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フォーラム「がんと生きる 〜こころとからだ 私らしく〜 」 (東京_2)

広告 企画・制作 読売新聞社ビジネス局

東京発オンラインフォーラム「がんと生きる 〜こころとからだ 私らしく〜 」

がんの共生支える 医療の最前線

 がんの最新情報を紹介する「東京発オンラインフォーラム がんと生きる」が2月5日、がん経験者や家族をサポートする施設「マギーズ東京」(江東区)で行われました。医療者や医療関係者のほか、石川県金沢市にあるがん患者の交流施設「元ちゃんハウス」からも、当事者らがオンラインで参加。昨年7月と11月に行われたフォーラムの内容を振り返りながら、先端的な医療と患者の暮らしをサポートする取り組みという2つのテーマをめぐって語り合いました。

第1部 遺伝子調べて個別化医療

がん細胞 狙い撃ち

町永 医療の進化で、がんは治る時代といわれつつあります。最新のデータでは、がんの5年生存率は68.9%*です。まず先端的ながん医療を紹介します。
大津 がん細胞は、様々な原因による遺伝子変異の積み重ねで生じます。がん細胞には細胞分裂が速いという特徴があります。通常の抗がん剤はその特徴を利用して、増殖が速い細胞の分裂を止める働きをしますが、同様に細胞分裂が速い正常細胞も攻撃してしまいます。それが副作用の症状です。
一方、分子標的薬は、がん細胞の遺伝子変化によって生じる特定の分子を狙い撃ちします。そのため抗がん剤より副作用が少ないとされます。遺伝子変化のタイプは人によって異なります。どういうタイプなのかを見極めて適合する薬を投与するのが効果的です。以前は一つずつ調べていましたが、遺伝子パネル検査が開発され、今は100種類以上の遺伝子を1回で調べられます。これにより患者一人ひとりに合う個別化医療が可能になりました。
町永 国立がん研究センターでは、患者の遺伝子変異を多くの医療者が共有できるスクラムジャパンという取り組みを行っています=VTR1=。
大津 全国260の病院が連携しています。治験を行っている病院は限られていますが、適合する遺伝子変異であれば、担当医を通して近くの治験実施病院を紹介し、治験薬を受けてもらうことも可能です。
スクラムジャパン設立の目的は、欧米で承認されている薬が日本で承認されていないというドラッグラグの解消でした。最初は肺がんと消化器がんが対象でしたが、今ではほぼラグはなくなり、それ以外のがん種にも対象を拡大しています。
*2011~13年に診断治療を行った症例(全国がんセンター協議会 国立研究開発法人国立がん研究センター)

【VTR❶】薬事承認、高確率で
スクラムジャパンの成果の一つが肺がんの新しいドライバー遺伝子*を発見し、その働きを止める分子標的薬を見つけ出したこと。約400人いるといわれるこの遺伝子を持つ患者に大きな希望を与えた。2015年にスクラムジャパンが始まってから127の治験が行われ、1200人の患者が参加、12の治療薬が承認された。これまでには考えられない速さでがん医療の開発が進んでいる。
*がん細胞の発生と増殖に関わる遺伝子

国立がん研究センター東病院長
大津敦さん
おおつ・あつし 2016年より現職。「世界の先端的ながん医療をいち早く日本の患者に届ける」をモットーに医療に取り組む。

血液検査でがん判別

町永 リキッドバイオプシーも一つの成果ですね。どういうものですか。
大津 血液検査でがんの遺伝子変化を検査する方法です。内視鏡などで組織を採取して調べる生検より患者の負担も少なく、結果が出るまでの期間も短くて済みます。また、手術後に再発防止のために抗がん剤治療を受けるのが一般的ですが、リキッドバイオプシーでがんの遺残がわかれば、その必要がなくなります。
町永 昨年11月のフォーラムでリキッドバイオプシーを知った視聴者からも、「医療の進歩に驚いた。患者の生活がよりよくなるならうれしく思う」という感想が寄せられています。

マギーズ東京 共同代表理事・センター長
秋山正子氏
あきやま・まさこ 1992年から訪問看護を始める。地域に根ざした在宅医療・看護の活動と仕組み作りに尽力する。

第2部 副作用緩和し治療支える

漢方薬で症状に対処

町永 患者は主治医になかなか本音をいえないといいます=VTR2=。
花岡 手足の末梢神経障害などの副作用がありましたが、なんとなく主治医にそのつらさを伝えづらかったですね。
小浦 患者には主治医の前で語りきれないものがあると医療者が知ることで、少しでも話を引き出しやすくなるかもしれません。
秋山 オンラインでも情報を伝えられる時代になりましたが、顔が見えるところで話ができたり、身近な人からも話を聞いたりして、一人の人を多角的に見るということが大事なのかもしれません。
町永 支持療法とはどういうものですか。
上園 副作用のせいで、がん治療が中断することがないようにするもので、診断とともに始めます。
町永 漢方薬がよく処方されるそうですね。
上園 いろいろな生薬が組み合わされている漢方薬は、一つで複数の症状に対処できます。4~5種の症状をカバーできるものもあります。体力をキープするためにも使います。
花岡 自分から医師に希望して処方してもらったことがありますが、大変効果がありました。
町永 支持・緩和研究開発支援室ではどういう取り組みをしていますか。
上園 患者の声を受け止めて、新薬や新しい医療機器の開発に結びつけています。例えば副作用の口内炎の痛みで食べるのがつらいという患者には、局所麻酔薬で痛みをとりのぞいて食事をしてもらいますが、味気ないという声を受けて、痛みの神経だけに効く薬を開発しました。手足の末梢神経障害の方のためには、症状が抑制される冷却グローブを考案しました。

