電力の安定供給との両立めざす―官民のエネルギー施策

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2022.9.28
電力の安定供給との両立めざす―官民のエネルギー施策

2050年の脱炭素社会実現への道筋を考えるシンポジウム「読売カーボンニュートラル・デイ vol.2」が8月25日、オンライン形式で開かれた。ノーベル化学賞受賞者の吉野彰・旭化成名誉フェローが、「カーボンニュートラル社会の実現に向けて」と題して基調講演を実施。トークセッションでは、渡部肇史・電源開発社長や経済産業省、環境省、企業の担当者が、再生可能エネルギーの普及策などについて議論した。

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セッション1:カーボンニュートラルに向けたエネルギー社会の実現について

◎電源開発社長 渡部肇史氏
◎資源エネルギー庁新エネルギー課長 能村幸輝氏

コーディネーター・政井マヤ氏
コーディネーター・政井マヤ氏

水素 安定供給が必要

――カーボンニュートラル実現に向けた現在の取り組みは。

能村幸輝・資源エネルギー庁新エネルギー課長 カーボンニュートラルは世界全体の取り組みで、中国やインドなども関与している。ロシアによるウクライナ侵略があっても、各国は旗を降ろしていない。欧州では、むしろ再生可能エネルギーの比率を高めている。
日本も太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる発電を最大限導入する目標に向け、官民を挙げて取り組んでいる。それには再生エネで作った電気を送る送電網の強化や、蓄電池の活用が鍵になる。さらに、燃やしても二酸化炭素(CO2)が発生しない水素やアンモニアの活用も期待されている。

渡部肇史・電源開発社長  電源開発は戦後復興期の大規模な水力発電所の開発に始まり、オイルショック後からは輸入石炭による火力発電に取り組んできた。今年9月で創立70周年となるが、気候変動への対応は事業活動の根幹で、エネルギーの安定供給との両立を最優先の経営課題としている。

2050年のカーボンニュートラルの達成に向けて、30年時点で国内発電事業から排出するCO2を40%削減することを目指している。そのためには、再生エネに加え、製造時にCO2を排出しない「CO2フリー水素」の利用拡大、電力ネットワークの強化を加速させる。
資源エネルギー庁新エネルギー課長 能村幸輝氏
資源エネルギー庁新エネルギー課長 能村幸輝氏

――具体的には。

渡部氏  複数の地点で陸上・洋上風力を建設しており、建設計画も進めている。海外でも事業を手がけ、得た経験や技術は日本で生かすこともできる。

また、既存の発電設備の更新も実施し、佐久間水力発電所(静岡県浜松市)では約60年間動き続けてきた発電機や水車を、高効率なものに数年かけて交換する。
能村氏 現在のエネルギー基本計画では、30年の再生エネによる比率を、発電量の36~38%に高めるという大きな目標を掲げている。政府としても今後は太陽光発電と風力発電にしっかりと投資をしていく。
日本での太陽光発電の適地が限られるため、設置場所として建物の屋根を利用する取り組みへの期待が高い。さらに次世代型の太陽光発電装置は壁面への設置も期待できる。新しい技術をどれだけ取り込むことができるかが重要だ。
洋上風力は大規模導入が可能でコストも安く、建設工事などで地域経済への波及効果もある。技術や人材育成でも政府として取り組みを進めたい。
電源開発社長 渡部肇史氏
電源開発社長 渡部肇史氏

――水素の活用については。

渡部氏  今後、日本でCO2フリー水素社会を実現するためには、大量かつ低コストで、安定的に供給できる仕組みを作ることが必要だ。電源開発は、海外から輸入した石炭から国内で水素を製造する技術を持っており、再生エネによる電気で水を分解して水素も作っている。

――カーボンニュートラルを目指すためのポイントは。

渡部氏  脱炭素化、低炭素化に役立つ技術を使いこなしたり、組み合わせたりしていくことが重要で、どの方法が一番効果的かがわかるには時間がかかる。火力発電も動かしながら新技術を投入し、CO2を段階的に減らしていくことをしばらく続けていく。

能村氏  エネルギーの安定供給を考えると、カーボンニュートラルは一つの技術やエネルギー源だけでは解決できない。政府では「S+3E」(S=安全性、3E=エネルギーの経済効率性、安定供給、環境への適合性)という考え方を重視しており、再生エネや水素など様々なエネルギー源をうまく使いこなしていくことが大切だ。

カーボンニュートラルの取り組みは企業や家庭にも影響するので、需要側と供給側が一体となって取り組まないといけない。電力需給が非常に厳しくなる状況は、今夏だけでなく今冬も続く見通しだ。無理のない範囲での節電を、企業や家庭の協力も得ながら進めていきたい。

(用語解説:カーボンニュートラル)  
カーボンは「炭素」、ニュートラルは「中立」を意味する。森林整備や二酸化炭素(CO2)の再利用・地下貯留による吸収量と、石油などの利用で発生するCO2など温室効果ガスの排出量が、差し引き実質ゼロになった状態を指す。政府は2030年度までに温室効果ガスの排出量を13年度比で46%削減し、50年までに実質ゼロとする目標を掲げる。

→後編はこちらから

(2022年8月25日に実施した「カーボンニュートラル・デイVol.2」の採録です。)

主催=読売新聞社
後援=経済産業省、環境省
特別協賛=電源開発
協賛=アストラゼネカ、ドール、楽天グループ

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