診療科を横断する
「ロボット手術センター」を軌道にのせ
ダビンチ手術の可能性を追究

ロボてくん
 
社会福祉法人 恩賜財団 済生会横浜市東部病院

ロボット支援下手術が日本に本格的に導入されて8年。現場では次々と新しい術式が導入され、がん治療を筆頭に、良性腫瘍の摘除や器官の形成術まで可能性を広げている。
黎明期からダビンチ手術に取り組んできた済生会横浜市東部病院では、ロボット手術センターを稼働させ丸2年になる。センター長代理の石田勝医師に詳細を聞いた。


右:術者の操作するサージョンコンソール、真ん中:ビジョンカート、左:アームや鉗子備えたペイシェントサイドカート



ロボット手術センター長代理 石田 勝

ロボット手術センター長代理
前立腺治療センター長/泌尿器科医長

石田 勝


いしだ・まさる/2002年慶應義塾大学医学部卒業。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医。ロボット支援手術プロクター(前立腺全摘除術、腎部分切除術、膀胱全摘除術)。


適応症例が広がる低侵襲なダビンチ手術

 ダビンチ手術=ロボット支援下手術への期待値が改めて上昇中だ。従来、保険適用は前立腺がんと腎臓がんに限られていたところ、2018年4月に胃がん、直腸がん、子宮体がん、肺がんなどが加わり、14の術式へと広がったのだ。
 済生会横浜市東部病院では2018年1月に「ロボット手術センター」を開設し、執刀医を支える麻酔科医、手術室看護師、臨床工学技士などの医療チームを拡充。各診療科を横断して手術を一元化することで、待機時間を短縮し、患者の便宜を図っている。
 センター長代理で泌尿器科医長の石田勝医師は、「当院では2012年にダビンチを導入し、前立腺全摘除術を開始。13年以降は保険改訂に先駆け、胃がんを始め外科・泌尿器科・婦人科分野で8つの術式を導入し、すでに767件(2012年11月~2019年12月)の実績を重ねています。機種も新型のダビンチXiに更新しました」と語る。
 ダビンチ手術は、低侵襲な腹腔鏡下・胸腔鏡下手術の発展形である。患部周辺に小さな孔を5ヵ所程度開け、カメラと手術器具を装着したロボットアームを挿入。執刀医はサージョンコンソールで画面を見ながらアームを遠隔操作する。
 「一番の利点は細いロボットアームが体の深部に楽々と届き、コンピュータ制御で7方向360度、操作できること。手ぶれ防止機能もあり、人間の手指はここまで自由自在に動きません。カメラアングルも操作性が高く、拡大3D画像は組織や血管、神経の細部までリアルに映し出す。繊細で難易度の高い手術が可能になるのです」


患者のニーズに応じ幅広いがん医療を提供

 ロボット手術センターにはロボット手術が可能な医師が泌尿器科5名、婦人科3名、外科(消化器)2名が在籍。指導資格者も複数名おり、技術研鑽に余念がない。
 今後も、泌尿器科では前立腺がんのほか、腎細胞がんの腎部分切除や膀胱がんの膀胱全摘術、腎盂尿管移行部狭窄症の腎盂形成術、婦人科では良性腫瘍と子宮体がんの子宮全摘術、骨盤臓器脱の仙骨腟固定術、外科では胃がんや直腸がんに積極的に取り組んで行く予定だ。
 「多くは骨盤内深部にある排尿・排便や男性の性機能に関わる神経温存を求められる高度な手術で、ダビンチの実力を十分に発揮できます。直腸がんでは肛門の温存率も高まるでしょう」
 腫瘍の取り残し(断端陽性率)が少ないとの報告もあり、再発率の低下が期待できるという。
 「『ロボット手術センター』のほか、放射線療法、化学療法などの専門医がキャンサーボードに参加し、集学的治療を提案する『東部がんセンター』、術前から術後まで患者さんの心身をサポートする『患者支援センター』があり、3者の連携のもと、がん医療をバックアップ。また、骨転移の早期発見・治療のため、整形外科のマネジメントによるがんロコモ対策チームが特長的です」
 先進の高度急性期病院として、地域の期待は益々高まっている。



済生会横浜市東部病院

社会福祉法人 恩賜財団
済生会横浜市東部病院

神奈川県横浜市鶴見区下末吉3-6-1
TEL. 045-576-3000
https://www.tobu.saiseikai.or.jp/
院長/三角隆彦
診療科目/内科、循環器内科、消化器内科、消化器外科、神経内科、小児科、外科、整形外科、形成外科、リウマチ科、脳神経外科、呼吸器内科、呼吸器外科、心臓血管外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、リハビリテーション科、精神科、放射線科、救急科、麻酔科(佐藤智行)、歯科口腔外科、病理診断科
手術実績


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