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フォーラム「がんと生きる 〜こころとからだ 私らしく〜 」(京都)

広告 企画・制作 読売新聞社ビジネス局

フォーラム「がんと生きる 〜こころとからだ 私らしく〜 」 (京都)

進む医療 高まる治療効果

 京都発オンラインフォーラム「がんと生きる」が、1月30日に配信され、全国から多くの視聴者が参加した。2度の乳がんの再発を経験する俳優の生稲晃子さんは、自身の闘病について語った。パネルディスカッションでは、医療者と医療関係者、生稲さんらがん経験者が、新しい治療法や副作用のつらさを支える方法などについて語り合った。

2度の再発克服 家族に感謝
町永 今はお元気ですが、過去に乳がんを経験されています。
生稲 2011年の人間ドックで見つかりました。早期発見で転移もなかったので、切除すれば大丈夫と楽観視していました。しかし、手術して1年後に再発。さらにその翌年にも再発が発覚し、また手術を受けました。「再発したら終わり」といわれていた時代、恐怖がありました。
町永 1度目の再発時は温存手術でしたが、2度目は全摘出手術。つらい経験でしたね。
生稲 温存するリスクは大きく、当時6~7歳の娘が成人するまでは責任をもって生きなくてはいけないという思いもありました。ともに生きてきた体の一部を切除して、申し訳ないという気持ちにもなりました。
町永 放射線治療も経験しています。
生稲 照射する位置がずれないように、首のあたりに消えないマジックでマーキングします。それが人に見えないか、とても気になりました。当時はがんを公表していなかったのです。隠しごとをしている罪悪感が疎外感や孤独感につながり、自分自身が萎縮(いしゅく)していた時期です。
町永 現在はがんの経験を積極的に発信しています。勇気をもらっている方も多いと思います。がんであることを隠さずに生きられる社会になるといいですね。
生稲 退院して自宅に戻った時、自分が家族に必要とされていることにあらためて気づかされて、感謝の気持ちがわきました。がんは憎い敵ですが、そういう気づきがあったことに感謝している部分もあります。
町永 医療に思うことは。
生稲 先生には、自分の思いを伝えることが大事です。真剣に伝えれば先生もこたえてくれるはず。患者と医師といっても人間と人間です。患者さんには、そういうつながりを大事にしながら、治療にのぞんでほしいと思います。

俳優
生稲 晃子 氏
いくいな・あきこ 1986年、おニャン子クラブのメンバーとしてデビュー。現在は女優、講演活動などで活躍中。厚生労働省「がん対策推進企業アクション」アドバイザリーボードメンバーなども務める。著書に「右胸にありがとう そしてさようなら」。

パネルディスカッション

放射線治療が高精度に 溝脇
身近にかかりつけ医を 長尾

診療科の枠超え ユニット外来
町永 がん医療にはどんな治療があるのでしょう。
溝脇 手術、放射線、抗がん剤が治療の3本柱。分子標的薬も広い意味での抗がん剤になります。抗がん剤は正常な細胞も攻撃してしまいますが、分子標的薬は、標的とするがん細胞を狙って作用します。ただ、がんの種類によっては従来の抗がん剤の方が有効な場合もあります。
梅田史世 抗がん剤の副作用につらい思いをしました。分子標的薬に切り替え、効果がありました=VTR❶=。
町永 放射線治療も進歩しています。
溝脇 以前と比べて、放射線を照射する位置を細かく調整できるようになり、高い放射線量を当てても副作用が起こりにくくなりました。いびつな形のがん細胞にもぴったり合わせて照射することが可能です。ただ、専門医が少ないという課題があり、後進の育成に努めています。
町永 京都大学病院の新たな取り組み、ユニット外来とは。
溝脇 同じ外来で関連する複数の診療科の医師が1人の患者を診察し、治療を進めていきます=VTR❷=。例えば前立腺がんなら放射線治療科、泌尿器科がユニットを組んで対応します。患者側はワンストップで各専門家の話が聞け、医療者側も複数人で診療にあたることで、より良い治療をめざせます。
生稲 いろいろな角度からみてもらえるのは安心ですね。
町永 再発の宣告は当事者に衝撃を与えます。再発とどう向き合えばよいのでしょう。
梅田恵 母・史世は高齢でしたが、仕事を続けていたことが力になりました。やめさせなければいけないと思っていた時期もあったのですが。
町永 再発後の治療は。
溝脇 患者の考えや体の状態などから判断します。主に抗がん剤治療になりますが、再発の範囲が狭ければ、手術や放射線治療を行う場合もあります。
町永 視聴者から「インターネットのがん情報は不安」という声が寄せられました。
梅田恵 ピアサポートのような、体験者同士で情報交換できる場なども利用できるといいですね。
長尾 身近に相談相手を確保できるといいと思います。そういう意味で、専門医のほかに、かかりつけ医を持つことをおすすめします。

【VTR❶】9年前に胃がんに 再発後も仕事続ける
梅田史世さんは9年前、70歳の時にステージ4の胃がんを罹患(りかん)した。初回の抗がん剤治療で、吐き気などの副作用に苦しんだが、分子標的薬の適応があったので抗がん剤治療が継続でき、腫瘍が縮小、手術によって腫瘍は見えなくなる。しかし5年後に肝臓への転移が見つかり、手術、抗がん剤、新しい分子標的薬の治療を受けながら仕事を続けている。

