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企画・制作 読売新聞社ビジネス局
第1回 イオンSATOYAMAフォーラム 開催レポート

植樹をはじめ世界各地で環境活動に取り組むイオン環境財団が2023年12月、
第1回 イオンSATOYAMAフォーラムを開催。

「里山が持つ新たな価値創造=ネイチャーポジティブとウェルビーイング」をテーマに、
5つの大学から有識者や学生が参加し、持続可能な未来につながる里山の可能性を議論した。

第一部
第二部
パネルディスカッション
現地で感じた里山のリアル
誰にとっても身近な場所にするために
モデレーター
永井 祐二
早稲田大学環境総合研究センター 研究院教授/上級研究員
パネリスト
包 薩日娜
京都大学フィールド科学教育研究センター
特任助教
研究内容
「共に創る新しい里山里海」

京都府を中心とした関西エリアの里山里海を調査し、現状把握や課題解決の提案などを行う。具体的には、京都大学上賀茂試験地に生息する生物や、京都周辺の里山における竹の侵入による影響の調査、また府内の里海では生息する魚類の調査を続けている。

さらには、里山里海で活動を行う団体や、イベントや勉強会の参加者についての情報をデータベース化。活動団体、参加者、専門家、地域住民、行政、企業、あらゆる人々の共創による、持続的な里山里海の在り方を探究する。

高橋 輝昌 / 遠藤 向赳
千葉大学大学院園芸学研究院 教授(左)
千葉大学大学院園芸学研究院博士前期課程1年(右)
研究内容
「里山の生物を守り森を育てる」

千葉県にある君津イオンの森の健全な生育を目指し、苗木の保護や植樹計画の構築、植生調査による生物多様性の保護、さらにはビオトープ創出による湿地性植物の保護を行う。

調査の一環として、森に生息するシカやウサギによる食害を調べたところ、イロハモミジとヤマボウシは被害を受けにくいことがわかった。またコナラやヤマボウシなどは他の樹種に比べて樹高の成長度合いが大きいこともわかり、樹種を選ぶことで健全な苗木の成長を目指す。

尾下 優子
東京大学未来ビジョン研究センター 特任講師
研究内容
「地域の資源と産業の連携を提案」

環境経済学を専門とし、環境と経済を両立させるための仕組みづくりや、技術導入による地域経済への影響の可視化などを研究。

鹿児島県種子島では、さとうきびや森といった地域資源や島内産業を調査し、島の将来ビジョンに合う仕組みの実装を目指している。バイオマスプラントの材料として利用しやすい樹種を島の森に植えることで、経済循環の構築を提案。島の中高生を対象としたセミナーなども開催し、顕在化する課題の解決策を一緒に考える機会を設けている。

新家 杏奈
東北大学災害科学国際研究所 助教
研究内容
「都市域での杜のデザインと安心づくり」

宮城県仙台市内の都市部に位置する東北大学のキャンパス跡地にイオンモールが建設されることを機に、イオン環境財団、イオンモールと共同研究を開始。緑豊かな都市型防災拠点の形成を目指す。

2021年からは、県内の宮城県民の森内にある「イオンの森」でどんぐり拾いのイベントを開催。これから開店する予定の店舗に植えるコナラを育てるために、どんぐりでポット苗をつくる活動を続けている。ポット苗は、店舗近隣にある小学校2校に寄贈し、校内での育苗を託す。

髙垣 慶太
早稲田大学社会科学部3年
研究内容
「里山で継承する平和への願い」

地元広島県に現存する、原爆の被害を受けながらも消失を逃れた被爆樹木に、フィールドワークで訪れた福島県浜通りの帰宅困難区域に残る木々の姿を重ね、1本の木と個人の想いの強い結びつきを知る。里山など自然を通じて災害について考える機会の創出や、学習への活用を提案する。

植田 航
早稲田大学社会科学部3年
研究内容
「共に育つ里山を目指して」

里山などさまざまなテーマを切り口に、地域社会の持続性について研究し、課題解決に向けた活動などを行う。沖縄県西表島でのボランティア活動を通じて、自然保護を目的とした活動とそこに暮らす人々が抱える課題の摩擦を目の当たりにする。その経験を通じて、ネイチャーポジティブの実現について探究を続ける。

