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【PR】 ―国際フォーラム― 21世紀アジア太平洋時代の日米関係

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学習院女子大学

国内外の専門家がオンラインも交えて、活発に意見交換した(学習院女子大学で)

 学習院女子大学国際学研究所は3月16日、「21世紀アジア太平洋時代の日米関係」をテーマにした国際フォーラムを開いた。外交に関する第一線の実務家や専門家が参加し、ロシアのウクライナ侵攻により世界情勢の緊迫度が高まる中、重要性が高まる日米関係について、多面的な討論を展開した。同大の学生だけでなく、国際政治に関心の高い市民らが熱心に耳を傾けた。

重要さ増す日米の結束

〈基調講演〉民主主義が勝つために

――日本国際問題研究所理事長・元駐米大使 佐々江 賢一郎 氏

 日米両国を取り巻く安全保障環境は、脅威が増大しています。それも長期にわたって続くと考えられます。アジア太平洋での平和と安全を確保するうえで、日米同盟の真価が問われる時代になりました。
 次の三つが重要になります。自由と民主主義、あるいは法の支配に基づく国際秩序です。今まさに揺らいでいますが、その価値や目的を再確認し、実践することが大切です。そして、同盟国として助け合い、大局的利益で一致を目指すべきです。さらに、互いの内政上の困難な事情を理解したうえで、克服していく自助努力が求められます。
 民主主義国家は全体として、ロシアに勝利する必要があります。経済制裁がロシア経済に大きな打撃を与えることは確実ですが、我々の側も犠牲を払うことになります。国民にどのように理解を求めていくかは、大きな課題です。
 米国には、柔軟でしなやかなリーダーシップの発揮を期待します。各国が同じ方向を向くべきですが、同時にそれぞれの事情を理解する必要があります。
 ロシアのプーチン大統領がとった行動とその結末から、中国がどのような教訓を引き出すかを注意しなければなりません。日米両国は欧州と協力して、ロシアのウクライナ侵攻は成功せず、自国の衰退につながりかねないと示すことが、我々の生存と安全にとっても重要です。

 中国とは、経済的な競争と協力はしていきます。ただ、我々と同一条件で競争しているとは言えません。解決の一番の近道は、米中双方が環太平洋経済連携協定(TPP)参加に向けて交渉することでしょう。一方で、中国が軍事大国の道を進んでいる間は、経済的安全保障の観点から、我々も防御的措置を取らざるを得ません。
 中国の軍事的台頭は懸念材料です。残念ですが、今は防衛拡張しなければいけない時代の局面です。
 北朝鮮の脅威も増大しています。対話を放棄はしませんが、抑止力の整備が必要です。それには、日韓関係の改善が重要になります。韓国の新政権の努力に期待するとともに、米国にサポートしてもらいたいです。

〈基調講演〉米とアジア、日本が結び目

――米・戦略国際問題研究所(CSIS)所長 ジョン・ハムレ 氏(John Hamre)

 第2次世界大戦以降、米国は日本など重要な国々との同盟を礎にして、アジアでの存在感を保持してきました。2012年にはオバマ大統領(当時)がアジアを最優先する姿勢を表明しましたが、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席がより対立的な路線をとったことが、問題の中心です。
 米国は中国の封じ込めができるでしょうか。答えはノーです。米国の多くの企業が中国に進出しています。日本も含めアジア諸国も、封じ込め戦略に乗りたくはないでしょう。
 中国は米国をアジアから追い出せるでしょうか。この答えもノーです。中国が攻撃的な姿勢を示すほど、アジア諸国は圧力を感じ、米国にとどまることを望みます。中国が封じ込めと見なしているものは、米国の政策ではなく、中国のどう喝の産物なのです。
 中国は現在、ロシアを実質的に支持する唯一の大国です。ロシアは日々、中国への依存度を高めています。世界は今後、自由で民主的な国の陣営と、ロシアや中国のような権威主義的な陣営に分かれるでしょう。
 米国は強大な軍事力と経済力を誇っていますが、アジアと欧州の両方で唯一の大国になれません。同盟国や友好国があって初めて成功を収められます。

 日米関係はこれから、かつてないほど重要な2国間関係になります。日本がアジアで最も信頼されている国だからです。以前は米国が兄で、日本は弟と言われましたが、今やともに手を携える双子の兄弟です。
 欧州には北大西洋条約機構(NATO)があるのは利点です。しかし、NATOは軍事行動では強さを発揮しますが、糸が一方向にしかない織物のような存在です。テロや移民、偽情報などの脅威に対処するときは、強くありません。
 アジアにNATOはありませんが、もっと良い選択肢があります。各国が構築している独自のネットワークをつなげることで、素晴らしい布を織るのです。これは必ず実現できます。
 米・日・豪・印が異なるネットワークを連結させたのが「Quad」(クアッド)です。その中で日本は今後もリーダーであり続ける必要があります。

パネルディスカッション

核軍縮、枠組み再構築を

――米ウィリアム&メリー大教授 ローレンス・ウィルカーソン 氏(Lawrence Wilkerson)

