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[PR]正しい知識を身に付けて 偏見や差別のない社会へ

[令和3年度法務省委託事業]

明るい未来を作るためにハンセン病問題を考える

11月13日に、「ハンセン病問題に関する『親と子のシンポジウム』」が開催されました。ハンセン病患者と元患者、そしてその家族に対する偏見・差別は、今なお社会に残っています。その解消のためには、若い世代が正しい知識を身に付けて、次世代に継承していくことが必要です。ハンセン病問題に関わってこられた方の声を聴き、今こそ人権について考えてみませんか?

ハンセン病とは?
ハンセン病は「らい菌」という細菌に感染することで起こる病気です。手足の指先の神経が麻痺したり、皮膚が変形したりすることがありました。しかし、らい菌の感染力は弱く、発病することは極めてまれです。また、万が一発病しても、現在は早期発見と適切な治療により、後遺症が残ることなく完治します。

[基調講演]過ちを繰り返さない決意を

群馬・ハンセン病問題の真の解決をめざし、ともに生きる会 副会長
吉幸かおるさん

1999年11月、私は友人に誘われて草津へ紅葉狩りに行った時に 、国立ハンセン病療養所の栗生(くりう)(らく)(せん)(えん)を訪れました。そこで私にハンセン病の歴史について教えてくれたのが、後に「ハンセン病違憲国賠訴訟全国原告団協議会会長」となる(こだま)雄二さんでした。

谺さんとお母さんは、ハンセン病患者であることを理由に、家族の元から無理やり離され、療養所に入所させられました。そこでは労働を強制され、結婚しても子を授かり、育てることは許されませんでした。患者がそれらの方針に反対すると、ただちに懲罰施設である「重監房」に入れられたそうです。

私は自分が住む国で起きた人権問題について知らずに64年間生きてきたことを恥ずかしく思い、谺さんたちが取り組んでいた裁判の手伝いや、ハンセン病についての学びを始めました。

2001年5月11日、谺さんたちは裁判に勝訴しました。それは大変喜ばしいことですが、まだ完全解決への長い道のりの一歩にすぎませんでした。また、栗生楽泉園の原告の方々はほとんど亡くなってしまいましたが、過ちを繰り返さないためには、この問題を未来へと伝えていく必要があります。

谺さんたちの想いを受け継ぎ、平和と人権が尊重される世界の実現を共に目指しましょう。


[基調講演]歴史から学び、語り継ぐ

重監房資料館 部長
黒尾和久さん

私は、重監房資料館で働いています。「重監房」とは、国立療養所の栗生楽泉園にあった、ハンセン病患者を収監した懲罰施設の通称です。園にとって都合の悪い思想を持つ人や扱いにくい人は、裁判を受ける権利もなく、ここに送られてしまいました。冬になると-20度近くになる場所で、十分な治療を受けられず、1938年から1947年の間に収監された延べ93人のうち23人が亡くなったと言われています。

重監房資料館は、ハンセン病問題を伝えるために、かつて重監房があった場所の近くに設置されました。いまだに不明な点が多い重監房の運用の実態や、収監患者のライフヒストリーなどを示す、重監房とハンセン病問題に関する資料を収集・保存し、調査研究の成果を公表することで、命の大切さを伝え、偏見・差別の解消を目指しています。ぜひ、当資料館にお越しいただき、当時の環境を想像してみてください。

ハンセン病問題と重なる現代の問題として、新型コロナウイルス感染症に感染した人やその家族が、誤った知識や偏見によって差別やプライバシー侵害を受けていることが挙げられます。偏見・差別を受けている人は、常に周囲の視線におびえながら生活しているのです。そんな人の存在に気づき、思いやりの気持ちを持ってください。人権問題は、私たちの身近なところで今も起きているのです。


[パネルディスカッション]
人権尊重は相手を知ることから

〇交流が思いやりにつながる

群馬県中之条町立六合中学校3年
清水蒼空さん

私たちの学校は、栗生楽泉園との交流を代々続けており、2009年度からは年末の年忘れ会に参加しています。私は、入所者の方と直接お会いしたときに、ハンセン病問題が一気に身近なものになったように感じました。この経験から、積極的に相手のことを理解しようとすれば、偏見・差別は減らせるのではないかと思っています。これからも、ハンセン病問題と人権の尊重について、考え続けていきたいです。

〇共生社会の実現に向けて

群馬大学社会情報学部4年
狩野大樹さん

私は大学の授業で東京の多磨(たま)全生(ぜんしょう)(えん)を訪れたことをきっかけに、ハンセン病問題に興味を持ち、現在はハンセン病家族国家賠償請求訴訟や未感染児童などをテーマに卒業論文を書いています。私たちの社会では、ハンセン病患者・元患者の方だけでなく、いまだに多くの人が様々な偏見・差別によって苦しんでいます。想像力を働かせ、学び、発信し続ければ、お互いの間にある壁を乗り越えて共に生きていくことができると思います。


[トークショー]悲劇の現場が教えてくれたこと

フリーアナウンサー、元日本テレビアナアウンサー
藪本雅子さん
俳優、 写真集「13 ハンセン病療養所からの言葉」著者
石井正則さん

俳優の石井正則さんは、13か所の国立ハンセン病療養所をめぐり、撮影した光景と入所者による詩を写真集として出版しました。そのきっかけは、香川県にある国立療養所の 大島(おおしま)青松(せいしょう)(えん)で撮影されたドキュメンタリーを見て衝撃を受けたことでした。「療養所の中で人々が感じたことを後世に伝えなければ」と、強い使命感を持って撮影にあたったそうです。

かつてそこで生きた人たちが直面した厳しい現実がひしひしと伝わる写真だけでなく、療養所の中で咲く花々など、前向きな気持ちを感じさせる作品にも心を動かされたという藪本さん。しかし、ハンセン病元患者の家族が名乗り出て補填金を受け取ることすら難しいほど、ハンセン病問題を含む偏見・差別は今でも社会に根強く残っています。その現状をどう思うか、石井さんに聞きました。

石井さんは、自身が新型コロナウイルス感染症に感染したと公表した際、誹謗中傷をほとんど受けなかった経験から「社会や人間は差別をしないように成長していると感じた」と語りました。また、ハンセン病について学んだことで、自分自身が偏見・差別の加害者になってしまう可能性にも気付いたといいます。若い世代の皆さんにも、療養所に足を運び、改めて人権について考えてみてほしい、と石井さんは語りました。


※この記事は2021年11月13日に実施されたハンセン病問題に関する「親と子のシンポジウム」の内容を元に制作しました。
[主催]法務省、厚生労働省、文部科学省、全国人権擁護委員連合会、前橋地方法務局、群馬県人権擁護委員連合会、公益財団法人人権教育啓発推進センター