小さい腫瘍も正確に狙い撃つ高精度放射線治療

CyberKnife® Accuray's
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さらに可能性が広がるサイバーナイフ
島根県の医療の中核を担う松江市立病院に2017年4月、「がんセンター」がオープンした。がんの放射線治療と外来化学療法を行う同センターで開設当初から大きな力を発揮しているのが、新鋭の放射線治療装置サイバーナイフである。サブミリメートル単位の高精度治療を行うサイバーナイフの活躍の現状と、今後の応用の可能性について、放射線治療室長の森山正浩医師に話を聞いた。



松江市立病院 放射線科 放射線治療室長 医学博士 森山 正浩

松江市立病院 放射線科
放射線治療室長
医学博士

森山 正浩


もりやま・まさひろ/ 1991年島根医科大学卒業。横須賀共済病院放射線科部長、島根大学医学部附属病院がん放射線治療教育学助教、同学内講師等を経て、2011年より松江市立病院放射線科、2016年より現職。


サブミリメートル単位の照射精度 治療後の経過も良好

 松江市立病院は、がんセンター開設にあたり、2種類の放射線治療装置を導入した。一つは強度変調放射線治療(IMRT)を得意とする装置。もう一つは定位放射線治療を得意とする装置、すなわちサイバーナイフである。どちらの治療法も、腫瘍周辺の正常な組織を避け、腫瘍にのみ高線量の放射線を集中させる方法だが、このうち、特に直径数ミリ以下といった小さいサイズの腫瘍の治療に適しているのが、後者のサイバーナイフである。
 同センター放射線治療室では、診療放射線技師4名(うち医学物理士の有資格者2名)、認定看護師1名、専門医2名、計7名のスタッフで2つの放射線治療装置を運用し、このうちサイバーナイフに関しては、過去1年間に計51件の治療実績を上げている(治療部位毎の件数は頁下のグラフを参照)。
「サイバーナイフで治療をうけたほとんどの方はその後も良い経過をたどっています」と森山医師は話す。
 サイバーナイフは装置自体が常に進化している。例えば肺がんの治療に際して、金属のマーカーを留置し、治療標的の位置を割り出す際の目印に用いることがあるが、最近の機種では治療標的の陰影そのものをガイドとする機能を有する。これについて森山医師は、「患者さんの体に負担を強いるマーカー留置を省略できることは、特に高齢の患者さんにとって大きな安心要素であり、予後改善にもつながります」と評価する。

サイバーナイフによる治療に先立ち、訓練を積んだ医学物理士が患者データを基に綿密な治療計画を立案する
サイバーナイフによる治療に先立ち、訓練を積んだ医学物理士が患者データを基に綿密な治療計画を立案する
サイバーナイフ治療件数と内訳
サイバーナイフによる治療に先立ち、訓練を積んだ医学物理士が患者データを基に綿密な治療計画を立案する
サイバーナイフによる治療に先立ち、訓練を積んだ医学物理士が患者データを基に綿密な治療計画を立案する
サイバーナイフ治療件数と内訳

広がる可能性 治療期間短縮の利益も

 サイバーナイフには、今後さまざまな可能性が期待できると森山医師はいう。
「代表例は、転移性脳腫瘍です。従来は脳に転移巣が4つ以上ある場合、脳全体に照射する『全脳照射』が推奨されていましたが、近年、転移巣を一つ一つ狙って照射するほうが生命予後を改善できることが実証され、当センターでも、多少手間がかかりますが、積極的にサイバーナイフを用いて治療しています」
 一方、サイバーナイフによる定位放射線治療は、治療期間を短縮することで患者負担の軽減が期待できる。
「前述の転移性脳腫瘍の治療期間は小さなものは1日で治療が終わります。当院ではまだ検討中ですが、約8週間・約40回に分けて照射を行う前立腺がんの通常分割放射線治療を、サイバーナイフを用いた定位放射線治療では、最大8回程度の照射で治療が完了します。外来通院が困難な隠岐など県内遠隔地の患者さんにも、2週間程度の入院で治療を受けていただける可能性が生まれてきます」
 森山医師は地域がん医療の担い手としての責任感を言葉に滲ませながら、そう語った。

