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フォーラム「がんと生きる 〜こころとからだ 私らしく〜 」(郡山)

広告 企画・制作 読売新聞社ビジネス局

フォーラム「がんと生きる 〜こころとからだ 私らしく〜 」 (郡山)

 がん医療の最前線を伝える「フォーラム がんと生きる」が8月4日に、福島県郡山市の「ビッグパレットふくしま」で開催され、多くの聴講者が参加した。医療の進歩によって新しい治療法の開発が進むとともに、「支える医療」が病と向き合うがん患者の力になっている。最新医療や、がんの当事者同士が支え合う取り組みなどをめぐり、医療関係者とがん患者らが語り合った。

パネルディスカッション 第1部「期待される最新医療」

免疫療法と放射線治療の併用

町永 がんの治療法にはどのようなものがありますか。
河野 手術、放射線治療、抗がん剤治療が従来の三大治療で、そこに新たに免疫療法が加わりました。組み合わせて行うことで、より高い治療効果が期待できます。免疫療法にはいろいろな方法があり、現在効果が証明されているのが免疫チェックポイント阻害剤です。もともと人の体には、がんを攻撃する機能を持つリンパ球という免疫細胞があります。がん細胞はリンパ球にある攻撃のブレーキボタンを押すことで身を守ろうとします。免疫チェックポイント阻害剤は、このブレーキボタンにフタをして、リンパ球ががん細胞を攻撃できるようにします。
町永 今後の可能性は。
河野 免疫療法と放射線治療を併用する治療に取り組んでいます。免疫が弱ってしまうこともある放射線治療を、免疫を高めるために使います。がん細胞を完全にやっつけるのではなく傷つけるくらいにとどめると、がん細胞から免疫を元気にする抗原というたんぱく質が出るのです。臨床試験の段階ですが、大きな可能性を秘めていると思います。
町永 免疫療法の副作用は、抗がん剤とは少し性質が違います。
河野 全体の10%と頻度は少ないですが、治療によってブレーキを外したリンパ球が、自分の臓器を壊してしまうことがあります。例えば、すい臓がんだとインシュリンが出なくて、糖尿病になってしまうケースもあります。
中村勉 免疫チェックポイント阻害剤を受ける中で、突然体の力が入らなくなり、起きることもできずに救急車を呼んだことがあります。血液検査の結果、副腎皮質ホルモンへの影響だとわかりました。
河野 早めに察知することが大切で、副作用かなと感じたら、すぐに主治医に伝えていただきたいと思います。

【VTR】
胃がんの男性(68)は他の臓器への転移も見つかり、余命1年3か月と宣告される。望みを失いかけていたところ、新聞記事で知った免疫療法と放射線治療を組み合わせた最新治療を受けることに。1か月後、腫瘍マーカーが下がり、体力も徐々に回復し始めた。

福島県立医科大学 医学部 消化管外科学講座 主任教授
河野 浩二 氏
こうの・こうじ/1987年に山梨医科大学医学部卒業。2016年より現職。食道外科医として、免疫療法と放射線治療を組み合わせた新しい治療法の臨床開発に精力的に取り組んでいる

治療と暮らしの両立を支える
町永 神戸先生は医師の少ない福島県の南相馬で地域医療を担っています。
神戸 医療連携や地域内の他業種の方などと協力して、患者さんの地域での暮らしを支えています。生活を維持しながら、がんの治療もしっかり行う。どちらも重視したいという思いがあります。
河野 専門的で高度な治療を受けられる病院は限られていますが、そうした治療を受けた後は、地元の病院で継続治療するというがん治療のネットワークが福島にはあります。うまく機能分担することが大切です。
鈴木 大きな病院で手術した後に連携病院に紹介されると、大病院から見捨てられたと感じてしまう患者さんもいます。ただ、先生方は顔が見える形で連携していて、一人ひとり力を尽くしていることをわかってもらえるといいと思います。
町永 抗がん剤の副作用にはどのようなものがありますか。 
神戸 一般的によく知られているのが下痢、脱毛、白血球の減少など。薬の種類による特徴もあって、爪の変形、皮膚障害、肌荒れは、近年使われる薬で見られる副作用です。吐き気、食欲不振などは抑える薬が発達しています。
町永 緩和ケアについて教えてください。
神戸 がん医療の直接的な目的はがんを治すことですが、症状が強すぎて治療に入れない場合もあります。その症状をできるだけ軽くしてあげるのが緩和ケア。免疫が高まる効果があるし、治療も長く続けられます。副作用などによる体のつらさも和らげます。鎮痛薬のほか漢方薬を使うことも。私自身、患者さんの疲れを改善したい時などによく処方します。
河野 おなかの手術の後に便通が悪くなることがありますが、そういう場合にも漢方薬がよく使われます。
鈴木 がんになると精神的に落ち込む人もいます。そのケアも大切で、緩和ケアのチームには精神科の医師も入っています。
河野 緩和ケアは以前は症状が進んだ末期に行うものでしたが、最近では治療と並行して進めるようになっています。

【VTR】
南相馬でクリーニング店を営む男性(71)は肺がんが脳に転移。遠い宮城の病院での治療が必要なため廃業も考えたが、地元の神戸医師らの医療連携により仕事と治療を両立できることに。治療を続けながら、なじみの店で晩酌を楽しむなど自分らしい生活を続けている。