三宅 里奈
SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)事務局次長
研究内容
「世界の里山里海を守る」

人と自然がバランスをとり、共生できる社会の形成を目標に活動するSATOYAMAイニシアティブ。そのような自然共生社会を実現する世界の里山里海の保全、再生促進の取り組みを進めている。

取り組みを推進するため国際パートナーシップを立ち上げ、事務局を運営。現在、イオン環境財団や東京大学、東北大学を含む304団体が加入する。地域に残る独特の景観を守りながら解決策を導くランドスケープアプローチを提唱しながら、世界各国での保全活動や能力開発などを支援する。

多角的・長期的な視点で進める里山研究
永井
里山研究を進めるうえで、重要視していることは。
里山は地域によって特性があり、それに伴って住まう方々の知識や里山との付き合い方は異なります。ですから、一つでも多くの里山を知ることを大切にしています。
三宅
地域ごとではもちろんのこと、同じ地域でも年齢や性別が違えば里山に対する考え方も異なります。さまざまな意見を聞くことで初めて、目指すべき里山像が見えてきます。
植田
西表島や千葉市でのボランティア活動を通じて、現地に足を運び、地域の課題を自分の目で見て確かめることの大切さを痛感しました。活動を進めるには、地域の方々と交流を深め信頼関係を築くことが不可欠です。
尾下
目前の課題を解決するための短期的な視点だけでは、里山を維持していくことはできません。里山が地域のなかでどういう存在になって、みなさんはどう使っていきたいのかという、将来的な視点を持ちながら研究をしています。
高橋
里山を維持するには森林の適切な間伐が必要ですが、どういった里山や森にしたいかという目標がなければ、間伐する木も決められませんからね。
新家
発災時に役立つ機能も、里山に持続可能性を求める理由の一つ。東日本大震災では、津波発生後に里山の井戸水などを利用して、ライフラインの断絶を乗り越えた例があります。
高垣
近年は地域コミュニティの関係性が希薄になっています。先行き不透明な時代のなかで、里山が人と人をつなぐ場所として機能することを期待しています。そこで生まれた関係性が、災害時などの非常事態にも役立つはずです。
里山の存在をもっと身近に 啓蒙方法を検討
永井
では里山の価値を広めるうえでは、どのような点がポイントになるでしょうか。
高橋
かつて里山は、燃料や食料が採れる生活に欠かせない場所でした。ライフスタイルが変化した昨今においては、里山の現代的な使い方を探究し、広めていく必要があるでしょう。
遠藤
新家さんがおっしゃられた防災という視点のように、里山がもついろいろな価値を伝えることで、幅広い分野の方に興味を持っていただけるのではないでしょうか。
高垣
私も対象は限定しない方がよいと思います。自然環境に関連する取り組みでは、ターゲットが限定的であることも多いです。門戸を広く開けることが、里山の認知拡大につながると思います。
尾下
「うっそうとして入りづらい」、「手入れが行き届いていない」などのマイナスなイメージが先行している印象です。親しみを感じてもらうために、イオンモールなど、多くの人が集う場所での訴求が効果的です。
先日、イオンモール桂川で里山に関するイベントを開催したところ、子ども連れの若い世代など、里山への関心が低い世代でも参加してくれる方が多かったです。
遠藤
里山が抱える課題を伝えることも大切ですが、里山と一般の方をつなぐためには、まずは美しい自然と触れ合える場所だということから、伝えるのがよいですね。
尾下
里山について知ってもらったあとに、気軽に里山にアクセスできるような仕組みも構築したいところです。実際に足を運んでみて初めて、その美しさそしてリアルな里山の価値が伝わると思います。
新家
都市部から距離の近い里山があれば、比較的足を運びやすそうです。
三宅
里山は、人間の生活や文化と自然が絡み合うことで発展してきた場所。これからも、さまざまな人の関わりを生むことによって、持続可能な里山を実現していきたいです。
植田
多様な世代の方々に関わっていただきたいですが、やはり今後の社会を支える若い世代に積極的にアピールしたいですね。
公益財団法人イオン環境財団
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