 我々には生存を脅かす二つの課題があり、世界は互いに共感をもたなければなりません。
 短期的には核兵器に関してです。核兵器は戦争の抑止のため以外には、決して使われてはなりません。ウクライナが現在、大変な危機に直面している点からもとても重要です。
 核軍縮に向けては、過去にさまざまな努力が積み重ねられてきましたが、体制を作り直すべきです。あらゆる国が入る枠組みにする必要があり、イスラエルや北朝鮮を例外にしてはいけません。
 日本は核兵器を持たない先進国です。核兵器を持たずとも、先進国になれることを世界に示す存在であり、これを変えてはなりません。核のない世界に向け、日本はリーダーになることが求められますし、仲介役を果たす力があります。
 中長期的には気候変動が課題です。2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする必要がありますが、それでも、海面上昇は必ず起きます。影響を軽減するため、新しい環境に適応しなければなりません。
 世界が協調して動かなければ、未来はないのです。日本はその中で、さまざまな行動をとれるはずです。

独裁、変化できない弱さ

――米スティムソン・センター名誉会長 リンカーン・ブルームフィールド 氏(Lincoln Bloomfield)

 日米両国が共有する価値観や友情、信頼関係はこれまで、世界のあらゆる大きな変化や挑戦を乗り越えてきました。現在も活発によく機能しています。
 米国は超大国ですが、期待通りに安全と平和を達成できないことが多くなりました。政府に対する信頼が失われ、激しい政治的分断が起こっています。
 しかし、私は問題が永久に続くとは思っていません。米国は他の民主主義国と同様、状況の変化に適応する能力を持っています。
 ロシアが失敗を犯したのは、独裁的な指導者であるプーチン大統領の決断を覆す権利を誰も持っていないからです。民主主義国では、議会によるチェックアンドバランスが働きます。報道の自由により、国民は一体どんな決定がされているのか知ることができます。
 民主主義を不安視する必要はありません。独裁主義は脆弱で、歴史の方向を誤りがちです。
 ロシアだけが問題ではないのです。中国は南シナ海に違法に進出し、香港での自治の約束を破りました。イランは核濃縮や隣国への侵攻で脅威になっています。日米は民主主義国とともに、信頼できる国際規範を作らねばなりません。

国の関係、人的交流から

――駐ベトナム米国大使 マーク・ナッパー 氏(Marc Knapper)

  米国は、同盟国やパートナー諸国とともに、①自由で開かれた②連結③繁栄④安全⑤強靭という特徴をもつインド太平洋地域を構築していきます。
 「自由で開かれた」とは、問題がオープンに処理され、ルールが公正に適用され、モノやヒト、情報が自由に往来することです。同盟国同士の連結を強め、欧州との関係も深めます。
 繁栄を後押しするため、公正な貿易の推進やサプライチェーンの強化、脱炭素などで協力します。強固な安全保障に向けては、防衛や外交に限らず、あらゆる手段を緊密に連携させる「統合抑止力」戦略を採用します。公衆衛生の向上や人命救助などの支援を通じて、地域の強靱性を高めてきました。
 これらは対中国戦略ではありません。米国がこれまでの地域で関与してきた結果なのです。中国との今後の関係は、協力的な要素だけとは限らないでしょうが、中国の出方次第です。
 国同士の関係を深めるのに不可欠なのが、人的交流です。安全保障、ビジネス、技術でも同じです。私自身、若い頃に日本に留学し、視野が広がりました。若い方は国外に関心を持ち、様々な経験を積んでください。

ロシア非難に学ぶ中国

――東京大教授 川島 真 氏

 中国は2049年には米国に追いつき、西側とは違う世界の秩序を作るというイメージをもっています。米国と対立していく中で、ロシアは戦略的なパートナーとなります。
 とはいえ、ロシアとまとめて考えられるのは、困るというのが実情でしょう。中国は主権は大事だと言ってきましたし、経済は先進国との関係が深く、経済制裁を回避したいからです。
 台湾有事に関する議論には、冷静さが必要です。武力を使う活動は台湾周辺で活発になっていますが、台湾国防部の報告書では、中国は戦わずに統一を目指す方向性が高いとされています。台湾内部に協力者を作る方法ですが、これはロシアがウクライナにやってきたことかもしれません。
 軍事侵略はどれだけ難しく、西側の国にはどのような制裁メニューがあり、世界はどれだけロシアを非難するのか。中国は今、多くのことを学んでいます。
 草の根レベルの民間の交流が、国家が争ったときに力を発揮します。感情はときに平和をもたらしますが、逆のこともあります。継続的かつ政治に左右されない民間交流をどう実現していくかが、コロナ禍後の課題になるでしょう。

国際フォーラムの詳細は、近日中に学習院女子大学国際学研究所のウェブサイトで公開。
また、今夏までに出版を予定しています。


 学習院女子大学は、学習院女子短期大学を前身とし、1998年に開学した。グローバル社会で活躍できる人材の育成を掲げ、国際文化交流学部には「日本文化」「国際コミュニケーション」「英語コミュニケーション」の3学科がある。国際学研究所は2013年設立。