CO2削減 水素活用と市場ルールの整備を~読売カーボンニュートラル・デイVol.3<前編>

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2023.9.28
CO2削減 水素活用と市場ルールの整備を~読売カーボンニュートラル・デイVol.3<前編>

セッション1:エネルギーの脱炭素化、水素社会が実現する未来

◎資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長 井上博雄氏
◎千代田化工建設会長兼社長 榊田雅和氏

コーディネーター 政井マヤ氏
コーディネーター 政井マヤ氏

水素活用次は実用化

――脱炭素化に向けた日本の取り組みは。

井上博雄・資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長 国際的に見て非常に低い日本のエネルギー自給率の改善とカーボンニュートラル、経済成長をいずれも実現させるという「三兎(さんと)」を追わねばならない状況にある。こうした中、世界的に(新エネルギーとしての)水素への注目が集まっている。実は日本は、技術的にトップランナーで、6月に水素基本戦略を改定した。柱の一つは、強みとする水素で産業競争力を高め、経済成長を果たすことだ。

――民間企業として、どう取り組んでいるのか。

榊田雅和・千代田化工建設会長兼社長 エンジニアリング企業として、昨今は太陽光や大型蓄電設備といった再生可能エネルギーに取り組んできた。水素を使ったクリーンエネルギー、CO2(二酸化炭素)の貯留・利用の分野も積極的に進めている。エネルギーと環境の調和を図るのが、役割と考える。

資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長 井上博雄氏
資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長 井上博雄氏

――GXのカギとなる水素の実用化をどう進める。

榊田氏 水素のサプライチェーン(供給網)の実証実験は完了した。どう社会実装させるかが課題で、水素のコストダウンも欠かせない。今まで以上の技術改良で実現させたい。

井上氏 水素利用は、供給の安定性とコストが非常に重要。「GX経済移行債」の活用を検討しつつ大胆に後押ししたい。需要が拡大しないと(水素)価格は下がらない。幅広いモビリティーや発電のクリーン化など、あまり進んでいない分野で広げる必要がある。

――水素以外で今後導入が望まれる次世代技術は。

井上氏 日本が非常に強い(空気の熱エネルギーを空調などに使う)ヒートポンプは欧州でますます売れ筋となっている。(天気で発電量が変動する)太陽光、風力発電に対応する蓄電池や水素製造装置も大事だ。様々なイノベーション(技術革新)を官民の新たな連携で大胆に進めたい。

榊田氏 新エネルギーも注力するが、既存エネルギーの脱炭素をどう実現するか。LNG(液化天然ガス)設備でのCO2の回収・貯留をはじめ、「クリーナー(よりクリーンな)LNG」の技術などがポイントだ。

――民間企業として、政府にどんな後押しを望むか。

榊田氏 新エネルギーの普及は時間がかかる。企業単独でLNGなどの既存エネルギーと事業を両立させるのは厳しい。さらなるサポートをお願いしたい。

――政府から国民や企業への期待は。

井上氏 新たな官民連携で課題を解決する市場をつくり、人々の生活レベルを上げていく。GXは、その一丁目一番地となる。

千代田化工建設会長兼社長 榊田雅和氏
千代田化工建設会長兼社長 榊田雅和氏

セッション2:GXリーグ本格始動、脱炭素と経済の活性化

◎経済産業省環境経済室長補佐 中山竜太郎氏
◎日立製作所サステナビリティ推進本部長付 高橋和範氏
◎東京証券取引所カーボン・クレジット市場整備室長 松尾琢己氏

CO2削減へ市場ルール作り

――始動したばかりのGXリーグとは。

中山竜太郎・経済産業省環境経済室長補佐 官民連携でGXや社会変革を促すための構想と考えてほしい。取り組みには、CO2の削減、脱炭素ビジネスの創出、そして、削減の取り組みが(企業などの価値として)評価される市場ルールの形成がある。

経済産業省環境経済室長補佐 中山竜太郎氏
経済産業省環境経済室長補佐 中山竜太郎氏

――GXリーグ参画企業としての取り組みは。

高橋和範・日立製作所サステナビリティ推進本部長付 グリーン戦略には二つの柱がある。社内の生産活動に伴うCO2排出量を実質ゼロにすることと、製品、サービスを通して顧客の排出減に貢献すること。「クライメイト・チェンジ・イノベーター(気候変動問題を解決に導くリーダー)を目指す」という考えを実現するために参画した。

日立製作所サステナビリティ推進本部長付 高橋和範氏
日立製作所サステナビリティ推進本部長付 高橋和範氏

――GXリーグの要となる「カーボン・クレジット市場」について。

松尾琢己・東京証券取引所カーボン・クレジット市場整備室長 10月の開設を予定している。売買の対象は(温室効果ガスの排出削減量や吸収量を国が認証する)J―クレジットで、東証が口座を持つ中継点となる。売買の値が指標化されると、カーボンプライシングなどの材料として考慮されやすくなると思う。GXリーグの定着、発展と共に歩む、息の長い取り組みだ。多様な参加を期待する。

東京証券取引所カーボン・クレジット市場整備室長 松尾琢己氏
東京証券取引所カーボン・クレジット市場整備室長 松尾琢己氏

――GXリーグの課題は。

中山氏 (排出削減に)役立つ技術があれば、企業評価に組み込むべきだと議論している。自社の製品、サービスがどれだけ削減に貢献したかを市場に訴求する仕組みも重要だ。それらを考える場として機能させていきたい。

→後編へ続く

主催=読売新聞社
後援=経済産業省、環境省、林野庁
協賛=千代田化工建設、Earth hacks、NTTドコモ、三菱地所、東京証券取引所、ナイス
協力=日本ウッドデザイン協会、日立製作所

* 日本ウッドデザイン協会は、木のある豊かな暮らし、木材利用、脱炭素など、木を活用した社会課題解決を推進している。脱炭素プロジェクトを推進している読売新聞東京本社は、本年8月に同協会に入会した。

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