多世代が交流を楽しむ千葉幸町団地

多様な世代が安心して生き生きと暮らせるまちづくりのため、URが取り組む「地域医療福祉拠点化」。その現場を取材しました。

千葉幸町団地とは?

(住所:千葉県千葉市美浜区幸町2)
京成千葉線「みどり台」駅から徒歩約10分。JR総武線「西千葉」駅から、バスで約7分。特別養護老人ホームやサービス付きシニア向け住宅のほか、親子交流の場である「子育てリラックス館」や、「地域交流スペース」など施設が充実。

緑に恵まれた環境と交通アクセスの良さで
子育て世代に人気

千葉市美浜区の千葉幸町団地。公園が多く緑に恵まれた環境と千葉市中心部や幕張新都心などへのアクセスの良さから、若い子育て世帯を引き付けている。

千葉幸町団地は、総戸数が5,500戸を上回る大規模団地で、高度経済成長期の1969年に入居が始まった。当時から暮らす住民も少なくなく、近年は、子どもからお年寄りまで地域で暮らす多世代の交流を目的とした活動が盛んに行われている。

11月初旬の土曜日、千葉幸町団地を訪ねると、子どもたちの元気な声が聞こえてきた。

この日行われていたのは、「子どもたちと地域のふれあい伝承遊び」だ。地域の大人たちが子どもたちに昔から伝わる遊びを教えるイベントで、地域の小学生約50人が集まった。少し年長の中学生も、イベントのお手伝いをするボランティアとして参加していた。

「今日の先生は、みなさん、ご近所で暮らしています。今度道で会ったら、あいさつをしましょう」。司会者の呼びかけで紹介された遊びの先生役は、地域で暮らす大人たちだ。

メーン会場は、千葉幸町団地のほぼ中央にある公民館。子どもたちは、先生役の大人たちと一緒に、折り紙で紙風船や紙飛行機を折って飛ばしたり、割りばしと輪ゴムで作った「ピストル」で射的を楽しんだりと、普段あまりなじみのない遊びに熱中していた。

屋外の広場では、先生たちと子どもたちによるベーゴマの真剣勝負が行われていた。鋳物で作られたベーゴマに紐(ひも)を巻き付けて、どれだけ長く回っているかを競う。先生たちは「懐かしい」と笑顔を見せながら慣れた手つきで器用にベーゴマを回す。そんな先生たちに子供たちが勝負を挑む。小学4年生の男の子は「うまく回らなかったけど、面白かった」と興奮気味に教えてくれた。

ビーズを使ったアクセサリー作りも人気を集めていた。女の子は、ピンクやブルーなど好きな色のビーズを組み合わせて作ったブレスレットがお気に入りの様子。ハロウィンパーティーをイメージしたオレンジと黒のビーズでデザインしたブレスレットを見せてくれた男の子もいた。

「地域のつながりから
まちと人のあたたかさを知ってもらいたい」

長岡 正明さん

千葉幸町団地自治会長の長岡正明さんは、先生役の大人たちと一緒に参加し、「子どもたちと一緒に遊んでいると自然と笑顔になる」と話す。長岡さんは、1969年の入居開始当初から千葉幸町団地で暮らしている。こうした子どもからお年寄りまで多様な世代が参加できるイベントを通じて、「自分たちが子育て世代の真っただ中だった昭和の時代のような、地域のつながりから生まれるまちや人のあたたかさを、多くの人に知ってもらいたい」との思いがあるという。自治会が中心となって、街区ごとにお餅つきも行っている。

千葉幸町団地では、伝承遊びのほかにも、夏には「サマーカレッジ」が開かれ、千葉幸町団地で暮らす子どもたちと地域の小学生らが工作教室などを楽しんだ。期間中は、団地内の集会所を自習室として開放するなど、地域ぐるみで子どもたちの学びや成長を応援する土壌を作り出している。

安藤 直裕さん

千葉幸町団地で行われるイベントには、団地で暮らす子どもたちやお年寄りだけでなく、近隣で暮らす人々も多く参加しており、地域交流としての役割にも期待が集まっている。

「幸町2丁目コミュニティづくり懇談会」会長の安藤直裕さんは、伝承遊びをはじめ、この地域で様々なイベントの企画・運営を行っている。安藤さんは、「地域の人々が顔を合わせる機会を増やし、人々のつながり、コミュニティーを作って地域の力を高めたい」と意義を語る。また、「団地があるからこそ、こうしたイベントが可能になり、学校以外の場所で地域の子どもたち同士が思いきり一緒に遊べる機会が増える」とみる。

