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漢方のチカラvol.9 女性特有の症状に細かく対応

広告 企画・制作 読売新聞社ビジネス局

漢方のチカラ vol.9 女性特有の症状に細かく対応

 女性特有の症状としてよく挙げられているのが、生理不順や自律神経の不調、そして不安やイライラなどメンタル面の悩み。婦人科の医療現場では、こうした不調の治療に西洋薬のほか漢方薬が使われることもあります。一般的な西洋医学に加え、漢方医学も取り入れて診療に当たっている丸山綾先生に、そのアプローチについて聞きました。

20〜40代女性に多い悩みと治療法

霞が関ビル診療所 婦人科医
丸山 綾 先生

 私は現在、総合クリニックの婦人科に勤務し、主に近隣のオフィスで働く女性に対して診療を行っています。患者さんの年齢層は20代から40代後半までが中心。悩んでいる症状は人によって異なりますが、やはり年代によって一定の傾向があります。
 例えば20代では、生理不順や月経痛、日常生活に支障が出るほど不快な症状が起こることもある「PMS(月経前症候群)」などが多く見受けられます。また30代ではこれらが悪化し、症状がより顕著になってくる方も少なくありません。一方40代では、更年期前ということもあり、ホルモンバランスの乱れによる不調を感じる方が増えてきます。自律神経系の不調や、不眠や不安、イライラなどメンタル面で悩みを抱えている方も多くいらっしゃいます。
 こうした不調は、20代〜30代前半では西洋薬の力で改善できるケースが多いですね。第一の選択肢として挙げられるのが「低用量ピル」。痛みがひどい場合でも鎮痛剤などと併せて処方することで、多くの患者さんが「悩みを改善できた」と実感されています。低用量ピルには抵抗感のある方もいらっしゃいますが、妊活中や他の病気があるといった場合を除けば、比較的安全に使えるもの。私自身も、正しい使い方や効能をしっかり説明し、患者さんの思いをお聞きした上で処方するようにしています。

漢方薬における「女性の三大処方」とは

 しかし、30代後半からは低用量ピルで対処できないケースも増えてきます。特に40歳以上では血栓症につながるリスクが高まるため、投与には慎重になる必要があります。これは、喫煙者やある種の片頭痛持ち、コレステロール等脂質の値が高い人、血圧が不安定な人も同じ。このような場合、私は低用量ピルに次ぐ第二の選択肢として「漢方薬」を取り入れています。
 婦人科における漢方薬は、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)の三つが「女性の三大処方」と言われています。いずれも女性の一般的な不調に応えやすいため、この分野で幅広く使われている薬です。
 漢方薬は、例えば「生理痛も冷え症もある」「肩こりとむくみがつらい」というように、複数の症状に悩んでいる人に向いています。加えて、医師が処方する漢方薬は効能も副作用も含めてデータがあるものばかり。西洋薬と同じように薬剤としての裏付けがしっかりしているため、信頼性も高い薬と言えるでしょう。この点は、サプリメントとは大きく違う部分です。

病気までいかない「未病」の段階で対処

 私は、大学病院からクリニック勤務に変わったタイミングで漢方の勉強を始めました。手術や分娩ではなく外来での不調相談がメインになり、「西洋医学の知識だけでは対応できないケースが出てくる」と感じたためです。西洋医学では、若年層には低用量ピル、更年期症状にはホルモン補充療法などがありますが、これだけでは不定愁訴すべてに対応することはできません。治療に使える武器を何かもう一つ持っておきたいと思った時、出会ったのが漢方でした。
 漢方薬は、冷え症やむくみなどの「未病(病気とまでは言えない不調)」にも対応が可能です。未病は西洋医学では治療の対象から外れがちですが、例えば冷えなども、放置して症状が進んでしまうと、よりつらい頭痛や腹痛などの原因にもなってきます。これを防ぐためには、やはり未病の段階で対処することが大切。それが可能なところが、漢方薬の大きな強みだと思います。
 特に女性は、未病に属する悩みが多いもの。代表的なのは生理痛ですが、これも「病気じゃないから」「ピルはなんとなくこわい」と我慢してしまう方が多いのではないでしょうか。そういう方には、漢方薬という選択肢もあるということを、ぜひ知っていただきたいですね。不調を感じたら、気軽に婦人科医に相談してください。風邪の時に行くかかりつけ医のように、女性には婦人科のかかりつけ医も持っておいてほしいと思います。
 最後に、不調に対しては、漢方医学で言うところの「養生」も大切になってきます。コロナ禍による外出自粛やリモートワークなどで、もともと不安傾向の強い方は症状が悪化してしまうこともあるかもしれません。そうした方には、早めの受診と同時に「養生」、つまり質の良い睡眠の確保や、軽い散歩などの運動、日光に当たることなども心がけてほしいと思います。婦人科では、こうしたことも含めてアドバイスや対処が可能ですので、プチ不調でも我慢せず、気軽に相談してみることをおすすめします。

霞が関ビル診療所 婦人科医
丸山 綾 先生
1999年、日本大学医学部卒業。駿河台日本大学病院、丸の内クリニックなどを経て、現職。専門は産婦人科一般、漢方診療。医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医。

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