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これからの私へ。体も心も健康で生き続けるための「プレコンセプションケア」

昨今、女性に関わるさまざまな困難や社会的な課題が日の目を浴びています。とりわけ、女性の健康問題をとりまく社会的状況は決して女性だけの問題にとどめておくわけにはいきません。

月経随伴症状(PMSなど)による年間労働損失は4911億円(日本産科婦人科学会推計)と推定されています。少子高齢化で多くの女性が働きやすい環境改善を果たさなければならない中、「検診や人間ドックを受けた者の割合」は20代・30代の女性が最も低く、30代に関しては男性が77.9%であるのに対し女性は60.5%(厚労省「国民生活基礎調査の概況2019」)に留まっています。

乳がん、子宮頸がんともに患者の若年化が進んでおり(国立がん研究センター、国立成育医療研究センター「院内がん登録 小児・AYA世代がん集計について」)晩婚化が進む中、不妊治療と仕事の両立が困難とする女性は83%(日本産科婦人科学会)にものぼります。これらの問題は産業社会や企業にとって、健康経営に関わる大きな問題と位置付けられています。

そこで、OTEKOMACHIでは、「かかりつけ婦人科医を持とう~#Find My Doctor」プロジェクトを始動します。日本社会で生きる女性の健康のためにタブーを廃し、事実に依った丁寧な情報を、情報の世代間・性別間格差の是正を、OTEKOMACHIサイト上や#Find My Doctorプロジェクト公式SNS、または新聞紙面を通じて発信して参ります。

プロジェクト初回の記事は「小町世代」の健康を考えるうえで重要な考え方「プレコンセプションケア」について取材しました。女性が健やかに充実した毎日を過ごすために、どんなことに気を付ければいいでしょうか。国立成育医療研究センターの荒田尚子先生に聞きました。

「プレコンセプションケア」とは?

国立成育医療研究センター 荒田尚子先生

—— 「プレコンセプションケア」の基本を教えてください。

コンセプションは、日本語では「受胎」、「妊娠」を意味します。直訳すると、プレコンセプションは「妊娠の前」です。プレコンセプションケアは、妊娠前から自分の体や心の状態を知り、毎日の生活や健康と向き合うことを表わしています。妊娠を希望するしないにかかわらず、自分の体と向き合うために重要な考え方です。日本の女性の第一子出産の平均年齢にあたる20代後半から30代前半に限らず、10代前半から40代までの「前思春期」から「青壮年期」までを対象に考えています。現在から未来まで、肉体的な視点からだけではなく、精神的な視点も含めて、自己の尊厳を守り生きるためのヘルスケアを行ううえでとても大切な考え方です。

「プレコンセプションケア」で大切にしたい2つのこと

—— ふだんの生活でケアできることはありますか?

毎日の生活では、「食事」「運動」「睡眠」「ストレス」などに気を付けましょう。バランスの良い食事をこころがけ、1週間に150分の運動をし、ストレスをため込まないようにすることなどが大切です。特に日本の女性の場合、食事の栄養の偏りによる「やせ」の問題が心配です。実際、2015年の国民健康・栄養調査によると、20代女性の「やせ」の人の割合が20.8%に達しています。母体の「やせ」などによる低出生体重児の増加が懸念されます。

また、妊娠を望む場合は、葉酸を摂取するようにしましょう。葉酸は、水溶性ビタミンB群の一種で、細胞の増殖や成長のために不可欠なビタミンです。食事やサプリメントでも摂取できます。このほか、お酒やたばこは過度になると健康を害するので注意が必要です。

—— 医療機関では、どんなケアができますか?

女性は20代後半から子宮頸がん、30代後半からは乳がんなどが増えます。日本では、子宮頸がんや乳がんの検診率は米国などと比べて低くなっていますが、患者の若年化が進んでいます。医療機関で子宮頸がんや乳がんの検診を受けましょう。妊娠を希望する場合は、風疹ウイルス抗体価を測って低ければ風疹ワクチンを、また、性体験の前に子宮頸がん予防ワクチンを接種しましょう。性感染症のチェックはパートナーと一緒に検査することをおすすめします。

プレコンセプションケアチェックプランの様子

意外と知らない「自分の体」パートナーにも知ってもらうきっかけに

国立成育医療研究センターは2015年に日本で初めてプレコンセプションケアの専門外来を開設し、妊娠・出産に関する項目の検査やカウンセリングを行っています。「プレコンセプションチェックプラン」は、妊娠直前の検査のブライダルチェックとは異なり、将来の妊娠のための健康管理をはじめとする自分自身の健康と向き合うためのものです。不妊治療の一環としての利用もありますが、目前に結婚や妊娠を考えていなくても自分の体の状態を知るために受ける人もいます。

プレコンセプションチェックプランをパートナーと受診する人も多いです。妊娠は女性だけの問題ではありません。パートナーとの相互理解はとても大切で、女性のパートナーを持つ男性にとってもパートナーのことを知るうえで重要です。

妊娠するためだけに限らず、すべての人が自分を大切にするために必要なケア

—— 「プレコンセプションケア」を考えるうえで大切な視点は?

プレコンセプションケアは、妊娠を希望する、しない、ジェンダーやセクシュアリティに関係なく必要な考え方です。さらに、「次の世代を育てる」という社会的な視点においても、重要です。プレコンセプションケアによって、若い世代の男女が健康で質の高い生活を送りより健康になることで、より健全な妊娠、出産のチャンスを増やし、次世代の子どもたちをより健康にすることができるのです。

女性のライフサイクルには次の世代に健康をつなぐ機会があります。また一方で、日本の女性の平均寿命は90歳近くまで延びています。生殖可能年齢が過ぎても人生は50年近く続きます。その50年を健康に生きていくためには、プレコンセプションケアとともに、骨量を増やすなど年齢に応じて別のケアも重要になってくることも知ってほしいですね。

※肩書等は取材時のものになります。