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インクルーシブデザインとは、障害のある人や高齢者など、大多数の人とは異なるニーズを抱えるユーザーに、物やサービスの企画・開発の初期段階から参加してもらうデザイン手法です。その根底にあるのは、誰かの「ために」という一方的に助けるという考え方ではなく、「ともに」作りあげていくという考え方です。これまでの社会は、障害がある人を助けなければいけないと思い込みすぎている部分があると思いますが、障害があったとしても常に助けられる側ということではなく、インクルーシブな社会を考えたときには、それぞれの人ができることを生かしていける社会を作っていくことが非常に重要なのです。
今までの日本の社会は、同じ形、同じ色が規則正しく並ぶ、いわばタイルのような社会であったともいえます。しかし、実際にはそれぞれ多様な形や色をしていて個性豊かなはずです。多様さを制約の中に収めるのではなく、多様さをありのまま受け入れるステンドグラスのような社会。それが目指すべきインクルーシブな社会なのです。
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走ろうとしても体が動かず、歩くようなスピードにしかならない。そんな症状が出始めた小学4年生のとき、私が感じていたのは人と同じにできないことが「恥ずかしい」という感情でした。そして、ようやく診断がついた20歳のときに感じたのは「うれしい」という感情でした。自分が悪い訳ではなかった、病気のせいだったのだと。しかしその後、健康な人に私の気持ちが分かる訳がないという孤独と、就職が決まらないことから将来への不安に陥ります。つまり、いずれも病気自体に対する感情ではなく、社会の中で生じた感情でした。
障害者だから、難病患者だから社会で受け入れなくてはいけないというのではなく、個人として向き合い、お互いを尊敬して受け入れることができる社会。そんな社会を作っていければ、誰しもが自分らしく生きやすい社会になると思います。その社会の一員に障害者、難病患者もいるということが想像できれば、真のインクルーシブな社会が実現できると思っています。
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孤独には物理的な孤独だけでなく、自分の居場所がないと感じるような精神的な孤独があります。そのような孤独の解消のために開発したのが分身ロボット「OriHime」です。インターネットを通して操作することで、入院中の患者さんや障害や難病により外出が困難な人が、家族とともに過ごしたり、社会活動に参加したりしながら、人とのつながりを持ち自分の居場所を作り出すことができます。
現在、半数以上の企業で障害者雇用が未達の状態です。その理由として障害者に適した業務がないことを挙げています。私たちは障害が業務範囲を狭めているのだとしたら、テクノロジーで補うことでその制限を変えられると考えています。それを証明し社会に広めていくために、分身ロボットカフェ「DAWN ver.β」をオープンしました。現在、難病や障害を抱えた人たちが、遠隔で「OriHime」を操作して働いています。これは難病患者や障害者だけの問題ではなく、加齢なども含めて誰もがいつそうなるかもしれない当事者です。彼らが先駆者となり外出困難者の働き方と居場所を開拓しているのです。
- 分身ロボットカフェ「DAWN ver. β」
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テクノロジーによる人々の新しい社会参加の形の実現を目指して、株式会社オリィ研究所が運営するカフェ(東京・日本橋)。難病や障害などにより外出が困難な人々が、分身ロボット「OriHime」を遠隔で操作してサービスを提供する。
分身ロボットカフェ「DAWN ver. β」https://dawn2021.orylab.com/ -