漢方のチカラvol.3 高齢者医療での使用拡大に期待
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漢方のチカラ vol.3 高齢者医療での使用拡大に期待
複数の病気を持つ患者が多い高齢者医療において、いま改めて漢方薬の力が注目されています。最近では、高齢者診療における漢方薬活用のガイドラインも発表され、より適正な使用が期待できるようになりました。在宅医療を中心に高齢者医療に取り組む大澤誠先生に、その意義を聞きました。
認知症の方の在宅医療とケアに注力
私は主に高齢者の在宅医療、特に認知症の方の治療とケアに取り組んでいます。こうした「高齢者医療」の現場では、患者さんは認知症だけでなく、糖尿病や高血圧など複数の慢性疾患を抱えていることがほとんどです。加えて、本人が症状を訴えられなかったり、若年層とは症状の現れ方が異なったりするため、病気の発見が遅れることも少なくありません。そのため、診断の際には症状をとらえる五感と最小限の適切な検査が、治療の際には複数の疾患を同時に見つめる力が重要です。
また、高齢者、特に認知症の方は体の不調が脳の不調につながりやすい傾向にあります。発熱によってせん妄が現れたり、便秘によるイライラ感から大声を上げるようになったりした例もあり、この場合はせん妄やイライラ感を抑える薬ではなく、発熱や便秘を治す薬を処方する必要があります。高齢者医療では、発見しにくい体の不調にもしっかりと目を向けなければなりません。
認知症の原因疾患として多数を占めるアルツハイマー病は、現在の医療では完治が難しい病気です。そのため、中心となるのは治療よりも社会的不利(QOL)の改善ということになります。私は、認知症の医療においては的確な診断や処方と同等に、患者さんの思いや暮らしを知ること、ご家族や介護職に手立てを伝えること、体の不調にアンテナを張ることが大切だと思っています。
漢方薬の適正使用に役立つガイドラインが発表
こうした高齢者医療において、大きな力となるのが漢方薬です。西洋薬は一つの疾患に一つの薬を処方するのが一般的で、複数の疾患を持つ高齢者では多剤服用になってしまいがちです。これに対し、漢方薬は一つの薬で複数の症状に効果を発揮することが多く、体への負担軽減にも役立つと言えるでしょう。
ただ、漢方薬は診察方法が独特なため、これまでは各医師の知識や経験に頼る部分が大きかったように思います。しかし近年、日本老年医学会が「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」において、世界で初めて漢方薬の高齢者診療ガイドラインを発表しました。「この病気に対してこの漢方薬」という大ざっぱな捉え方ではなく、「こういう人のこういう症状に」と細かく掲示している点で、非常に意義深いと思います。
処方の際の注意点についても明確な記載があり、実践を通して漢方を学んできた者として賛同できる記述が多数あります。このガイドラインを参照すれば、これから漢方薬を取り入れようとしている医師も適正使用が可能でしょう。ぜひ多くの医師に読んでもらい、より適切な高齢者医療に役立ててほしいと願っています。
より良い高齢者医療の実現に向けて
私にとって漢方薬は、患者さんと医師の双方を救ってくれるものと言えます。検査では異常がないのに自覚症状があり、治療の手立てが見つからないまま悩んでいる患者さんは少なくありません。そんなときに医師として勧められるのが漢方薬です。患者さんの「治療してもらえない苦しさ」と、医師の「何もしてあげられない苦しさ」、漢方薬はこの両方を救ってくれる。これは、私が普段の診療の中で強く実感していることです。
国の施策もあり、高齢者医療は病院から在宅へと切り替わりつつあります。しかし、私が在宅医療を大切にしているのは、患者さんの希望が自宅で暮らしてこそかなえられることが多いからです。人格も生きてきた軌跡も希望も一人一人異なる、そうした多様性に応えられるのは地域しかありません。希望をかなえる情報が集まってくる場所、これまでしてきた暮らしを継続できる場所。そう考えたとき、在宅医療はベターな選択肢だと言えるでしょう。
今後は、医師だけでなく薬剤師や看護師にも、ぜひ漢方薬の長所・短所を知ってほしいですね。より良い高齢者医療を実現していくためには、患者さんのそばにいる人が不調や変調をいち早く捉え、周囲に伝えることが大切です。医師をはじめすべての医療関係者が手を携えて、ご本人やご家族を支えていけたらと思います。