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フォーラム「がんと生きる 〜こころとからだ 私らしく〜 」(愛知)

広告 企画・制作 読売新聞社ビジネス局

フォーラム「がんと生きる 〜こころとからだ 私らしく〜 」 (愛知)

正しいがん情報 見極めを

 最新のがん医療について語り合うフォーラム「がんと生きる」が6月27日、ウインクあいち(名古屋市)から全国にオンライン配信され、多くの視聴者が参加した。患者・家族にとって切実ながん情報の問題や、がん経験者による支援の取り組みなどをテーマに、医療者と医療関係者、当事者らが語り合った。また、6月30日に大腸がんで亡くなった元プロ野球選手の大島康徳さんが当初、同フォーラムに参加を予定していたが、体調不良のため参加をとりやめた。かわりに妻の奈保美さんが都内の自宅からリモート出演した。

パネルディスカッション 第1部

標準治療は最良の治療 堀田
患者の意思尊重しケア 三嶋

有効性・安全性のデータは
町永 がん情報は「第二の医療」といわれるほど、患者や家族にとって重要です。がん情報をどこから得ているかという視聴者アンケートを行いました。最も多かったのはインターネット=下図=でした。一方、インターネットのがん情報は、日本の場合、公的な機関やNPOのものが少なく、大半が医療機関や営利団体、個人のもののようです。
堀田 3年前に医療広告のガイドラインが定められて以降、改善されてきているとはいえ、ネット情報は玉石混交です。正しいものを見極める必要があります。公的機関の情報でないものは注意が必要ですし、大学教授のような権威のある人が薦めているから正しいわけでもありません。治療法や薬の有効性についてのデータや、副作用のことが示されていない情報は気をつけたほうがいいでしょう。
花井 がんになることを想定して、日頃から多少なりとも、がんについて勉強しているのが理想ですが、現実には少ないことでしょう。突然の宣告に平常心を失って、医師の話が理解できないというケースも多いのでは。そういう状態で帰宅後にネット検索しても、自分に合った情報にたどり着くのは難しいと思います。
三嶋 正しくない情報は、言葉巧みに誘うので、不安があるほど引き寄せられやすい。医療の専門用語は難解なので、正しい情報の説明を受けても患者さんが理解するのは大変です。
花井 ある程度、がんについて理解していて、一緒に考えていける相談相手が身近にいるといいですね。
堀田 国立がん研究センターのがん情報サービスのホームページがあります。様々な情報が網羅的に整理されていて、右上の検索窓から関心のあることに直接とぶこともできます。がん相談支援センターや患者会のホームページなど、他のサイトを参照してみるのもいいでしょう。

公益財団法人がん研究振興財団 理事長
国立研究開発法人国立がん研究センター 名誉総長

堀田 知光 氏
ほった・ともみつ 1969年に名古屋大学医学部卒業。2006年に名古屋医療センター院長。18年から現職。患者・家族に向き合う「チーム医療」の実践に力を注ぐ。20年に自らも十二指腸がんを罹患(りかん)。

民間療法 価格はどうか
町永 標準治療とは何でしょう。
堀田 平凡な治療と誤解されることがありますが、臨床試験のデータに基づいて有効性・安全性が確認された、現時点で最良の治療のことです。効果を確認するための臨床試験の対象になっているものが治験です。先進医療は将来の保険診療を視野に研究中の治療です。
 ほかに保険診療を目指さない自由診療があります。全て根拠がないとはいいきれませんが、一般的に根拠のある治療は保険診療に移行します。サプリのような民間療法も根拠がはっきりしない部分を含んでいます。
三嶋 主治医に怒られるから民間療法をやっているといえる方は少ないと思います。それを抵抗なくいえる医師患者関係を築くことが大事です。患者さんが民間療法をやっているといったら、費用を尋ねてみます。それほど高価でなく、不安の軽減に役立っているのであれば大目に見ることも多いです。
堀田 治療に差しつかえないかどうかを確認することも重要ですね。

愛知医科大学教授・がんセンター長
三嶋 秀行 氏
みしま・ひでゆき 1984年に大阪大学卒業。同大学第2外科に入局。2012年に愛知医科大学教授。消化器がんの化学療法が専門。担当医と患者の意識の隙間を埋める目的でがん総合診療も行う。

パネルディスカッション 第2部

ありのまま受け止める 花井

がん経験者が患者支える
花井 がん経験者が、がん患者の悩み相談にこたえるピアサポート活動をしています。がん患者は大きな荷を背負いながら毎日生きているようなもの。悩みを語ることで一時的に荷が下ろされて、前を向けるということがあります。同じ悩みを共有し、話を聞いてくれる仲間の存在は大きいです。
町永 一番大切にしていることは何ですか。
花井 患者さんの状態をありのままに受け止めることです。訓練が必要な難しいことだと思います。患者経験が長い人はステージ1の人に対して、「良かったね」と思いがちですが、それは禁句です。
堀田 医療者と患者の関係を、与える者与えられる者という意識が邪魔することがあります。ピアサポートの活動はその隙間を埋めるもので、とても重要です。
町永 抗がん剤などの副作用のつらさを和らげるサポーティブケアとは。
三嶋 辛い物を食べる時に一緒に出す水のように、抗がん剤の心身のつらさを和らげるのがサポーティブケアです。吐き気止めなどの薬、食欲不振の方への栄養指導や、漢方薬なども使います。日常生活への影響が大きい場合には、患者さんの意向を尊重しながら、抗がん剤の量や種類を変えたりやめたりすることも選択肢になります。
堀田 脱毛や爪の変色といった外見に関する副作用は、軽視されがちでしたが、社会生活の中で治療していくことが一般的になった今、ストレスの要因になりかねないので、しっかりケアするようになっています。

