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あなたの病気が治らないのはお口に隠れた菌が原因かも?

広告 企画・制作/読売新聞社ビジネス局


 歯茎や歯の周囲の骨に炎症を起こし、歯を失うことにもつながる歯周病。その原因となる「歯周病菌」が、他の病気もひき起こす手強い細菌であることが、近年の研究で明らかになってきた。
 
 糖尿病、心臓疾患、早産・低体重児出産、関節リウマチ、COPD(慢性閉塞性肺疾患)・肺炎、慢性腎臓病、骨粗しょう症、認知症、がん――。歯周病との関連性について研究が進む疾患は全身に及ぶ。肥満・メタボリックシンドロームもその対象だ。

 歯周病とはいったいどんな病気なのか、全身にどうやって悪さをするのか。最新の研究に触れ、その対策について考えたい。

歯周病菌が体内に取り込まれるメカニズム

 歯茎を腫れさせたり、骨を溶かしたりする歯周病菌は歯と歯茎の間の「歯周ポケット」の中に大量に存在し、わかっているだけでも10種類以上。さらに怖いのは歯周病菌とそこから生まれる炎症物質が出血箇所などから血管内に入り込み、全身を巡って細胞を傷つけたり免疫をかく乱させたりすることが判明したからだ。

 研究事例を具体的に見てみよう。

 糖尿病は歯周病との関係が古くから指摘されてきた病気だ。一部の歯周病菌が出す炎症物質が血中に入ると、抵抗反応によって免疫異常が起こり、血糖値のコントロールに欠かせないインスリンの働きを鈍らせるという。

 大阪大歯学部は、歯周病を治せば糖尿病も改善することを臨床研究で明らかにした。2021年から22年にかけ、歯周病と糖尿病を両方持つ患者に殺菌作用のあるマウスウォッシュ(洗口液)を半年間使ってもらったところ、歯周病菌が減った人のうち15%が糖尿病の数値も改善したのだ。担当した仲野和彦教授(口腔全身連関学)は「糖尿病を引き起こす要因(リスクファクター)として加齢や肥満、運動不足のほかに、歯周病もその一つだと考えられている。15%という数字はそれを裏付けるもの」と評価する。

 

心臓疾患も近年研究が進み、歯周病との関連を示す科学的根拠(エビデンス)が相次いで出されている。

 歯周病菌が出す炎症物質が血中を循環する過程において心臓付近で動脈硬化を促し、心筋症や心不全につながるのだという。重度の歯周病患者の方が軽度の患者に比べて心臓疾患の発症リスクが高く、特に若年層でその傾向が顕著という研究結果もある。

 
 早産・低体重児出産などの周産期合併症は、年齢や環境、喫煙、飲酒がリスクファクターとして知られているが、近年は歯周病もその一つと位置付けられるようになった。切迫早産した妊婦のうち3割から口腔内と羊水の両方に歯周病菌が見つかったという研究データなどがあるためだ。治療に時間がかかることや、妊娠後はホルモンの変化で口腔内の細菌が増えやすいことから、妊娠前か妊娠初期に治療を行うことが望ましいとされる。
 
 関節リウマチと歯周病は、骨に近接する組織の炎症という共通点があり、腫れや痛みといった症状、放っておくと骨(歯)が破壊されるという点も似通っている。歯周病菌が血管や血液だけでなく、軟骨細胞に入り込むことが確認されており、関連性は高いとみられている。

 いずれの疾患も研究が続けられており、歯周病と全身疾患の関係は今後さらに解明が進むとみられる。学問・学部が異なることが壁となり、これまで取り組みが少なかった「医科歯科連携」が各方面で加速することへの期待も高まっている。

歯周病 どうやって防ぐ?

 全身疾患への影響をなくすためにも、歯周病予防にはぜひ取り組んでもらいたい。

 最も効果的な予防法は毎日の歯磨き(ブラッシング)だが、歯周病菌は空気(酸素)を嫌い、歯茎の裏側(歯周ポケット)の奥に潜んでいることから、ブラッシングでは届きにくい。歯科医院で定期的にクリーニングすることが望ましい。
 
 ブラッシングの後、殺菌作用のある洗口液(マウスウォッシュ)を使ってうがいをするとさらに効果的だ。丁寧な歯磨きが難しい高齢者や幼児にはマウスウォッシュだけでも予防が期待できるという。

 アルコール分による刺激が苦手な人には、ほとんどアルコールの入っていない商品もある。洗口液特有のピリピリ感や苦みがないため、歯科医院でも使われている。水で薄めて使うタイプのためかさばらず、濃度を調整できるのも利点だ。

 そして、そもそも大事なのが食事や運動、睡眠なども含めた生活習慣だろう。歯周病菌が出す炎症物質が血管内に入り込んだとしても、「サラサラ」の血液であればどこかにとどまることができず、免疫が正常に働けば悪さもしにくい。お口の健康も体の健康も、日ごろの意識の持ち方が重要だ。


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