小学生の2人の子どもを連れてイベントに参加していた女性は、「千葉幸町団地は公園が多く、子どもたちがのびのびできる環境がとても気に入っている。子どもたち向けのイベントも親子でとても楽しみにしている」と語る。

多様な世代が安心して長く暮らせる場所に

千葉幸町団地では現在、子どもからお年寄りまで多様な世代が生き生きと長く暮らし続けることができる住まいとまちづくりに向けた取り組みが進められている。

千葉幸町団地を歩くと、ストライプ模様とさわやかな色合いが織りなす外壁のデザインが目を引く。2018年に外壁の一部がリノベーションされ、全体を明るく優しい雰囲気で包んでいる。部屋では、子育て世代の声を反映した「子育て向けプラン」が登場した。玄関の土間のスペースを広くし、ベビーカーや遊具などを置きやすくしたほか、対面キッチンで子どもを見守りながら食事の準備ができるようにしている。子ども連れでの外出がしやすいよう、エレベーターを設置し、1階にはベビーカー置き場も設けている。

さわやかな色合いと洗練されたデザインの外壁

子どもを見守りながら料理ができる対面キッチン

子連れにもお年寄りにもうれしいエレベーター

室内で場所を取りがちなベビーカー置き場

2014年には、高齢者福祉総合施設「美浜しょうじゅタウン」の全施設がオープンした。特別養護老人ホームをはじめ、サービス付き高齢者向け住宅、小規模多機能型居宅介護事業所、定期巡回・随時対応型訪問介護事業所などを設けているほか、専門家に子育ての相談ができる「子育てリラックス館」も併設する。

北原 由美さん

「美浜しょうじゅタウン」の一角には、天井が高く、光が差し込むスペースがある。毎週月曜日にはこのスペースを使って、カフェがオープンする。冬は暖炉に火を入れ、みんなで近くに集まっておしゃべりを楽しむという。団地で暮らす人の中には、カフェの常連となっている人も多く、「美浜しょうじゅタウン」施設長の北原由美さんは「近所の方々が『しょうじゅのカフェに行こう』と話をされているのを聞くとうれしい」と笑顔を見せる。

北原さんは「開設から6年が経ち、地域での認知度も上がってきた。今後は、お年寄り世帯のゴミ出しや買い物などをお手伝いする方々を地域で募って養成したい」と目標を語る。北原さんは「UR都市機構は全国の団地で様々な取り組みを行っており、他地域の事例など、運営面で参考になる情報が集まっている」とUR都市機構との連携のメリットを実感しているという。

また、北原さんは、自治会長の長岡さんらとともに、3か月に1回のペースで開かれる「幸町二丁目連携会議」に出席し、地域の高齢者にかかわる課題をはじめとした情報交換を行っている。会議はUR都市機構の呼びかけで2016年に発足し、千葉市や社会福祉協議会、地域包括支援センターの担当者らが集まる。UR都市機構は、千葉市と「まちづくりに関する包括的な連携協定」を締結しており、自治体との連携を含めた地域全体での取り組みに重点が置かれている。実際に千葉幸町団地では、自治会や「美浜しょうじゅタウン」などと協力して、子どもからお年寄りまで、誰もが安心して長く住み続けることができる環境づくりが進む。こうした取り組みは、UR都市機構の全国の団地で広がっている。

UR都市機構は現在、団地を地域の貴重な資源として活用し、地域の医療や福祉、介護の総合的な拠点とする「地域医療福祉拠点化」を進めている。目指すのは、多様な世代が生き生きと長く暮らし続けることができる住まいとまちを意味する“ミクストコミュニティ”の実現だ。

少子高齢化をはじめ様々な地域の課題に対応しようと、UR都市機構は地域関係者や自治体と対話を重ね、連携しながら取り組みを進めている。一方で、地域の自助共助の力を重視し、地域との役割分担やコミュニティー運営の担い手の発掘・育成にも力を注ぐ。持続的な地域活性化を目指すUR都市機構の様々な取り組みに、今後も注目だ。

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