交渉の経験年齢が早かった人は早期発症のリスクが高くなると考えられます。また、喫煙もリスクの一つだと考えられており、喫煙者も気を付ける必要があります。

—— 子宮頸がんの予防方法を教えてください。

子宮頸がんはHPVへの感染が発端となります。性交渉を経験したことがある女性の8割以上は一度感染しているとも言われており、誰にでも関連のあるウイルスなのです。

予防方法としては大きく2つ、がんを早期に発見するという意味で「検診」、ウイルス感染を防ぐという意味では「ワクチン接種」があります。また、子宮頸がんのリスク要因の一つとして喫煙もありますので、禁煙することも予防の一つになります。

—— 予防方法の一つに検診が挙げられると思いますが、検診の対象者及び検診を受ける頻度を教えてください。

日本での検診対象者は20歳以上のすべての女性、頻度は2年に1回が推奨されています。

—— 子宮頸がん検診はどこで受けられますか。

検診センターや婦人科クリニックなど様々なところで受検可能です。額は異なりますが、自治体により費用の補助が出ます。また、職場での検診など集団検診でも受検可能です。

—— 子宮頸がん検診の問診ではどのようなことを聞くのでしょうか。また検診では具体的にどのようなことをするのでしょうか。

問診では、年齢、既往歴、現在治療中の婦人科系の病気、月経の状況、妊娠・出産歴、性交渉の経験有無などについて聞きます。

問診後に診察に移ります。診察では内診台に上ってもらい、まず子宮頸部の視診により目で見て明らかな異常がないかを確認します。次に細いブラシのようなもので子宮頸部をこすり、細胞を取る「細胞診」を行います。最後に触診で、一方の手で腟の中に指を入れ、もう一方の手でお腹を触り、子宮の動きや腫れの有無を確認します。スムーズに進めば診察自体は2~3分以内で済みます。

—— 性交渉の経験がなくても検診を受ける必要はあるのでしょうか。

基本的にはありません。理由は2点あり、1点目はHPVに感染しているリスクがほぼないこと、2点目は検診の際にブラシや器具の挿入などによって痛みを伴うなどのデメリットが発生することです。

HPVに感染している可能性がほぼなければ子宮頸がんに罹患する可能性も低く、無症状であれば検診の診察に伴う痛みなどのデメリットを押してまで検診を受ける必要はないと考えられます。ただし、希望があって検査に同意いただける場合には実施することもあります。

—— 子宮頸がん検診で異常が見つかった場合、その後の検査や治療について教えてください。

前述した細胞診で異常疑いが見つかった場合は組織診と呼ばれる「子宮頸部の組織の塊(2~3mm)を切り取る検査」を行い、異常がないかどうかを確認します。組織診を経て、がんかどうか、がんの前段階である「異形成」であるかどうかがわかります。

「異形成」と呼ばれる段階には軽度・中等度・高度の3段階があります。そのうち軽度・中等度の段階についてはまだ変化が軽く、様子見し検診の頻度を増やすという対策を取ることが多いです。高度と診断された場合は、かなりがんが疑わしい「前がん病変」と呼ばれる段階になります。この場合は早めの治療を検討します。多くの場合、子宮の頸部を1~2cm程度の厚さで切り取る「円錐切除術」を行います(がんが奥の方まで隠れていないかの確認と、がんを取り除く治療の両方を兼ねます)。

子宮頸がんと診断された場合は、切除手術、放射線治療、抗がん剤による化学療法のいずれか、もしくは組み合わせての治療を一般的に行います。

—— HPVワクチンは国による積極的な接種勧奨が再開される見通しです。重見先生はHPV感染症予防啓発プロジェクト「みんパピ!」のメンバーでもいらっしゃいますが、どのような思いで活動に参加されていますか。

まずこのプロジェクトは、ワクチンの接種を勧めることではなく、ワクチン自体の正確な知識を皆さんに持ってもらうことをミッションとしています。

HPVワクチンの存在を知らなかったり、何となく怖いというイメージを持っていたりすることによってワクチンを接種する時期を逃し、接種しなかったことを後悔する人をなくしたい、という思いで活動しています。

