患者さん一人ひとりの状況に適した
人工関節置換術により歩行機能を取り戻す
術後のリハビリも患者さんに合った入院期間で
最大3時間、365日、集中的な入院リハビリテーションを施行しています。
運動器疾患の中でも、痛みを伴う膝関節や股関節の病変は、状態の悪化により歩行機能を低下させる。日本整形外科学会専門医制度研修施設として、地域の整形外科医療の中核を担う西横浜国際総合病院では、濱裕整形外科部長の着任した2年前から、人工膝関節置換術と、人工股関節置換術に注力。回復期リハビリテーション病棟での、患者一人ひとりに合った丁寧なリハビリも好評だ。患者の立場に立った診療の現場を報告する。
西横浜国際総合病院副院長
兼外科系診療統括部長
兼整形外科部長
濱 裕
はま・ゆたか/昭和62年信州大学医学部卒。信州大学付属病院、関連病院などを経て現職。専門は膝関節と股関節。人工膝関節置換術、人工股関節置換術、関節鏡下手術を数多く手掛ける。日本整形外科学会認定整形外科専門医。
患者さんの生活スタイルを優先し治療法を選択
変形性膝関節症の有病率は、女性が約6割、男性が4割といわれる。損傷した関節軟骨そのものを元に戻す治療は確立されてないので、重度の場合、根治療法は人工膝関節全置換術ということになる。
「歩くことは、自立した生活の要です。関節の痛みから家に引きこもりがちになると、生活の質が損なわれます」と語るのは、西横浜国際総合病院整形外科部長の濱裕副院長だ。濱副院長は股関節と膝関節の両方で人工関節置換術をこれまでに1000症例以上行ってきた(2000年~2019年)。
「当院では患者さん自身の組織は極力温存したいので、人工膝関節全置換術は最後の手段と位置付けています。病気と症状、生活スタイルを勘案し、可能なら保存療法や関節鏡視下手術からスタートします」 保存療法は関節の潤滑を高めるヒアルロン酸の関節内注射。適正体重を維持する生活習慣指導や、筋力を高める運動療法も欠かせない。関節鏡視下手術は、傷んだ関節軟骨や半月板などを取り除くデブリードマンと呼ばれる。膝関節の軟部組織に小さな孔をあけ、内視鏡と器具を入れて行う低侵襲治療だ。
「日常の一般動作でも痛みが強くなったら、人工膝関節全置換術を考慮するタイミングです。単純レントゲンのほか、各靭帯を評価するストレスレントゲンやMRIで関節の状態を確認し、最終判断をします」と濱副院長。
人工関節は最適な位置と角度に設置することが重要なため、高度変形時には必要に応じ、術前に、 CT画像上で綿密な三次元プランを策定する。
「手術は常に十分な靭帯バランスを確認しながら、細部まで丁寧に行われます。当院は基本的に骨と一体化するセメントレス人工関節を採用しています。出血した血液は回収し、フィルターを介して体内に戻すなど体への負担を極力抑える配慮をしています」
日本人に多いO脚では、膝内側の関節軟骨のみが摩耗する場合がある。4つの靭帯全てに損傷がなく、変形が比較的軽微なら、関節の一部を置換する人工膝関節の部分置換術が提案される。骨や靭帯が温存されて膝の動きの自由度が高く、違和感も少ないという。
一方、変形性股関節症の患者には、人工股関節全置換術を実施。
「こちらも素材や形状、術式が進化し、脱臼もほぼ起こらなくなりました。人によっては軽いスポーツを楽しめるまでに回復します。患者さんには、常に満足してもらえる関節機能の回復をめざしています」と濱副院長。
人工関節置換術で、多くの患者が心配するのは術後の痛みだ。濱副院長は症状に合わせ、きめ細かく鎮痛薬と抗生物質を処方。血液検査をしっかり行い、痛みと炎症、感染リスクをコントロールする。
アフターケアとリハビリに力を入れる
「手術翌日からリハビリ開始です。関節をガードする筋肉を鍛えつつ、人工関節の可動域を少しずつ広げていきます。
当院には回復期リハビリ病棟があり、優秀な理学療法士と作業療法士が常駐。長期の入院が可能なため、患者さんが安心して社会復帰できるまで、私もサポートします」
同院では、退院後の定期検診も万全を期す。患者の歩行機能をしっかり取り戻すために最善を尽くしてくれる、頼りになる病院である。
内科、外科・消化器科、整形外科、リハビリテーション科、脳神経外科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、精神神経科、腎臓内科、健康管理センター、腎・透析センター、放射線科