【VTR❷】時間かけて本音聞きだす
ステージ4の大腸がんと診断された金﨑雄一さん(73)は、医師の前で副作用の痛みを伝えることができない。そんな金﨑さんに対して、「がん治療サポート外来」の元雄良治医師は、腹診を交えながら時間をかけて本音を聞き出していく。金﨑さんは、処方された漢方薬で副作用を抑えながら、治療と仕事を続けることができている。

東京慈恵会医科大学 医学部
疼痛制御研究講座 特任教授

上園保仁氏
うえぞの・やすひと 国立がん研究センター東病院 支持・緩和研究開発支援室で、患者の声を元に新薬などの開発に取り組む。

患者が憩える居場所

町永 昨年7月のフォーラムの視聴者から、がん患者がいかに孤独かを伝えるメッセージが寄せられました。
西村さんの夫・元一さんはがんの専門医でしたが、自身ががんになって患者の居場所の必要性を感じて、自宅でも病院でもない第3の居場所として「元ちゃんハウス」を立ち上げました=VTR3=。秋山さんは20年に及ぶ訪問看護の経験から、患者や家族が気軽に立ち寄れる「マギーズ東京」を作りました。
秋山 自宅や職場、診察室、それぞれで違う顔を強いられる患者には、ありのままを出せる場所が必要です。マギーズ東京に来られた方には、悩みをうかがい、ご自身で考えを整理するのを一緒に手伝うという姿勢で接するようにしています。
町永 大平さんは元ちゃんハウスの常連です。
大平 元ちゃんハウスの方とは同じ病気を経験している戦友のような気分で本音をしゃべれます。
西村 病気は治るのか、将来どうなるのかなど、誰にも答えることができない問いがあります。夫は「仕方ない」という言葉をよく口にしていましたが、仕方ないけど受け止めるしかないことをここで吐き出して、少しでも身軽になってもらえればと思います。

【VTR❸】がんになった医師の気づき
大腸がんの専門医・西村元一さんは胃がんに罹患(りかん)し、患者には聞いてほしいことがあるのに語れる場がないという思いから「元ちゃんハウス」を立ち上げた。元一さんの死後は妻の詠子さんが引き継いでいる。扁桃(へんとう)腺がんの患者・大平三四郎さんは退院が近づくにつれ不安にかられる。しかし、もやもやしたその思いをハウスで話したことで気持ちが晴れやかになった。

認定NPO法人 がんとむきあう会 理事長
西村詠子氏
にしむら・えいこ 患者支援施設を作りたいという、がん専門医だった夫の遺志を引き継ぎ、現職に。

おおひら歯科医院 院長
大平三四郎氏
おおひら・さんしろう 3年前、扁桃腺にがんが見つかる。元ちゃんハウスが心のよりどころに。

水泳インストラクター
花岡修子氏
はなおか・しゅうこ 2年前にステージ4の大腸がんに。治療を続けながら障害者支援に取り組む。

町永 石川県輪島市で訪問診療を行っている小浦さんの映像を見ました=VTR4=。
西村 小浦さんがフラットな立場で接することで患者が素敵な表情を見せていたのが印象的です。
小浦 オンライン診療が進化して地域医療と先進医療が連携できる時代になりつつありますが、患者の思いがつながらないといけないと感じています。
花岡 患者は受け止めきれない現実に直面した時に話を聞いてもらえると励みになります。そのことを多くの方に知ってもらえればと思います。
大平 患者会を立ち上げました。そこで自分の経験を伝えていきたいですね。
西村 様々な医療の選択肢を前にして患者は迷うことも多いはず。そういう患者に寄り添っていければと思います。
秋山 自分の治療のことだけでなく親の介護など、病気以外のことが気になっている方もいます。暮らしの中の心配事にも伴走していきたいですね。
上園 副作用を軽減する新たな手段を提供して、治療に前向きになれる一助になればと思います。
大津 がんを治る病気にすることが使命です。それとともに社会的な側面を含めて患者をサポートすることにも取り組んでいきたいですね。

【VTR❹】患者に寄り添う訪問診療
石川県輪島市で訪問診療を行っている小浦医師は2週間に一度、白井雅さん(84)の自宅を訪れている。白井さんは前立腺がんと診断され、直腸への転移も見つかったが、治療を断り自宅に戻っている。その選択に行きついた白井さんの人生観を知ることが、医療者にとって大きな意味を持つと考える小浦医師。白井さんに寄り添う医療を模索している。

ごちゃまるクリニック 院長
小浦友行氏
こうら・ともゆき 保健活動、救命医療、へき地病院を横断的に経験。住民・専門職の支え合いの重要性を痛感し、21年に現職。

コーディネーター
福祉ジャーナリスト

町永俊雄氏
まちなが・としお 1971年にNHK入局。「福祉ネットワーク」キャスターとして、各地でシンポジウムを開催。現在はフリーで活動。

主催:読売新聞社 NHK厚生文化事業団 NHKエンタープライズ
後援:NHK 厚生労働省 千葉県
協力:NPO法人 わたしのがんnet
協賛:株式会社ツムラ

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