ナラやブナなどの木枝が影を落とす小さな沼。モリアオガエルの繁殖地で、梅雨入りから10日経つ頃に、枝々には白い泡状に包まれた卵が、その後15日ほどでオタマジャクシが見られます。ほとりには、平伏沼とカエルを詠んだ草野心平の歌碑が立てられています。

春のうたなどを代表作とする詩人・草野心平。カエルをモチーフにした詩を多く生み出しており、川内村へ訪れたのもモリアオガエルの生息がきっかけとされています。面影を訪ねるなら、草野心平が村に寄贈した約3,000冊の書籍が残される天山文庫。木立と池のなかにひっそりとたたずむ茅葺き屋根の下で、ノスタルジックな世界にひたってみては。

川内村に古くから伝わる民芸品や土器のほか、福島県内の陶磁器などを数多く展示しています。なかには草野心平と村民の当時の交流の風景を感じることのできるものも。記念館民芸調の建築設計で知られる山本勝巳氏が設計しています。

清流だけに生息するとされるイワナ。川内村では至るところでその姿に出合います。渓流釣りは難しい……という方は、「いわなの郷」へ。釣り堀で元気に泳ぐイワナを釣るのはもちろん、その場で塩焼きにして味わえます。日常生活ではなかなか目にすることのない幻の魚は、お祝いの機会に食べればご利益があるかも。敷地内にはコテージやキャンプサイトがあります。冬場でも宿泊できるため、極寒のなかでのキャンプも楽しめます。

平均標高が400ｍを超える川内村では、大気のゆらぎや市街地の光の影響を受けにくいことから、降らんばかりの星を見ることができます。高塚高原キャンプ場は、役場への申請で無料で利用可能なキャンプサイト。アウトドアチェアに腰かけて星を眺めれば、心からリフレッシュできること間違いなしです。

阿武隈高地の山々を望む標高約700メートルの斜面には、広大なブドウ畑が広がります。2016年から苗木の植え付けが始まり、今ではシャルドネやメルローなど1万本以上が育っています。ワイン醸造所も2021年にオープンし、ブドウは川内村オリジナルのアロマティックなワインに姿を変えます。一口ふくんで目を閉じれば、大自然の香りに酔いしれることでしょう。

村内の高塚山に流れを発する千翁川。苔むした石の間を縫うように水が流れ、夏でもひんやりとした空気が漂います。清らかな水は、川の両端に立つミズナラ、ブナなどの木々による自然の濾過作用によるもの。魚たちも好む清流で、イワナが多く生息することから、渓流釣りを楽しむこともできます。福島の水三十選にも選ばれる名水です。

川内村の自然を堪能したら、「美人の湯」ともいわれる温泉で体にもご褒美を。壁一面に岩を敷き詰めた洞窟風呂のほか、泡風呂、寝湯など、温泉のバラエティも豊富。レストランでイワナ料理も楽しむことができます。