フォーラム「がんと生きる 〜こころとからだ 私らしく〜 」(東京)
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フォーラム「がんと生きる 〜こころとからだ 私らしく〜 」(東京)
患者の困難支える医療へ
最新のがん情報を紹介するフォーラム「がんと生きる」が9月5日、オンライン配信され、全国から多くの視聴者が参加した。がん患者は体の苦痛だけでなく、心の不安や経済的な悩みなど、様々な困難にさいなまれている。最近では新型コロナウイルスの感染拡大も、大きな不安要因の一つだ。がん患者がよりよく生きるために必要なことは何か。がん経験者をサポートする施設「マギーズ東京」(江東区豊洲)を起点に、大阪、静岡などをリモートで結び、医療関係者やがん当事者らが語り合った。
パネルディスカッション 第1部
患者の声 対策に生かす 山口
対話の場が生きる力に 秋山
コロナが招く重症化の不安
町永 山口さんは最先端のがん医療を担うとともに、患者や家族の支援に取り組んでいます。新型コロナウイルスの感染拡大で、がん医療への影響はありますか。
山口 診療の現場ではほとんどありませんが、重症の方への付き添いや見舞いを制限せざるをえない状況が続いており、患者や家族につらい思いを強いてしまっています。全国的にがん検診がとまっていることも懸念しています。検診が始まったら、ぜひ受けていただきたいと思います。
町永 秋山さんは長年訪問看護に携わり、今はがん経験者や家族をサポートするマギーズ東京のセンター長をされています。
秋山 マギーズ東京は、どんなことでも相談していただける場所。同じ空間を共有し、息づかいやぬくもりを感じながら話をうかがうのが特徴です。本来誰でも気軽に来ていただけます。ただコロナ禍で当初は電話やメール、オンラインのみ、ようやく5月末から対面相談を再開しましたが、残念ながら予約制とさせていただいています。
町永 コロナ禍でどのような不安を感じているか。視聴者アンケートの結果で最も多かったのが「重症化の不安」でした。
山口 治療で免疫が落ちているがん患者が感染で重症化しやすいのは事実です。ただ、3密回避やマスク着用、手洗いなどを徹底すれば、100%とはいえないものの、そう簡単に感染することはないと思います。こうした正しい情報提供も大切です。
秋山 定期健診が先延ばしになったり、乳がんの摘出手術はできたけど再建手術は後回しにされたりしたケースもあり、治療継続への不安も大きいようです。感染での重症化を防ぐために家にひきこもった状態で、気持ちのはけ口がないという相談もありました。電話するにも勇気がいるかもしれませんが、対話できる場を探していただくことが大事ではないかと思います。
漢方薬服用し“空腹の喜び”
町永 静岡県立静岡がんセンターでは、がん治療と暮らしの中に患者の声をどう組み込むかを模索する中で、患者への聞き取り調査を行ってきました。
山口 2003年と2013年にアンケート調査をし、その10年で抗がん剤治療の副作用の悩みが非常に増えたことがわかりました。抗がん剤治療が一般化したことと、多くが外来での治療のため、副作用に自宅で対処しなければならないことが要因です。がん患者の3割が離職しているという就労の問題も明らかになりました。こうした結果はその後のがん対策の重要なテーマになっています。患者や家族の声を分析する中で、がん治療に伴う痛みには「診療上の悩み」「身体の苦痛」「心の苦痛」「暮らしの負担」があることが見えてきました。
秋山 医療の進歩で、がんとともに歩む期間が長くなりました。それに伴い、様々な悩みが増えています。
大塚 頭では治療効果が良好とわかっていても、体調は一向に改善されない。人とのつながりも少なくなり、自分がカプセルとして宇宙のゴミになって漂っているように感じて、とても不安になりました。転機になったのは、漢方薬を服用するようになって食欲不振が改善されたことです。「おなかがすいた」という感覚がとてもうれしかった。それから次第に体調がよくなっていきました。
山口 21世紀のがん治療はがんを治すだけではなく、患者を支える「支持療法」です。大塚さんのケースのように治療に伴う副作用の痛みもケアします。
町永 がん情報は第二の医療ともいわれるくらい重要ですが、自分にとって何が必要な情報かを判断するのは難しいですね。