南相馬市立総合病院 呼吸器内科 内科長
神戸 敏行 氏
かんべ・としゆき/1990年に千葉大学医学部卒業。呼吸器内科医として千葉県内の病院に勤務後、東日本大震災を機に福島に移住。病院が少ない地域で良質な医療の提供に努める。

パネルディスカッション 第2部「がんピアサポート」

体験者同士のつながりが力に

町永 鈴木さんが取り組む、がんピアサポートサロンとは。
鈴木 「ピア」とは仲間という意味。がんの体験者同士が家族を含め、仲間として支え合う場です。震災をきっかけに、当事者が気軽に話ができる場がもっと必要だと感じて活動を広げ、現在県内11か所に開設しています。
中村勉 家内の誘いでサロンに参加するようになりました。みなさん、がんの種類は様々だし、いろいろな方がいますが、話をすると、同じ痛みを経験している者でなければわからない何かがあるんです。変な気休めではないものが言葉から伝わってくる。生き方の参考になるなと思いました。自分のことだけでなく人のためにという思いも出てきて、経験が少しでも役に立てばと、サロン内でファシリテイター(進行役)の活動もしています。
町永 心がけていることは何ですか。
中村勉 あくまで聞き役になって話に耳を傾けること。参加者それぞれに感じるところが出てきて、泣き顔で来た人も、気づくと笑顔になっていることがある。その顔を見られるのが喜びです。
神戸 患者さんや家族の悩みは医療者の立場ではなかなか入り込めない。気持ちの不安を一人で解決するのは難しいですから、こうした場は助けになると思います。

【VTR】
がんピアサポートサロンに参加し、長引く治療にも前向きに取り組んでいる中村さん(68)。サロンの仲間と苦痛を分かち合うことが生きる力になっていた。先行きの不安を口にするがん患者に「薬だけでなく仲間からパワーをもらっている」と自分の体験を伝える。

特定非営利活動法人がんピアネットふくしま 理事長
鈴木 牧子 氏
すずき・まきこ/2003年に卵巣がんに罹患した経験から、がん患者の支援活動を始める。がんピアサポートサロンを始め「より良いサバイバーシップ」のための取り組みを行っている。

家族にも苦しみ 本音の語らいを
町永 家族の立場から、京子さんはいかがですか。
中村京 主人は心配かけたくないという気持ちなのでしょうけど、本音をいってくれないことがつらいんです。私は患者ではないから痛みがわからず、のけ者になった気分になる。一緒に治療をやっていきたいという思いがあります。
町永 勉さんは、その思いに気づいたことは?
中村勉 顔つきで感じたことはあります。もっとちゃんと向き合った方がいいのかなと思いながら、なかなかできなかった。もどかしさは感じていました。
鈴木 家族にいえないことをサロンで話す患者さんもいるし、家でいえないことをサロンで口にする家族もいます。心のもやもやを吐き出せる場なのでしょうか。ピア(仲間)の力なのかもしれません。
中村京 家族は肩に力が入っているものです。どうしていいかわからない閉塞感がある。広い世界に出ていかないと残りの生活がつまらなくなります。その点でサロンの力は大きいと思います。
鈴木 がんで家族を亡くした遺族が活動できる仕組みもつくっています。つらい時期を乗り越えて、その体験を生かして何かに貢献したいという方の力になりたいと思います。
神戸 患者さんや家族の気持ちに寄り添うという部分を大事にしていきたい。同時に、医師として治療に力を入れなければなりません。医療の進歩は速いので、しっかり勉強していきたいですね。
河野 医療はものすごく進歩していて、今できない治療が数年後にできるようになる可能性もあります。諦めずに待っていただきたい。患者さんとの関係を見つめ直しながら、新しい治療法を開発するという使命を果たしていきたいと思います。

【VTR】
夫をがんで失った経験からピアサポート活動をする女性。「がんになった人しかわからない」という患者の言葉に悩む。女性は夫が残したノートから、気づかなかった夫の苦しみを知り、患者と本音で語るようになる。すると関係に変化が生まれ、つながりを感じ始める。

特定非営利活動法人がんピアネットふくしま ピアサポーター
中村 勉 氏(夫)
なかむら・つとむ/2014年、肺がんのステージ4と診断される。手術で左肺を摘出後、現在まで放射線や抗がん剤などの治療を続けている。16年にがんピアサポートサロンに参加し、同じがん体験者との交流から、病と向き合う勇気を得る。

家族
中村 京子 氏(妻)
なかむら・きょうこ/2014年、夫が肺がんのステージ4と診断される。家族としてサロンに参加し、がんへの理解を深めている。

コーディネーター
福祉ジャーナリスト

町永 俊雄

主催:読売新聞社 NHK厚生文化事業団 NHKエンタープライズ
後援:NHK福島放送局 厚生労働省 福島県 郡山市 社会福祉法人福島県社会福祉協議会 社会福祉法人郡山市社会福祉協議会 一般社団法人福島県医師会 一般社団法人郡山医師会 公益社団法人福島県歯科医師会 一般社団法人郡山歯科医師会 一般社団法人福島県薬剤師会 一般社団法人郡山薬剤師会 公益社団法人福島県看護協会 福島県がん診療連携協議会
協賛:株式会社ツムラ

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