持続可能な未来を拓く新リカレント教育

産官学の連携で大学の教育力をダイレクトに地域社会に活かす

人生100年時代における社会人のリカレント教育(学び直し)に多くの大学が力を入れる中、企業・自治体等のニーズや戦略を踏まえて個別にカスタマイズしたカリキュラムを提供するという茨城大学のユニークなリカレント教育プログラムが注目を集めています。
その先鞭をつけたのが茨城県内に本社を置く関彰商事株式会社でした。この先進的な取り組みが展望する未来について、茨城大学の三村信男学長と関彰商事の関正樹社長が語ります。

働き方を変える学び

三村学長
茨城大学では2016年度から教育改革を行い、学生たちが海外や地域、企業の現場で主体的に学ぶプログラムを構築しました。それと並行して、大学の教育力をもっとダイレクトに地域社会に生かせないか考えてきました。昨年4月に始動した茨城大学リカレント教育プログラムは、地域の企業や自治体ごとのニーズに応じた独自のカリキュラムを提供するというユニークなもので、大変注目されています。関彰商事のカスタムプログラムがその第一弾となり、その後の連携拡大に向けた先鞭をつけていただきました。
関社長
当社は112年という歴史の中で、トップダウンの慣習がまだ強くあります。それに対し、社員が自ら考え、改善していく雰囲気、習慣を日常的に社内に生み出したいと考えていました。三村学長からリカレント教育プログラムの提案を聞き、またとない機会だと考え、参加を決めたわけです。
三村学長
関社長は最初から、すぐ仕事に結びつくものというより、哲学や歴史、環境、地域の特性といった、教養を深めて視野を広げるようなものを要望されていましたね。
関社長
当社の場合、ある程度決まった答えがすでにあるような一般的な研修プログラムではなく、まず考えるというプロセス自体を大切にしたかった。その習慣を根付かせるには、大学という学びの場は最適であると感じました。
三村学長
社員のみなさんに変化はありましたか。
関社長
今年度だけで43人の社員が自ら志願をしてプログラムを受講しましたが、それぞれが「職場の環境を俯瞰的にとらえることができるようになった」「仕事の仕方が変わった」といった実感を得ているようです。学ぶことで芽生えた気持ちが、日常の業務にも生かされているということですね。私自身、常に社員の自己研磨を推奨する企業を目指していきたいと思いますし、他の企業にも大学でこのような機会を得られることを知っていただきたいですね。

社会の大転換期における
大学、企業、自治体の連携

三村学長
社会が大転換期にある今、働く現場では、変化に対する多様な視点と、広い視野で将来の姿を考える力が必要とされています。当初から関社長は、「この会社に勤めたことで人として成長できた」と思える経験を提供する会社でありたいと話されていました。実はその言葉を聞いて、個々の企業を対象とするプログラムも人の成長という点で高い公共性を有していることに気付いたのです。
関社長
リカレント教育プログラムを受け、視野が広がり周りが見えてくることで、自分が頑張ってこられたのは自分の努力によってだけではないと分かってくる。そういう人間が、部下を正しく評価できる上司になっていきます。自ずと会社全体の雰囲気も変化していくでしょう。
三村学長
そういった社会の新しいニーズを知ることは、大学が変わる大きな契機にもなります。10代からシニア世代までの幅広い層の人たちが、それぞれの背景や課題を抱えながらひとつの場に集まり一緒に学ぶ体験を重ねることは、持続可能な地域づくりの原動力になるのではないでしょうか。大学と企業、自治体などが連携しながらそういう教育システムをいかにつくれるか、大学の新しい役割を真剣に考えるときだと思っています。
関社長
いろいろなところに勉強に出かけて、さまざまな年齢、境遇の人に出会い、他者がそれぞれ異なる目標や夢を持ち、苦労しながら勉学にいそしんでいることを理解し、互いを尊重する、そういう考え方ができる人材を一人でも多く増やしたいと、最近とみに感じています。
三村学長
それは、社会の健全さのベースをつくることですよね。茨城大学でも、5学部を有し、多面的な知を提供できる強みを生かした地域創生の知の拠点づくりを進めていきたいと思います。

みむらのぶお●茨城大学学長。専門分野は地球環境工学、海岸工学。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」で第2~5次評価報告書の主執筆者・統括主執筆者を務めた。

せきまさき●関彰商事株式会社代表取締役社長。「軸足は地元茨城に中心を置きながら、海外を含め外へ出ることで、さまざまな情報を入手し、健全なる次世代に向けてさらなる成長を目指します」と語る。

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