フォーラム「がんと生きる 〜こころとからだ 私らしく〜 」(長野)
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フォーラム「がんと生きる 〜こころとからだ 私らしく〜 」 (長野)
医療の進歩 広がる希望
がんの最新情報を紹介するフォーラム「がんと生きる」が、10月17日にホクト文化ホール(長野市)からオンラインで配信され、全国から多くの視聴者が参加した。医療技術の進歩により、がんが治る確率が高まるとともに、がん当事者の困難を支える様々な取り組みも生まれている。患者の負担が少ない手術や、苦しみのなかにいる患者をSNSを利用して支援する取り組みなど、がん医療の新たなトピックをめぐり、医療者とがん経験者が語り合った。
パネルディスカッション 第1部
負担少ない内視鏡手術 小山
治療効果を事前に予測 中村
早期発見が治療のカギ
町永 がんに対するイメージについての視聴者アンケート(※1)。どのように感じますか。
小山 「死に直結する病気」が55人、全体の約4分の1ですね。30年前だったら9割はいたのではないでしょうか。
大久保 ネガティブな意見が多いという印象です。全がんを平均した5年生存率は今、7割弱まであがっています。「治る病気」がもっと多くていいのではないかと感じます。
齋藤 「治る病気」と考える方は増えていると思いますが、それまでに治療や様々な症状、精神的な苦痛がある。この結果はそのあらわれかもしれません。
町永 内視鏡というと診断に使用されるイメージですが、今は手術にも使われていますね。
小山 胃がんのほか食道がん、大腸がんなどにも適用されています。局所切除のため器官を温存でき、入院期間が短くて済むなど、開腹手術に比べて患者の負担が少ないのが特長です。技術が進み、正確で自在な切除が可能なESD(内視鏡的粘膜下層剥離<はくり>手術)では、10センチくらいある大きながんをとることもできます。ただ、手術できるのは転移していないがんだけです。
胃がんの場合、表面の粘膜にとどまっていれば転移の可能性は低い。この段階では自覚症状がなく、検査でなければ発見できませんが、手術による完治の可能性は高いでしょう。食欲がない、胃がもたれるといった自覚症状がある場合はもう少し深い層にまで広がり、転移している可能性が高い。この場合は開腹手術の必要があります。
町永 化学療法も進歩がめざましいですね。どういう種類がありますか。
中村 抗がん剤、ホルモン剤、分子標的治療薬のほか、自分の体の免疫を活性化してがんを退治する免疫チェックポイント阻害剤があります。どの治療を採用するのがよいか適切な判断が求められます。
そこで注目されているのがプレシジョンメディシン(精密医療)です。がん細胞の遺伝子から、どの薬がその人に合うかを調べて治療法を選択します。以前は薬の効果は投与してみなければわからないところがありましたが、ある程度事前に予測できるようになりました。
検査の結果、薬が見つからなかったり、効くと思われた薬が効かなかったりする場合もあります。ただ、世界中で研究が行われており、時間とともに選択肢が広がることが期待されます。
小山 化学療法の進歩で、がんを小さくすることが可能になり、これまで諦めなくてはならなかったケースも希望が持てるようになった。これはすばらしいことです。ただ、がんが小さくなることと病気が治ることは異なります。早期発見、早期治療をまず第一に考えていただきたいですね。
※1 オンラインフォーラム中に視聴者に呼びかけたアンケート
【VTR1】
胃がんと診断された小池さん(77)。がんは5センチと大きかったが、胃の粘膜にとどまっていたことから内視鏡手術が採用された。1時間の手術でがんは完全に切除。体調も問題なく、術後3日後に普通の食事がとれるように。6日後に趣味のウォーキングも再開した。
症状和らげる注目の漢方薬
町永 化学療法の副作用が患者の大きな負担になっていますが、医療者は「有害事象」と呼ぶそうですね。
中村 副作用は薬との関連が確実なものを指し、関連がわからなくても薬を使っている間に起きるものを有害事象と呼びます。有害事象には脱毛や味覚障害、吐き気などがあります。有害事象によって気持ちや体力が落ちると治療を続けられなくなることもあるので、症状を抑えることは重要です。
化学療法が進歩しているように、有害事象を抑える医療も進歩しています。10年くらい前から用いられているのが漢方薬です。手足のしびれや便が出にくいといった症状を抑えるのに効果があるといわれています。