山口 webサイトなどで様々な情報が乱れとんでいる。その中で、薬を処方するように、これだけは押さえてほしいという情報を提供する「情報処方」を行っています。静岡がんセンターのホームページには副作用への対処法をはじめ、多くの情報が掲載されています。ぜひ読んでみてください。
【VTR1】
乳がんが再発し、右の乳房を全摘した大塚さん。その8年後、肝臓、リンパ節、骨への転移が見つかり、抗がん剤の副作用による食欲不振に苦しむ。医師の勧めで漢方薬を服用し始めて体調が改善。食事がおいしいという感覚を取り戻し、暮らしが変わり始めた。
パネルディスカッション 第2部
経験者同士の語らい励みに
町永 視聴者から、病院での「医療者ー患者」という関係では、なかなか相談しにくい。病院以外の第三の相談の場が必要という声が届きました。
池山 がん相談支援センターでがん患者の悩みに寄り添っています。がん相談支援センターは全国のがん診療連携拠点病院などにあり、その病院に通院していなくても無料で相談できます。体のことだけでなく医師との関係や心のこと、お金のこと、仕事のことなど幅広く対応しています。今はコロナ禍での仕事や経済的な影響で、がん治療をどうやって続ければいいのかという相談が多いですね。
町永 がん患者は孤立しがちです。どんなことで孤立を感じたかという視聴者アンケートの結果、非常に多かったのが「死に対する恐怖」でした。
山口 がんになっても約6割が治るようになりましたが、患者は悪い方に考えてしまうもの。また、がんは手術して終わりではなく、経過観察を要します。10年を経て医学的にほぼ治ったという方でも、死の恐怖を持ち続けています。
町永 「存在意義を見失った」という方も多いですね。
秋山 がんになって思い描いていた人生設計が崩れてしまったら、希望を絶たれたように感じてしまうでしょう。そこを乗り越えるためには、誰かとつながっているという安心感が力になるはずです。ただ時間はかかりますし、簡単なことではありません。
河村 私が子宮頸(けい)がんと診断されたのは32歳の時でした。自分にはできない出産や育児ができると思うと、若い看護師にも嫉妬をおぼえたものです。やり場のない感情は一人で抱え込んで夫にも話せませんでした。それが、ある患者会に参加したことをきっかけに堰(せき)を切ったように話せるようになり、その経験から自分でも患者会を設立しました。同じ経験をした者同士が集まって話をして、自分を見つめ直す場です。私自身も大きな力をもらっています。肉体的な母になれないことに悩みましたが、今は社会的な母になろうと活動を続けています。
【VTR2】
結婚1週間後に子宮頸がんと診断され、子宮摘出手術を受けた河村さん。誰にも語れない悩みに苦しんだ末に、女性特有のがんで苦しむ人たちの患者会を設立する。河村さんや参加者にとって、経験者でなければわからない悩みを語り合うことは生きる力だ。
悔いない最後 看取りの理想
町永 佐藤さん親子は、膵臓(すいぞう)がんで余命宣告されたご主人を在宅で看(み)取りました。
佐藤美由紀 死に向かっていく夫が一番苦しいのはわかっていましたが、現実的に自分たちの生活のことも考えないといけない。言葉にできない葛藤がありました。
佐藤みのり 看取りは初めての体験。最後の瞬間、父はほんとに苦しそうで、今までがんばってきたし、早く楽になってほしいという思いでいました。
山口 医師を志して50年。どういう看取りが患者と家族にとってよいのか考えてきました。患者が最後の瞬間に悔いはないと考えてくれるか。家族にとっては、体は弱っていても最後まで心はいつも通りだったと思ってくれるかどうか。そういう状況を作ることが大事と思っています。
秋山 単独世帯が増えています。家族がいない方でも、望めば地域で看取ることができる体制が整えられるといいですね。その方の命が亡くなっても、そこにいた方々の中で生き続け、語り継がれるというのが理想ではないでしょうか。
【VTR3】
余命宣告された夫・明夫さんの望みで自宅での緩和ケアにきりかえた佐藤さん。夫にどう寄り添えばいいか悩み、娘もかける言葉が見つからない。明夫さんは娘の将来について「生きてきたように生きればいい」と口にした数日後、家族が見守る中、息をひきとった。
主催:読売新聞社 NHK厚生文化事業団 NHKエンタープライズ
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