進化を続けるサイバーナイフ

 サイバーナイフは、自在に動くロボットアームに小型軽量化したリニアックを搭載し、3次元に多方向から腫瘍を狙い撃つことができる。ビームの通り道が分散されるため、腫瘍周辺部の正常細胞への影響を抑え、副作用を低減した治療としても定評がある。動体追尾技術により、呼吸などに伴う腫瘍の動きを検出し、照射方向を自動で補正するため、強固な固定をしなくても一人ひとりの患者さんに合わせた先進的な治療を実現する。
 M6シリーズ(下の画像)にはこれまでより大きな腫瘍も治療できる機能を搭載でき、治療対象疾患をますます広げている。

最新鋭のサイバーナイフシステムM6シリーズ
最新鋭のサイバーナイフシステムM6シリーズ
動体追尾技術により動く腫瘍にあわせて照射
動体追尾技術により動く腫瘍にあわせて照射
最新鋭のサイバーナイフシステムM6シリーズ
最新鋭のサイバーナイフシステムM6シリーズ
動体追尾技術により動く腫瘍にあわせて照射
動体追尾技術により動く腫瘍にあわせて照射

高度のがん医療と充実した緩和ケアを提供

松江市立病院 病院長  紀川純三

松江市立病院 病院長

紀川純三


 高齢化が進んだ島根県の医療の拠点として、長年にわたり地域のがん診療に注力してきた当院は、2017年4月、充実した外来化学療法室と新鋭の放射線治療機器、さらに種々の緩和ケア設備を擁する「がんセンター」を開設し、がん診療機能を一段と強化しました。また、2019年4月には、充実したがん診療の内容と実績が認められ、地方の市立病院としては異例の「地域がん診療連携拠点病院(高度型)」に認定されました。
 当院のがん医療の特徴として、充実した医療設備・機器と、これを駆使した高度な医療の提供を第一に挙げることができますが、これと並ぶ大きな特徴となっているのが、多彩な内容を誇る緩和ケアの実践です。
 窓口となる緩和ケアセンターでは、専任のスタッフが在宅・入院両方の療養生活についての相談に応じ、22床ある緩和ケア病棟では3名の緩和ケア医が働いています。また、口腔ケア、リンパ浮腫、栄養指導などの専門外来を開設し、がん患者さんの日常生活に生じるさまざまな問題についての相談・指導を行っているほか、専門の指導員による運動指導や、音楽療法のセッションなども積極的に行い、患者さんの療養生活を心身両面から強力にサポートしています。


多彩なケアを実現

 がん患者のQOLを高める観点から、緩和ケア病棟の各病室は眼下に宍道湖を一望する方角に配置。 木目を基調とした室内は、酸素や吸引のバルブを患者の目に入りにくい位置に置くなど、「病室らしくない」部屋づくりを実現。一方、外来エリアにフィットネスマシンを備えた専用スペースを設け、がん患者が運動に励む。別の多目的室では音楽療法を受けられるなど、やはり「病院らしくない」賑わいに満ちている。

フィットネスルーム
フィットネスルーム
緩和ケア病室
緩和ケア病室
がん患者サロン
がん患者サロン
専門の薬剤師による抗がん剤の調整
専門の薬剤師による抗がん剤の調整
フィットネスルーム
フィットネスルーム
緩和ケア病室
緩和ケア病室
がん患者サロン
がん患者サロン
専門の薬剤師による抗がん剤の調整
専門の薬剤師による抗がん剤の調整


交通案内

松江市立病院

〒690-8509
島根県松江市乃白町32番地1
TEL.0852-60-8000(代)
FAX0852-60-8005
http://www.matsue-cityhospital.jp/
許可病床数
470床
外来診療時間
8:40~17:00
休診日
土曜、日曜、祝日、年末年始 ※救急診療24時間365日対応
診療科目
内科、糖尿病・内分泌内科、消化器内科、循環器内科、呼吸器内科、神経内科、小児科、放射線診断科、放射線治療科、精神科、皮膚科、外科、消化器外科、乳腺・内分泌外科、胸部外科、心臓血管外科、脳神経外科、整形外科、形成外科、産婦人科、泌尿器科、耳鼻いんこう科、眼科、麻酔科(山崎和雅)、救急科、リハビリテーション科、歯科口腔外科、病理診断科



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