年をとったとしみじみ自覚せざるを得ないのが「眼の衰え」だ。老眼はもちろん、白内障も加齢に伴って増加していく。その手術は短時間で済み、痛みもなく安全性も向上したが、「その結果に不満を感じる人も少なくない」と中京グループ会長の市川一夫医師は話す。
取材協力
中京グループ 会長
市川 一夫
いちかわ・かずお/1978年愛知医科大学医学科卒業。名古屋大学大学院医学研究科外科系眼科学修了。社会保険中央病院眼科医長、主任部長を経て94年に中京グループを設立。中京眼科視覚研究所所長、中京メディカル代表。
高齢化で急増する眼の疾患「白内障」
40代以上の年齢で、強い光がまぶしく感じたり、ものがぼやけて見えるように感じるようになったら、まずは白内障を疑ってください。これは眼の中でレンズの役割を果たしている水晶体が濁って見えにくくなる疾患です。生まれながらのものもありますが
(先天性)、それ以外の後天性の9割が加齢による白内障です。50代で約半数、60代で約7割、70代では約8割。80代にもなると、ほぼ全員に初期の症状が見られます。
高齢化の進行に伴って、白内障の人も増加してきましたが、今の段階では薬剤などで濁った水晶体をもとに戻すことはできません。これを根本的に治療して、クリアな視野を回復するためには、水晶体を取り除いて人工の眼内レンズに入れ替える「白内障手術」が唯一の方法なのです。近年は日帰りも常識化。短時間で済む安全な手術として知られようになりました。国内の手術件数は年間120万件を越えています。だからといって、誰もがその結果に満足しているわけではありません。
むしろ、定年延長などで、シニアになっても現役で仕事を続ける人が増加してきたため、手術後の「見え方」に関する要求が高度化・多様化してきたといえるでしょう。
「白内障手術」はオーダーメイドだから最新設備を持つ眼科を選ぶ
白内障の手術は年々進化していますが、基本的な要素は大きく2つに分けられます。その1つは手術方法。最も一般的なのは、メスで小さく切開した箇所から超音波チップを差し込み、それで水晶体を砕いて吸い出してから、小さく折りたたんだ眼内レンズを挿入。それを広げて固定する「超音波乳化吸引術」です。それに対して、レーザーで切開する方法も普及しつつあります。精度が高く、金属のメスを使わないため、身体への負担感も軽減されますが、健康保険の対象ではないので自費となります。ただし、必ずしもレーザーが優れているとは限らず、ベテランの眼科医のほうが施術の早さや丁寧さ、正確さで上回ることも少なくありません。
次に眼内に入れるレンズ。これまではピントが1か所だけに合う「単焦点レンズ」がほとんどでしたが、焦点の数が2か所以上ある「多焦点レンズ」も登場しています。強度の乱視を矯正できる「トーリックレンズ」もあるほか、遠景から近くまで連続的に見ることができる「EDOF」と呼ばれるタイプもあります。人間の眼は、水晶体の厚さを変えることでピントを調節していますが、これを人工のレンズに取り換えれば、その能力を失います。だからこそ、様々な焦点を持つレンズが開発されてきたのです。
ただし、多焦点レンズでは稀に不適応になるケースもあります。この場合は癒着したレンズを剥がして入れ替えることになるので、眼科医の熟練した技能が必要になります。
このように、レンズの種類は多く、それぞれに短所と長所があります。それに精通した眼科医と、自分が必要とする見え方をよく話し合って決めることが手術を成功させる秘訣といえるでしょう。つまり、白内障手術は他の外科手術とは異なり、ケース・バイ・ケース、患者さんにとっては自分の希望を反映できるオーダーメイドといっても過言ではないのです。そうした希望にできるだけ応えられる最先端の機器が揃っていることが、眼科医選びのポイントといえるかもしれません。
また、眼の状態を診断する機器や視力などの計測機器も重要です。しかしながら、機器や機材が手術するわけではないので、やはり経験豊富な医師を擁する眼科を選ぶことが大切ではないでしょうか。
「白内障治療」特集 掲載病院 |