10名ほどの有志の医師や専門家で始めたプロジェクトですが、この活動に賛同していただけた方からのクラウドファンディングで活動資金を集め、啓発のためのWEBページやパンフレット、動画などを制作・配布するなどの様々な活動をしてきました。草の根で行ってきた活動ですが、制作物が全国47都道府県の多くの医療機関や複数の自治体等で啓発活動に使用されるなど、活動の成果が見え始めています。

10月末からは来期に向けたクラウドファンディングも実施しており、更なる普及活動に向けて動き始めています。

「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」のHP

—— 本プロジェクトは「かかりつけ婦人科医を持とう」という理念を持っています。婦人科医には何歳ぐらいからかかればいいか、かかりつけ婦人科医を持つ意義についてお考えを教えてください。

婦人科医としては、月経がはじまって少し経ったころに一度来てほしいという思いがあります。月経の状況が問題ないかを確認する意味ももちろんあるのですが、同時に思春期のタイミングで自分の健康を守ることを知ってもらうという意味でも受診してほしいです。

日本はまだまだ学校や親からの性教育が不十分なところがあり、10代で知っておくべき避妊や性暴力、HPVのことを大人が伝えられていない現状があります。一方で法律では13歳以上が性交同意年齢とされており、性教育が不十分である現状と大きなギャップが存在すると思っています。

そのため月経がはじまるタイミングで、そういった包括的性教育の話をする場としてもぜひかかりつけ婦人科医を持ってほしいと思います。

海外では母親が娘にかかりつけの婦人科を紹介するという文化があります。娘が思春期になったら自分のかかりつけ医を紹介するという形も自然かもしれません。また、オンラインで医療相談するというサービスもあります。困ったときにどこからでも専門家に相談でき、疑問を解決できるため、気軽にオンラインでまず相談するということも選択肢としてあります。

—— 自分に合う婦人科を見つけるコツを教えてください。

まず事前にホームページを見たり、電話をしたりすることで、どのようなところに力を入れているのか、自分が相談したいことについて取り扱っているのかを確認することで安心して受診できると思います。また、オンラインでの医療相談も徐々に普及しているので、そういったテクノロジーもうまく活用していきながら見つけていってほしいと考えます。

—— 産婦人科医としてSNSを中心に積極的に情報発信の活動をされています。女性の健康に関する情報は偏ったものもあります。正しい情報を取捨選択するために、どのようなことに気を付ければよいと思いますか。

まずは接した情報の出所を確認することが大事です。国立などの公的な医療機関や研究所、専門学会から出ている情報を参照するといいと思います。

また、情報の取捨選択に迷った際に相談できる場所を持つことも大切です。かかりつけの婦人科医はもちろん、どこからでも気軽に相談できるオンライン上でのシステムを利用することも一つの選択肢として広まってほしいです。

—— 読者へのメッセージをお願いします。

子宮頸がん検診は子宮頸がんの発症や死亡を減らす効果が医学的に証明されているものです。ぜひ20歳以上の女性は必ず受けてほしいと思います。

HPVワクチンに関しても、子宮頸がんを予防するという意味でメリットが大きいワクチンです。年齢などによって個別の条件がありますが、まずはワクチンのことを知っていただき、自分自身で接種について考えてみてほしいです。

産婦人科専門医 / 公衆衛生学修士
重見 大介(しげみ・だいすけ)
2010年に日本医科大学を卒業。臨床の他に、大学院博士課程に在籍しビッグデータを用いた臨床疫学研究に従事している。 また、並行して産婦人科領域の遠隔健康医療相談サービス「産婦人科オンライン」の代表を務める。このほか、「女性の健康と社会課題」を活動の軸とし、HPVワクチン啓発プロジェクト(みんパピ!)、包括的性教育に関する講演や執筆、Yahoo!ニュース個人オーサー、SNSでの情報発信等で活動している。

※肩書等は取材時のものになります。