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【PR】オフピーク通勤で心と懐にゆとりを ―混雑緩和の知恵―

提供:JR東日本

変動運賃で働き方改革を後押しへ

 JR東日本は、すいている時間帯と混雑している時間帯の運賃に差を設ける「変動運賃制」の導入を検討している。ラッシュ時の利用を減らすオフピーク通勤を促すためだ。新型コロナウイルスの感染拡大で、密集を避けたいという意識が強まる中、日本社会の長年の課題である混雑の緩和につながると期待される。

混雑緩和の期待

 1月下旬のある平日。午前8時過ぎの品川駅ホームでは、マスクをした大勢の利用客が行き交っていた。

 新型コロナウイルスの感染拡大により1回目の緊急事態宣言が出た2020年4月は、首都圏の主要駅でのラッシュ時間帯の人出は約7割減った。その後は徐々に回復し、現在は約5割減の水準で、以前ほどではないものの、混雑が見られることがある。電車内でクラスター感染が発生したという報告はない。それでも、利用客からの混雑緩和に対する期待はこれまでになく高まっている。

 JR東日本は長らく、混雑緩和に向け、電車の本数を増やしたり、1本あたりの車両数を多くしたりしてきた。ただ、都市部への人口流入が続いたうえに、利便性が高まったことで、利用客は増え、問題の解決には至っていない。政府も1960年代にはすでに、利用客に出勤時間を前後にずらす「時差通勤」を呼びかけ、オフピーク通勤への協力を求めてきた。ところが、どこの職場も、従業員が勤務開始時にそろうことを重視する傾向は根強く、時差通勤は完全には浸透しなかった。

仕事と家庭の両立

 コロナ禍で、働き方を巡る環境は大きく変わった。

 東京都が2020年に実施した調査では、従業員30人以上の事業所で、感染拡大防止策として時差通勤制度を「導入した」が48.7%、「拡大した」が23.3%にのぼった。時差出勤で希望する時間に出勤できれば、忙しい朝も余裕をもって食事をしたり、家族で一緒に食事をとったりすることも可能になる。仕事と家庭の両立にはプラスだ。

 都内のイベント会社では、出勤時間を柔軟にしたところ、朝早く出勤する社員が増えた。妻に任せがちだったという夕方の保育園への子どもの迎えに行くようになった男性社員もいる。社長は「社員が家族との時間をより多く持てるようになった」と語る。企業にとってはITの進展もあり、職場に従業員が集まる必要性は薄れている。むしろ、柔軟な勤務を認める「働き方改革」を進める方が、従業員のやる気を高めたり、人材の定着を促したりすることで、生産性の向上に結びつくという認識が高まっている。

通勤定期が対象

 コロナ禍は長引き、鉄道の利用客が今後どうなるかは見通せない状況が続く。JR東日本では、需要のピークに合わせてきたコスト構造の改善が急務になっている。時差通勤によるオフピークの流れが加速すれば、既存設備のフル活用で、混雑の緩和は十分可能になる。「オフピーク定期券」による通勤定期券への変動運賃の導入は、その呼び水になるとみている。「電車はいつ乗っても運賃は同じ」という慣習が崩れることになるが、利用客、企業、JR東日本それぞれの利点は大きい。実現には国の認可が必要となるため、社会の理解や支持が欠かせない。

他業界で続々! 航空、コンビニ‥‥
「ダイナミックプライシング」

 同じモノやサービスであっても、需給に応じて素早く価格を調整する変動料金制は、「ダイナミックプライシング」と呼ばれる。ITや人工知能(AI)の発達により、膨大なデータを瞬時に集めて的確に分析することが可能になり、様々な業界で採用されるようになってきた。

 いち早く取り入れてきたのが航空業界だ。飛行機は同じ路線でも、季節や到着時刻により、料金は大きく異なる。また、一般的には予約時期が早いほど大きな割引率が適用される。出発日が迫るにつれて定価に近づくが、出張が急に決まったビジネスマンなど、高い料金でも利用する乗客は購入する。売れ残りが多いと、出発直前に値下げすることもある。航空会社は料金を細かく調整して、売り上げを確保している。

 プロ野球やJリーグの試合でも販売状況などに応じて、チケット料金を細かく変える例が増えている。定価販売が主流だったコンビニ業界では、まだ食べられるのに廃棄される「食品ロス」を削減する手段として、変動料金は活用されている。賞味期限が近づいた商品を値下げすることで、全商品を売り切ろうという試みが始まっている。

