- Vol.1
乳がん編 - Vol.2
高齢者糖尿病編 - Vol.3
片頭痛編

順天堂大学大学院
医学研究科
代謝内分泌内科学 教授
綿田 裕孝(わただ・ひろたか)先生
厚生労働省の2016「国民栄養調査」によると、成人の6人に1人が糖尿病あるいは予備軍とされ、とくに高齢化が進む日本では、高齢者糖尿病の増加が深刻化しています。順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学教授の綿田裕孝先生は「糖尿病と診断されても、血糖コントロールができていれば、健康な人と変わらない生活を送ることができます。そのためには、早期発見と治療を継続することが重要です」とアドバイスします。
糖尿病は新型コロナに感染すると重症化しやすいと聞いて不安です。
血糖コントロールをすることが重要
糖尿病の人すべてが重症化のリスクが高いわけではありません。とくに重症化しやすいのは、血糖コントロールの悪い人に多いようです。血糖値が良好にコントロールされていれば、新型コロナに感染した場合の重症化リスクは大きくはあがらないと考えられています。
むしろ、感染を恐れて定期的な通院や健康診断まで控えてしまうことの方が問題です。新型コロナで重症化しないためには、糖尿病を早期発見し、治療してきちんと血糖コントロールをすることが大切です。さらに高齢者が外出制限のために運動不足にならないようストレッチ等を行うことも重要です。
自覚症状がないので、すぐに治療しなくても大丈夫ですか?
合併症を防ぐため、すみやかに治療
糖尿病で自覚症状が出るのは、病気がかなり進んで網膜症、腎症、神経障害などの合併症を起こしてからです。眼が見えにくくなったり、人工透析が必要になったり、足の感覚がなくなり、最終的に切断しなければならないような場合もあります。こうした合併症による臓器障害が進むと、元に戻すことはできないため、生活の質は著しく低下します。
糖尿病の治療で重要なのは、合併症を起こさずに、健康な人と同じような生活を送れる状態を維持することです。そのためには、自覚症状がない段階から早期に治療を始めることが重要です。
健康診断で、もし糖尿病予備軍(空腹時血糖値100㎎/dL~125㎎/dLあるいはHbA1c6.0~6.4%)と指摘されたら、生活習慣を見直し、糖尿病(126㎎/dLあるいはHbA1c6.5%~)に移行しないよう注意しましょう。
長年の生活習慣をなかなか変えられません。何かよい方法はありますか?
教育入院などで正しい知識を
糖尿病と診断されたら、糖尿病についてしっかり学び、薬物療法とともに食事指導、運動指導も受けられる教育入院というシステムがあります。今後、長くつきあっていく上で、最初に病気のことを正しく理解しておくと、その後の治療がスムーズです。
糖尿病の専門医、専門看護師から直接アドバイスをもらえるというメリットもあります。インターネットなどには科学的根拠のない間違った情報もあり惑わされることも多いようですが、糖尿病の基本的な理解ができていれば、それもなくなるのではないでしょうか。
また、糖尿病食というと、野菜ばかりで質素な印象をもたれがちですが、1週間、病院の食事をとっていただくと、思っていたよりいろいろなものがたくさん食べられることに驚かれる患者さんが多いです。早い段階で教育入院をした人ほどその後の治療もスムーズで、結果的に合併症などで入院することも少なく、健康な人と同じ生活を送れることが多い印象です。
治療を継続するためには、どうすればよいですか?
主治医との信頼関係を大切に
糖尿病の治療は長期にわたるため、疑問があれば何でも主治医に相談できるような信頼関係を築くことが大切です。
糖尿病の治療薬は種類も豊富で、副作用が比較的少ないもの、1日1回の服用でよいもの、OD錠(口の中で溶ける薬剤)など、高齢でも使いやすい薬剤が増えています。
かつては、食事療法、運動療法をしばらく行ったうえで薬物療法を開始していましたが、最近では生活改善を実施した上で、HbA1cの値に応じて早期から薬物療法を開始するようになってきました。