【VTR2】
大腸がんに罹患した小松さん(83)。リンパ節への転移が見つかり、手術ができない状態で、余命宣告されたが、最新医療のプレシジョンメディシンで適合する治療法が明らかに。その治療の5か月後にがんは縮小。今では以前と変わらない日々を過ごしている。
パネルディスカッション 第2部
社会復帰の体験を発信 大久保
自分を深く見つめ力に 齋藤
副作用のつらさ漢方薬で対処
町永 全がん平均の5年生存率、最新のデータでは68・4%(※2)です。
小山 がん種によって数値は異なりますし、同じ胃がんでも、進行度によって差があります。また、がん種によってもう少し長く経過観察を要するものもあります。
町永 大久保さんは、約1万人が登録するがん当事者の会員制SNSサイト「5years」の設立者です。5年生存率から名前をつけたとか。
大久保 がん患者が診断後も前向きに生き、5年後、みんな元気に社会復帰してほしいという思いをこめて名づけました。がんになって社会復帰した方の体験は希望になります。そうした事実を知ることで多くの方が救われるのではないかと思い、情報発信に努めています。
町永 生き生きと過ごしているがんサバイバーがいかに多いか知られていません。大久保さん自身、生存率20%以下の精巣がんから復帰して、100キロメートルのウルトラマラソンを何度も完走しています。
大久保 私の場合、同じ精巣がんから復帰した米国のプロスポーツ選手がロールモデルになりました。しかし朝起きて歯を磨いた、会社に行ったなど、日々の暮らしの情報だけでも、患者には希望になると思います。
町永 視聴者にがんについての悩みをうかがったところ、最も多かったのが「先行きの不安」でした。
齋藤 ほかの不安は専門家に相談できるかもしれませんが、「先行きの不安」だけはつかみどころがなく個々に対応しないといけない。そのあたりの難しさが要因ではないでしょうか。
中村 全国のがん診療拠点病院内にあるがん相談支援センターで、様々な相談に応じています。医療者にいえないこと、経済的な問題など、なんでも相談でき、通院している病院でなくても対応してもらえます。
※2 国立研究開発法人国立がん研究センター調べ、2009年から2011年症例
【VTR3】
5年生存率20%といわれる精巣がんから社会復帰した大久保さんは、その経験を生かして当事者が交流する会員制のSNSサイトを設立した。しっかりしたガイドラインのもと、がんから復帰し元気に暮らす人々の情報を発信。多くの当事者に希望を与えている。
自分の内なる声 “先に進めない”
町永 齋藤さんが松本市に設立したがん哲学カフェ。どういう取り組みですか。
齋藤 順天堂大学の樋野興夫先生が始めた「がん哲学外来」の活動に共感して始めたもの。根源的な視点からがんをとらえ、参加者が自分を見つめ直す場と考えています。
町永 齋藤さん自身、乳がんに罹患(りかん)しました。治療中の有害事象に苦しむなかで「がん細胞は自分の一部」という思いが芽生えて手術の延期を決めます。当事者でなくてはわからない心境かもしれません。
齋藤 当事者でもわからない方がいらっしゃると思います。母としての自分、仕事をしている自分といった社会的な立場を離れて、自分の内側からわき上がってくるものに耳を傾けたくなりました。命と乳房を交換する。結果的にそういう思いにたどりついたうえで手術を決めました。
大久保 自分は合理的な人間だと思っていますが、家族や仕事、趣味など、大切なものから次々引き離されていくなかで立ち止まりたいと抵抗した瞬間がありました。「先に進めない」という心境はよくわかります。
中村 主役は患者、医療者は脇役です。自分らしく生きるために医療はあり、そのために私たちは全力でサポートします。
小山 がん当事者が、先輩患者からもらうエネルギーがほんとに大きなものだと感じました。医療者の立場からいうと、やはり早期発見に勝るものはありません。そのためにきちんと検診を受けていただきたいと思います。
【VTR4】
がんと診断され、いいようのない感情にさいなまれて治療を中断していた金井さん。「松本がん哲学カフェ」で出会った、同じ乳がん経験者の齋藤さんの言葉に影響を受け、自分の内面を見つめ直す。その結果、がんに対する見方が変わり、治療を受け入れる。
主催:読売新聞社 NHK厚生文化事業団 NHKエンタープライズ
後援:NHK長野放送局 厚生労働省 長野県 長野市
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