人々の行動変化が大きなうねりに~読売カーボンニュートラル・デイVol.3<後編>

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2023.9.28
人々の行動変化が大きなうねりに~読売カーボンニュートラル・デイVol.3<後編>

セッション3:始めよう、脱炭素なくらし

◎環境省地球環境局デコ活応援隊隊長 井上雄祐氏
◎Earth hacks社長CEO 関根澄人氏
◎NTTドコモサステナビリティ推進室長 武田有紀氏

無理なく楽しく行動変化

――個々人の暮らしの中で脱炭素を進める取り組みも進んでいる。

井上雄祐・環境省地球環境局デコ活応援隊長(脱炭素ライフスタイル推進室長) 政府として「デコ活」を進めている。CO2を減らすだけでなく、同時に豊かな暮らしに変えるという国民運動だ。例えば、家庭での省エネやテレワークを進めることで、やがて家計に余裕ができ、ゆとりを生み出す。温室効果ガス削減目標の達成に向け2030年度までに家庭から排出されるCO2を66%も減らす必要がある。企業、自治体などと共に「デコ活」を後押ししたい。

環境省地球環境局デコ活応援隊長(脱炭素ライフスタイル推進室長) 井上雄祐氏
環境省地球環境局デコ活応援隊長(脱炭素ライフスタイル推進室長) 井上雄祐氏

関根澄人・Earth hacks社長CEO 生活者が主体的に脱炭素に取り組めるような商品やサービスを開発している。その一つは、「デカボスコア」。ある製品が従来の商品と比べて、どれくらいCO2削減に貢献しているかを「何%オフ」で明示している。デカボスコアに基づき商品を割引したり、次の削減に向けた指標にしたりできる。脱炭素を我慢するのではなく、楽しくし、称賛することで前向きに取り組めるようにしたい。

Earth hacks社長CEO 関根澄人氏
Earth hacks社長CEO 関根澄人氏

武田有紀・NTTドコモサステナビリティ推進室長 日本で携帯電話は基地局の稼働や利用者の充電などで、年間で車1000万台と同程度のCO2を排出している。日本全体の温室効果ガス排出量における、当グループが自社で排出する割合は0・1%に相当する。こうした中で、基地局に太陽光発電を導入するなどグリーン化を進めている。個々の活動でどれだけCO2を削減したかを可視化できるサービスも始めた。

NTTドコモサステナビリティ推進室長 武田有紀氏
NTTドコモサステナビリティ推進室長 武田有紀氏

――生活者と政府に対する期待は。

武田氏 学学校でSDGsの学習が始まるなど、環境への関心層は非常に広がっている。削減が可視化される色々なサービスを使ってもらい、少しの行動変容でも、皆が集まれば温室効果ガスの削減を達成できるとの実感を持ってもらえればと思う。民間企業だけでは大きな影響力を及ぼせないため、政府と一緒にこうした動きを発信したい。

関根氏 無理なく楽しい2050年を生活者と目指したい。愛媛県と共同で今治タオルのブランディングに取り組んだ際、高品質で環境にもよいタオルに「デカボスコア」を付けたら、1・2~2・7倍ぐらい売れた。ただ、企業にとっては、(コストを懸念し)初めの一歩を踏み出すのがなかなか難しい。ここを政府はサポートしてほしい。

井上氏 一人ひとりが環境や世の中に良い活動をすれば、大きな束となり、地球を変えていく。小さなうねりが大きな変革につながる。これを国際的に発信する機会を作っていこうと思う。また、皆さんの暮らしを良くするため、補助金の活用を含めて全力で支援していきたい。

セッション4:国産木材活用と循環型社会を考える

◎林野庁木材利用課長 三上善之氏
◎三菱地所木造木質化事業推進室長 森下喜隆氏
◎ナイス上席執行役員資材事業本部副本部長 髙木靖氏
◎日本ウッドデザイン協会専務理事 末広耕也氏

