体に負担の少ない人工関節手術と
脂肪幹細胞による再生医療の
二本柱であらゆる関節の治療を行う
2010年の開設以来、多くの人工関節手術を行ってきた高槻病院関節センター。手術数は2018年1年間で人工関節置換術を413件(うち股関節87件、膝関節326件)。2017年度からは再生医療も開始し、より幅広い患者の、より幅広い病状に対応できる体制が整えられた。「痛みから解放されて、明るく前向きな人生を送って欲しい」というモットーの元、今日も多くの患者の健康に寄与している。
関節センター長
平中 崇文
ひらなか・たかふみ/ 1988年神戸大学医学部卒業。1998年より高槻病院勤務、2010年より関節センター開設。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本再生医療学会再生医療認定、神戸大学医学部臨床教授、医学博士。担当分野は膝関節外科(人工膝関節、膝関節鏡、十字靭帯手術)、人工股関節、股関節周辺骨折など。
副関節センター長
藤代 高明
ふじしろ・たかあき/ 1997年神戸大学医学部卒業。医学博士。2001年より神戸大学附属病院に勤務。2004年から2年間、米国クリーブランドクリニックにて人工関節の基礎研究に従事。2009年神戸大学整形外科特命助教。大学病院股関節班のチーフを経て、2015年高槻病院整形外科・関節センター副センター長就任。
低侵襲の人工関節手術で患者の負担が軽減
高槻病院・関節センターの人工関節手術の特徴は、体に負担の少ない低侵襲による人工関節手術をすべての手術で実施している点である。
正常な組織をできるだけ傷つけない低侵襲手術は、術後の痛みや腫れが少なく、リハビリも早く始められるため回復が早い。手術の適応が広がるため、より多くの人が手術を受けられる。
膝関節手術では筋肉を切らずに膝蓋骨をずらす方法を採用している。手術の難易度は上がるが、術後の腫れや痛みが軽減され回復も早い。関節の損傷が比較的軽度の場合は、変形した部分だけを変える部分関節置換手術を行う。
「部分関節置換手術は、患者さん自身の関節のほとんどを温存する手法です。小さな人工関節を入れるため、全置換手術より身体への負担が少なく、筋肉を傷つけません」と語るのは平中崇文関節センター長だ。
平中医師は、50年近くにわたり部分人工関節の手術を行っている英国オックスフォード大学附属病院に留学し、手技を習得し、同院では膝の人工関節手術の約60%をこの方法で実施しているという。
さらに、同院では両膝の同時・同日手術も行っている。
「患者さんの多くは片方だけでなく、両膝に悩みを持っています。両膝を片方ずつ2回にわたって手術するのに比べ、両膝同時手術は1回の手術で済み、費用の軽減や完治するまでの時間の短縮などが期待できます」と平中医師。
人工股関節手術においてインプラントを正確に設置することが最も重要であり、近年開発されたポータブルコンピューターナビゲーションを用いてより精度の高い手術を行っている。また股関節周囲の筋肉のみならず関節包および靭帯も温存する難易度の高いMIS (最小侵襲手術)を行っており、術後の動作制限を必要とせず早期回復と早期の社会復帰を実現している。
脂肪幹組織による日帰り再生医療を開始
人工関節手術が行えない患者に対する新たな治療法も始まっている。それが脂肪幹細胞を利用した再生医療(ADRC療法)だ。自身の皮下脂肪を用いて組織再生を目指す最先端の医療で、膝関節の痛みや炎症の軽減、軟骨損傷の修復・再生効果が期待できる。入院の必要がなく細胞含有液を注射するだけなので、外科手術による感染や出血といった合併症が少なくて済むというメリットもある。変形性膝関節症だけでなく、靭帯損傷や半月板損傷などのスポーツ障害にも有効性が期待される。さらに最近、変形性股関節症、変形性足関節症、脊髄損傷に対しても厚労省認可を得、幅広くの人へ再生医療を行える体制が整っている。
海外への展開
さらにその活動は国内にとどまらない。ミャンマー、香港などから医師を10人以上研修に受け入れた他、年数回海外での講演、技術指導も行い指導的な役割を果している。また、本年度は厚生労働省の推進事業である医療技術等国際展開推進事業に参画しており、経済成長が見込まれる途上国へ、人材育成や制度整備支援等を通じ、対象国における医療環境の整備についても支援を行っている。
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