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コアコアCPI

物価の動向を示す消費者物価指数(CPI=Consumer Price Index)は、日常生活で消費者が購入する商品やサービスの価格の動きを見るもので、「経済の温度計」ともいわれています。よく購入する食料品、衣料品、電気製品、化粧品や、家賃、通信料、授業料、理髪料などのサービス価格、あわせて582品目の値動きから「総合指数」を算出しますが、調査品目の中には天候に左右されて価格の振れの大きいものが含まれています。

天候などによる影響は除いた方が、経済の正確な温度を測ることができます。このため、総合指数の対象品目から生鮮食品(生鮮魚介、生鮮野菜、生鮮果物)を除いて算出した指数のことを「コアCPI(核となる消費者物価指数)」といいます。

「コアコアCPI(核のそのまた核となる消費者物価指数)」という見方もあります。生鮮食品だけでなく、電気・都市ガス代、ガソリンなどエネルギー価格を除いて算出することが多いです。通信料や高校授業料など政府の政策によって変動する項目を除くこともあります。国内の経済動向を正確に測ろうとしているわけです。ちなみに海外では、食料とエネルギーを除いた指数、つまり日本のコアコアCPIに近い指数をコアCPIと呼んでいます。

国内消費者物価指数の推移(前年同月比伸び率)

多くの消費者は物価が相当上がっているという実感をもっていると思います。にもかかわらず日本銀行が「まだ賃金上昇を伴う物価の持続的な上昇に確信が持てない」という理由でマイナス金利政策を維持し続けているのは、コアCPIだけでなくコアコアCPIも重視しているため、ともいわれています。しかし、「物価の番人」といわれる日銀と消費者の物価に対する認識にズレがあるのは好ましい状況とはいえません。

2023年になってコアコアCPIはコアCPIの上昇率を上回り、夏以降は前年同月より4%程度の上昇が続いています。日銀は23年10月に、23年度のコアコアCPIの上昇率見通しを3.2%から3.8%に、24年度を1.7%から1.9%に、25年度を1.8%から1.9%にそれぞれ引き上げています。異次元の金融緩和の「出口」を探る前提条件は整いつつあるといえそうです。

(読売新聞東京本社編集委員 丸山淳一)