【VTR❷】ユニット外来 最善の治療探る
京都大学病院のユニット外来。泌尿器科や放射線治療科の医師らがチームを組み、前立腺がんの患者の治療について議論を重ねている。放射線を骨盤全体に当てるか、ピンポイントで当てるかーー。診療科の枠を超えて、最善の治療を探るこの取り組みに、医療者は手ごたえを感じている。

京都大学大学院 医学研究科 放射線腫瘍学・画像応用治療学 教授
溝脇 尚志 氏
みぞわき・たかし 1989年に京都大学医学部卒業。97年に同大学大学院医学研究科を修了。99年に京都大学附属病院放射線治療科助手に。2016年から現職。関連各科と連携したユニット外来を実践し、患者・家族への最良の医療提供に尽力している。

医療法人社団裕和会 長尾クリニック 院長
長尾 和宏 氏
ながお・かずひろ 東京医科大学病院卒業後、大阪大学第二内科入局。1995年、神奈川県尼崎市で「長尾クリニック」を開業。外来診療のほか在宅医療を実践する。著書に「薬のやめどき」など。「痛くない死に方」は映画化され、2021年春に公開された。

副作用のつらさをケア
町永 抗がん剤の副作用にはどういうものがありますか。
長尾 脱毛や口内炎、吐き気、手足のしびれなど、影響は全身に及びます。
生稲 ホルモン治療の副作用で倦怠(けんたい)感、うつ症状に苦しみました。ホットフラッシュといわれるほてりの症状は、周囲に気づかれたくなくて、平静を装うのにも体力を消耗しました。
町永 副作用を軽減するサポーティブケアとは。
長尾 下痢や食欲不振には漢方薬が使われます=VTR❸=。外見のケアも大切で、脱毛にはウィッグを使用します。手足のしびれには様々な鎮痛薬や漢方薬、マッサージが有効です。
町永 抗がん剤のやめ時について視聴者アンケートをとりました=下図=。ほぼ半数が「自分で決める」と回答しました。
長尾 本人の意思を尊重することが大切です。そのために元気なうちから、家族だけでなく医療者を含めて話し合いをしておくのが理想です。
梅田史世 白血球に影響が出て、薬の回数を減らしました。さらに影響が出た時がやめ時かもしれません。その覚悟はしています。若かったら違う考えになったかもしれません。

【VTR❸】4年前乳がんに 漢方薬で副作用緩和
4年前にステージ4の乳がんを罹患した太田明子さん。抗がん剤でがんは縮小したが、昨年再発。分子標的薬の治療を始めた。効果はあったが、下痢などの副作用で仕事との両立に苦しみ、そんな中漢方薬と出合い、症状が緩和された。

ともいき京都 発起人
NPO法人水度坂友愛ホーム 相談役

梅田 史世 氏
うめだ・ふみよ 国立病院の看護師長を52歳でやめ、京都初のがんホスピス設立に参加。57歳で高齢者ケアのNPO法人を設立した。2013年にステージ4の胃がんに。その5年後に再発。現在も治療を受けながら、仕事に情熱を燃やし続けている。

生きがいが力に
町永 病室写真家・TAKAさんをVTRで紹介しました=VTR❹=。闘病生活の中で、写真を撮るという生きがいが大きな力になっていました。
生稲 がんになって「なるようにしかならない」と開き直った瞬間がありました。投げやりな考え方にも思いましたが、それで前向きになれたのも事実。TAKAさんも同じ思いを抱いていました。
梅田文世 好きなものに夢中になることは大事ですね。
梅田恵 先のことばかり考えてしまうところがあります。「今日を大事にする」ということに集中したいと思います。
長尾 患者を笑顔にすることが私の役割。眉間にしわのある闘病中の方をいかに楽しませるかをいつも考えています。治療とともに、今を楽しむということを、あらためて大切にしたいと思いました。
溝脇 医療行為は重要ですが、患者の生きがいという部分へのサポートはまだまだと感じました。今後の課題だと思います。

【VTR❹】病室写真家 ベッドから撮影 夢中に
病室写真家・TAKAさんは、病室から見える風景を撮り続けている。きっかけは6年前、多発性骨髄腫になり、絶対安静のベッドの上から美しい朝焼けの写真が撮れたこと。病気がちっぽけなことに思え、今の状態を受け入れて楽しもうという気持ちになった。カメラが生きがいになり、撮影中は痛みも忘れることができた。

がん看護専門看護師
梅田 恵 氏
うめだ・めぐみ 母・史世さんと同じ看護師の道に進み、がん看護の分野での経験を重ね、がん看護専門看護師になる。その経験や知識を生かし、がんに罹患した史世さんを、治療の選択や療養の進め方などの面で、サポートしている。

コーディネーター
福祉ジャーナリスト

町永 俊雄 氏
まちなが・としお 1971年にNHK入局。2004年から「福祉ネットワーク」キャスターとして、各地でシンポジウムを開催。現在はフリーで活動。

主催:読売新聞社 NHK厚生文化事業団 NHKエンタープライズ
後援:NHK京都放送局 厚生労働省 京都府 京都市
協賛:ツムラ

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