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水素エンジンの活用で目指すカーボンニュートラル社会の実現


 温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指す「カーボンニュートラル」の動きが加速している。クルマの世界では電気自動車や燃料電池車が実用化され、バイオ燃料や次世代エンジンなどの開発が進んでいる。そんな将来を見据えた技術開発の舞台となっているのはカーレース。特に市販車 をベースにした「スーパー耐久レース」、通称S耐だ。



 2021年には、技術開発に挑む“実験車”のために「ST-Q」と呼ばれるクラスが新設され、日本の自動車メーカー5社が切磋琢磨しながら未来のクルマ作りに取り組んでいる。


 トヨタはST-Q誕生と同時に水素エンジン車を世界に先駆けて投入。参戦を重ねながら改良を繰り返し、進化を目指している。

なぜ、水素エンジン車なのか


 水素エンジン車の基本的な構造はガソリンエンジンと同じだ。エンジン内でガソリンの代わりに水素を燃焼させる。水しか排出しない燃料電池車「MIRAI」と同様に、水蒸気を出すだけでほとんど二酸化炭素を排出しない。既存の部品や長年培ってきた内燃機関の技術を使うことができ、関係するサプライチェーン(部品供給網)を活用できるというメリットもある。


 自らドライバーとしてレースに出場する“モリゾウ”こと豊田章男会長は、「水素エンジン車はカーボンニュートラル社会に向けた選択肢のひとつ」と語る。脱炭素社会を実現するために、色々な方法を用意しておこうという訳だ。

なぜ、燃料を液体水素にしたのか


 レース参戦当初は、燃料に気体水素を使っていたが、2023年に液体水素に転換した。液体水素の体積は気体の800分の1程度。タンクの容量が同じでも大量の水素を積めるので、航続距離を大 幅に伸ばすことができる。また、気体のタンクは内部が高圧なので、かかる力を均一にするために断面を円形にする必要があった。だが、液体ならタンク内が低圧なため楕円形にもできるので、空間を有効に使えるようになった。さらに液体なら運搬用ローリーも小型化できるし、圧力 を上げて充填するための装置も不要となる。

 
 現在の水素ステーションの多くでは、水素は液体で保存され、気体にして車に充填される。液体にすることで設備のコンパクト化も図れるなど、インフラの普及を後押しすることにもつながると期待されている。

最近のレース参戦状況は


 5月の第2戦(24時間耐久)は完走したが、ブレーキの不具合で長時間のピットインを余儀なくされ、7月の第3戦は電源トラブルでリタイアした。しかし、いずれも水素エンジン系統に問題はなく、第2戦では航続距離(1回の水素供給当り)を前年の倍以上に伸ばし、課題となっていた燃料タンクからエンジンへ水素を送り出すポンプの耐久性にも問題はなかった。

そもそも、なぜレースなのか


 トヨタの開発担当者は、「車を鍛える」という表現をよく使う。長時間に及ぶ全開走行や悪路の高速走破など、過酷な状況下だからこそ見つかる不具合を一つずつ潰していく。レースは技術開発のための実験場であり、次世代の人材を育成する場でもあるのだ。


 そして、もちろん“実装”という次の段階、つまり、市販化も見据えている。実際、2023年11月 から4か月にわたり、水素エンジン車を載せた商用車をオーストラリアの公道で走らせる実証実験を行っている。


 水素を燃料とするモビリティへの関心は海外でも高まっており、パリ五輪ではトヨタのクラウン(FCEV)がマラソンの先導車として採用された。
トヨタは、こうした試行錯誤が技術を鍛え、実績の積み重ねが汎用への道を切り開き、信頼の醸成につながっていくと信じ、日々、歩みを続けている。