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漢方のチカラ vol.14 体全体を整えて頭痛を改善

広告 企画・制作 読売新聞社ビジネス局

漢方のチカラ vol.14  体全体を整えて頭痛を改善

 頭痛になっても我慢したり、市販薬を使ったりしながら日々をしのいでいるという方は意外に多いのでは。その予防のためには、原因となる生活習慣に気づくことが大切で、治療にあたっては近年、漢方薬の有用性が認められ始めているといいます。漢方薬を使って頭痛外来の診療を行っている、脳神経外科医の來村昌紀先生(らいむらクリニック院長)に話を聞きました。

タイプで異なるケア方法

來村 昌紀 先生

 頭痛の原因には、運動不足や気圧の変化、月経に関連するホルモンの変化など、様々なものが挙げられます。睡眠不足も寝過ぎもよくないですし、スマホ社会の現代では目や耳から四六時中、情報が入ってきますが、そうした情報過多も影響します。こうした要因により脳細胞自体が疲れたり興奮したりすることや、身体へのストレスに対応する交感神経が緊張して血管が締まり、血流が悪くなることなどから頭痛は引き起こされます。
 頭痛予防には規則正しい生活が大切です。例えば睡眠。休日かどうかに関係なく同じ時間に起きることを心がけてください。翌日お休みだからといって遅くまで起きていたり、休日の朝遅くまで寝ていたりするのは頭痛にとってよい習慣ではありません。3食きちんと食べることも重要。朝食を抜くと低血糖で頭痛が誘発されることがあります。夜は情報をなるべくシャットアウトすること。布団の中にまでスマホを持ち込むのは今どき珍しいことではないかもしれませんが、そういう行為は避けて、寝る2時間くらい前には脳を休ませるためにあまり情報をとらないようにしましょう。
 頭痛には「片頭痛」と「緊張型頭痛」という2つのタイプがあります。体を動かして痛みが悪化するようなら片頭痛、痛みがまぎれるようなら緊張型頭痛です。どちらのタイプかによって頭痛のケア方法は異なります。片頭痛の場合は、暗くて静かな部屋で頭を冷やすなどして安静にしてください。濃いコーヒーを飲むと楽になるという方もいます。もっとも、飲みすぎはよくないので1日3杯までにとどめましょう。緊張型頭痛の場合は、動いたり頭を温めたりしてください。お風呂に入ったりストレッチしたりするのもいいでしょう。

生活習慣に思わぬ原因あり

 診療では、患者さんに頭痛ダイアリーという日記をつけてもらっています。頭痛の原因は日常生活の習慣にあることが多く、それに気づいてあらためてもらうのが目的です。薬は西洋薬だけでなく漢方薬も有効で、頭痛学会による診療ガイドラインという科学的根拠に基づく治療方針にも示されています。具体的には、肩こりが原因の頭痛は葛根湯(かっこんとう)、天候から来ているものは五苓散(ごれいさん)、月経に伴う頭痛は当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や桂枝茯苓丸(けいしぶりょうがん)、ストレス由来の頭痛には抑肝散(よくかんさん)を処方しています。また、典型的な片頭痛や、冷えの若い女性で吐き気を伴う頭痛には呉茱萸湯(ごしゅゆとう)、高齢で高血圧の方には釣藤散(ちょうとうさん)をお出ししています。
 近年は漢方薬の有用性を認める医師が増え始めていますが、私が脳神経外科医になりたての頃は漢方薬を使う医師はほとんどいませんでした。私自身も知識がなかったですが、医師になって7年ほどの頃、なかなか症状が改善しない患者さんに漢方薬を処方したところ効果があったことから、本格的に勉強を始めました。漢方薬のよいところは、幅広い症状に使えることです。鎮痛薬の使い過ぎが問題になっていますが、漢方薬をうまく使えばその使用量を減らすことができるでしょう。冷えやお通じ、更年期といった周辺症状も一緒に治してくれるのもメリットです。

頭痛と上手に付き合おう

 米国の著名な神経内科の医師から「私たちは患者の頭痛を診ているのではなく、たまたま頭痛を持つ患者、そのひと自身を診ている」のだといわれたことがあります。実際、頭痛の原因は体のほかのどこかにあり、頭痛だけでなく体全体をよくしていくことが大切です。漢方薬は患者さんの体全体をバランスよく元気にしてくれるものなので、この治療に適しているといえます。
 頭痛を放置していると、症状の悪化による知覚過敏で外出できなくなってしまう方もいます。また、万が一心配な原因が隠れていないとも限りません。頭痛がおさまってからでもかまわないので、安心のために一度は病院に相談してみてください。頭痛との上手な付き合い方を知って、よりよい人生を歩む一助にしてもらえればとも思います。

脳神経外科医/らいむらクリニック院長
來村 昌紀 先生
和歌山県出身。和歌山県立医科大学、千葉大学大学院卒業。日本赤十字社和歌山医療センター脳神経外科、千葉中央メディカルセンター脳神経外科などを経て、2014年、らいむらクリニックを開院。日本東洋医学会認定漢方専門医。千葉大学臨床教授。

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