聞いてみよう! ―サービス向上の多様化を―

 
慶応義塾大学教授(交通経済学)
加藤 一誠(かとう かずせい)さん
関西外国語大助教授、日大教授などを経て現職。国土交通省交通政策審議会委員なども務める。
著書に「航空・空港政策の展望」「空港経営と地域」(いずれも共著)など。

 鉄道には、利用者が多いピークと少ないオフピークの時間帯がある。鉄道会社は混雑緩和が最優先すべき課題とされ、ピーク需要に対応して設備や人員を確保してきた。ピーク時以外は設備などに遊休が生じるが、その分もコストはかかる。日本の人口が減り、需要の増加が見込みにくい中で、こうした輸送の供給量を増やすやり方は限界に来ている。

 2022年は新橋―横浜間に鉄道が初めて開業してから150年の節目となる。鉄道会社のビジネスモデルの転換を考える時期に来ている。ピーク需要を抑えることができれば、鉄道会社は快適性や利便性の向上など別の課題に投資をもっと振り向けられるようになる。変動運賃制はそのための有効な手段だ。利用客の中には、通勤時間をどうしても変えられない方はいる。従って、変動運賃にしても、混雑が完全に解消されるわけではない。ただ、少しでも需要が移れば、混雑の緩和は実感できるはずで、変動幅はそれほど大きくする必要はないだろう。値上げとなる方の負担が重くなりすぎないような配慮は求められるが、混雑緩和というメリットは及ぶ。鉄道会社はこうしたことを丁寧に説明するべきだ。

 JR東日本は、民営化以降、経営努力により消費税の導入や税率引き上げ時を除き、値上げを回避してきた。ただ、利用客もサービスが良くなれば、対価として運賃の上昇を受け入れる余地はあるだろう。首都圏では、JR東日本と鉄道各社による相互直通運転が広がっている。変動運賃の効果を高めていくためには、それぞれが連携して導入することが望ましい。

 ワシントン―NYの都市間移動や、ロンドンの地下鉄など、海外では変動運賃は幅広く導入されている。オフピークをさらに促すために、朝の通勤ラッシュ帯の運賃を引き上げる一方で、早朝は大きく下げ、ラッシュ以降はその間とする3段階の運賃体系にしている事例もあり、参考になる考え方だ。

混雑緩和Q&A

 利用者が鉄道に期待していることは?

 JR東日本が2021年に実施したウェブ調査(複数回答可)によると、約6割の利用者が混雑の緩和を期待している。約3割は時間をずらしてでも、快適に利用できることを望んでいた。

 利用者が混雑具合を分かる方法はあるか?

A JR東日本アプリでは、首都圏の主な路線で、車内や一部の駅の混雑情報を提供している。ホームページでも、車内の混雑状況を公開している。

 混雑緩和が目的でも、変動運賃は値上げではないか?

 JR東日本は、オフピーク定期券では現行の定期券より割安にする一方、通常の定期券では広く薄く値上げし、定期券収入全体では増収とならない形を想定している。今後は各企業や経済団体の意向なども総合的に勘案して、具体的な運賃水準を検討する。

 変動運賃実現に向けた国の動きは?

 2021年5月に閣議決定した交通政策基本計画で、変動運賃制に関して「効果や課題について十分検討する」と明記した。鉄道事業法で、鉄道運賃の上限について国の認可を受けなければならないと定めている。国土交通省の交通政策審議会に置かれた小委員会で、テーマの一つとして識者らによる議論が始まった。

時差通勤でポイント付与「オフピークポイントサービス」

 JR東日本は2021年3月から、平日の朝にSuica通勤定期券でオフピーク通勤をした場合、駅ビルの買い物などで使える「JRE POINT」を還元する「オフピークポイントサービス」を実施している。変動運賃制に先立つ形で導入され、対象者の約5%が通勤時間を変更する効果があったという。

 首都圏に対象エリアが設定されている。利用客がポイントをもらえるのは、エリア内の駅で指定された時間帯に入場し、エリア内の駅で降りることが条件となっている。駅ごとに1時間半の「ピーク時間帯」がある。ピーク前1時間の「早起き時間帯」に入場すれば1日あたり15ポイント、ピーク後1時間の「ゆったり時間帯」に入場すれば20ポイントが還元される。事前に「JRE POINTの登録」と「エントリー」が必要。ポイントは駅ビルなどで1ポイント=1円として利用できるほか、Suicaにチャージもできる。JR東日本は、2022年度以降も一部内容のリニューアルを行いサービスを継続する。

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