国産木材使って植える

――国産木材の活用がなぜカーボンニュートラルにつながるのか。

三上善之・林野庁木材利用課長 日本は国土面積の3分の2が森林だ。4割は人工林で半数以上が樹齢50年を超え、切って使う時期を迎えている。森林はCO2の代表的な吸収源。木材内のCO2は建物などへの使用で長期間、排出されずに「固定」され、その量は京都議定書による吸収量に算定できる。木質バイオマスの利用も排出削減に貢献する。切って使って植える、さらに育てて……という循環づくりがカーボンニュートラルや林業活性化に重要だ。

林野庁木材利用課長 三上善之氏
林野庁木材利用課長 三上善之氏

――民間として国産木材活用をどう進めているのか。

森下喜隆・三菱地所木造木質化事業推進室長 中高層や大規模の建築物の木造・木質化を進めている。鹿児島県湧水町では、工場を新設し、建築用木材から住宅の製造・販売までを一気通貫で行っている。国産木材で建材をつくり、おが粉は燃料にするなど、丸太を無駄なく使い切っている。循環型社会で木が非常に使いやすいことを証明したい。

三菱地所木造木質化事業推進室長 森下喜隆氏
三菱地所木造木質化事業推進室長 森下喜隆氏

高木靖・ナイス上席執行役員資材事業本部副本部長 木材の流通事業がルーツで、建材から戸建て住宅まで事業を広く展開している。全国に木材市場や木材加工工場などがあり、建築現場の工程に合わせて納材する流通ネットワークを築いた。全国の製材会社と連携し、「家1棟分に使う木材を全て国産材に」という活動に注力している。

ナイス上席執行役員資材事業本部副本部長 髙木靖氏
ナイス上席執行役員資材事業本部副本部長 髙木靖氏

末広耕也・日本ウッドデザイン協会専務理事 「ウッドデザイン」は造形に限らず、木を活用した社会課題の解決を目指す取り組みだ。木の価値を再発見させる製品や活動を生活者目線で評価する「ウッドデザイン賞」も実施している。8年間で1850点の受賞作は木材利用の優良事例のショーケース。森や木材を活用した地域の取り組みやビジネスモデルの発掘にも貢献してきた。

日本ウッドデザイン協会専務理事 末広耕也氏
日本ウッドデザイン協会専務理事 末広耕也氏

――国産木材の活用に向けて必要なことは。

森下氏 建築基準法の改正が重要である一方で、中高層・大規模建築で木材を使う環境は整いつつあり、業界内外の連携も進んできた。消費者の意識改革を重視しビジネスを進めていく。

髙木氏 針葉樹の場合、CO2の吸収と排出は「70年生」「80年生」の高齢樹になると、ほぼ同じになる。国内を荒廃した山の再生を含めた「循環型の山」に変える必要がある。多くの人に課題を知ってもらいたい。

末広氏 生活者が国産木材の利用を「自分ごと化」する取り組みが求められている。木を使うことで、森という環境・文化資源を守る意識を将来にもつなげていく努力が重要だ。

三上氏 伐採して、無花粉、少花粉の木を植えれば、花粉症対策にもつながる。建物をはじめ身近なものを木造にする「ウッドチェンジ」を浸透させたい。国産木材は環境に良く、社会を変えるという認識を深めていければと思う。

※温室効果ガスの排出量と吸収量を同じにして全体でゼロにする「カーボンニュートラル(CN)」の実現に向け、社会を変革すること。併せて、企業が持つCNの技術などを世界に発信・活用してもらうことで、日本の経済成長も図る。

主催=読売新聞社
後援=経済産業省、環境省、林野庁
協賛=千代田化工建設、Earth hacks、NTTドコモ、三菱地所、東京証券取引所、ナイス
協力=日本ウッドデザイン協会、日立製作所

* 日本ウッドデザイン協会は、木のある豊かな暮らし、木材利用、脱炭素など、木を活用した社会課題解決を推進している。脱炭素プロジェクトを推進している読売新聞東京本社は、本年8月に同協会に入会した。

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