【柴原さんのVTR】
 悪性リンパ腫に罹患(りかん)した柴原さん(61)は、抗がん剤の副作用に苦しむ中、同じ悩みを共有できる、ピアサポーターといわれるがん経験者との交流を通して心に余裕が生まれる。自分も誰かの役に立ちたいという思いが芽生え、ピアサポーターの資格を取得した。

NPO法人ミーネット 理事長
花井 美紀 氏
はない・みき 病名を知らせないまま亡くなった父が、がんに気づいていたことが死後に判明する。「名古屋市がん相談情報サロン・ピアネット」運営。愛知県内のがん診療連携拠点病院内でも活動。

寄り添い方の関心深めたい
町永 がん患者と支援者が語り合う場での、谷島さんの発言が反響を呼びました。少なからぬがん患者が、他者との関わりでつらい思いをしていることを伝えるものでした。
谷島 がん患者の心は不安定に揺れ動いていて、その時々で周囲に対して「わかってほしい」「わかってたまるか」と、反対の感情を抱くこともあります。そんな中でいただく、「弱気になってはいけない」「小さい子どもがいるから頑張らなくちゃ」といった言葉に、感謝する一方、傷つくことがあります。善意とわかるだけに、そのことを伝えられないもどかしさもあります。関心を深めたいという思いもあって、「寄り添いハラスメント」という強めのワードで表現しました。
花井 周囲もどうしていいかわからない中、苦しみながら言葉を発している面があるかもしれません。
谷島 お互いのことはわからないという前提に立って、それでもわかろうとし続けることが大切ではないかと思います。
町永 「どういう言葉ならハラスメントではないのか」という、谷島さんへの批判があったといいます。お互いの溝を埋めるためには、そういう率直な言葉を積み重ねていくことが大事なのかもしれません。

リモート出演した谷島さん

【谷島さんのVTR】
 希少がんのジストを罹患した谷島さん(43)。周囲の善意からの言動にも、患者は傷つくことがあるという言葉が反響を呼ぶ。一方、寄り添いの言動を押しつけがましく感じたとしても、気持ちは涙が出るほどありがたいという意見も。寄り添いの意味とは何なのか。

コーディネーター
福祉ジャーナリスト

町永 俊雄 氏

対談 大島 奈保美 × 町永 俊雄

社会とのつながりが力に

町永 大島さんは、特別扱いしてほしくないとおっしゃるそうですね。
奈保美 自分が大丈夫といったら大丈夫。助けがほしい時には頼むから、普通に生活してほしいと。私に対する思いを直接口にすることはあまりありません。こういうことを思っているのかと、ブログを通じて初めてわかることも多いです。家族としては、彼が望むことを全力でサポートするだけです。
町永 当時者だけでなく家族も困難を抱えていて、第二の患者ともいわれます。
奈保美 あまり感情をためこむと変な形で爆発してしまうので、2人の息子とは、交換日記でその時々の気持ちを確認し合っています。
町永 大島さんがこの場にいたら、何とおっしゃっていたでしょう。
奈保美 がんという病気を患っていても病人ではない。生活に制限があっても、可能なことを続けていける社会になってほしいと伝えたかったのではないかと思います。

大島康徳さんの妻 大島 奈保美さん

*大島康徳さんのご冥福(めいふく)をお祈りいたします。

【大島さんのVTR】
 大島さんは、5年前にステージ4の大腸がんと診断された。がんは肝臓にも転移していて、治療しなければ余命1年と告げられる。手術後、抗がん剤治療を続ける中、前向きに生きるためにブログで病気を告白し、今まで通りに接してほしいと呼びかけた。
 この5月には、名古屋で野球解説の仕事を行った。「社会と引き離されてしまうのが一番つらい。生きがいを取り上げられたら病気に立ち向かっていけない」と大島さんは語った。
 その後腹水がたまり、食欲が低下して厳しい状況に。そんな中でもブログには、今の時間を大切にする言葉がつづられていた。

会場で流れたVTR内の大島さん

元プロ野球選手・プロ野球解説者
大島 康徳さん
おおしま・やすのり 1968年に中日ドラゴンズに入団。94年現役引退。2016年に大腸がんと転移性肝臓がんが発覚し、手術で大腸がんを切除。抗がん剤治療を受けながら野球解説の仕事などを続けた。

■ダイジェスト動画

主催:読売新聞社 NHK厚生文化事業団 NHKエンタープライズ
後援:NHK名古屋放送局 厚生労働省 愛知県 名古屋市
協賛:株式会社ツムラ

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