東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の舞台となったベイエリア。この広大なフィールドでは現在、「自然と便利が融合した持続可能な都市の実現」を目指して、東京都と企業が挑む「先行プロジェクト」が行われています。エリア内の4会場で「2050年の東京」を体感できる「SusHi Tech Tokyo2024 ショーケースプログラム」(4月27日~5月26日)に合わせて、海の森エリアの会場で見ることができる同プロジェクト参加企業の最先端テクノロジーを紹介します。
持続可能な都市の実現に向けて動き始めた企業
【水空合体ドローン】
KDDIスマートドローン株式会社(東京都港区)が取り組むのは「水空合体ドローン」です。
水空合体ドローンは、空中ドローンと水中ドローンが合体し、auモバイル通信による遠隔操作で、空を飛び水に潜ることができる世界初(*)のドローンです。陸から飛行して着水すると水中ドローンが海中に潜り点検作業をします。
これまでダイバーが潜って行っていた海中の点検作業を、ドローンが代替することができます。実用化すれば、ベイエリアに数多くある橋脚の腐食有無を調査したり、養殖いけすの破損状況や養殖魚の生育状況を調べたりする際に、大幅な省力化が期待できます。
海は地球全体の約7割を占め、風車を海上に設置する「洋上風力発電」などの有効利用が進んでいます。プロジェクトを担当する同社の今溝英明さんは「少子化によるダイバー減少に対応できます。ドローンのGPS(全地球測位システム)や音響測位装置でカメラの位置を正確に把握できるので、利便性も向上します」と話してくれました。
*KDDIスマートドローン、KDDI総合研究所、プロドローンの3社が、2021年5月31日に世界で初めて開発。
※今回は展示および紹介のみとなっております。実際のデモンストレーションはありません。
【水素生産船】
貿易量のほとんどを海上輸送が占める島国・日本。商船の運航は人々の日常生活に必要不可欠です。大型商船は現在、大量のC重油を燃料として使用していますが、株式会社商船三井(東京都港区)は、風のみからクリーンエネルギーである「グリーン水素」を創り出す水素生産船により、二酸化炭素などを排出しない「ゼロエミッション船」の実現に取り組んでいます。
新型船が燃料に使うのは、洋上風と船の周囲にある水。帆を使って進みながら、タービンを回して発電し、海水から作った純水を電気分解して水素を生成、液体の有機化合物「メチル・シクロヘキサン(MCH)」として貯蔵します。風が弱い時はMCHから水素を取り出して燃料電池に供給し、発電してプロペラを回して進むこともできます。
現在はヨットの「ウインズ丸」で実証実験を実施しており、同社技術研究所の木村圭佑研究員は「船のゼロエミッション航行だけでなく、陸上へのエネルギー供給も可能になる技術だ」と胸を張ります。
【垂直軸型風力発電】
風力発電といえば、海岸沿いや山の頂上などに巨大な風車が立ち並ぶ光景を思い浮かべる人が多いかもしれません。そんな中、コンパクトな発電機を開発しているスタートアップ企業が「株式会社チャレナジー」(東京都墨田区)です。
同社の発電機は、高さがたったの5.5メートル。羽根は高さ1.5メートル、直径70センチしかありません。この羽根をゆっくり回転させ、太陽光パネルも組み合わせて最大出力230ワットを生み出します。
3メートル四方の敷地があれば設置できるため、常夜灯や監視カメラのすぐそばに設置することが可能。通常はコンクリート製の基礎を作る工事が必要ですが、現在は重りなどを使うことで地面へ固定する工事が不要な「置き基礎」タイプの実験中で、同社の赤土侑也さんは「工事不要で移動ができ、コンパクトなので輸送が楽。災害被災地などで迅速に電気を供給できるように取り組みたい」と語ってくれました。
【洋上浮体式太陽光発電】
ビルの屋上やメガソーラー発電所に太陽光発電パネルが並ぶ光景は、今や珍しいものではなくなくなりました。さらなる普及を進めようと、三井住友建設株式会社(東京都中央区)が開発を進めているのが、海に設置する「洋上浮体式太陽光発電施設」です。
樹脂製で水に浮く「フロート」を鋼製のフレームで囲み、海上に設置。周囲に設置した「水中アンカー(おもり)」にロープでつないで固定します。潮の満ち引きや波の影響を極力減らすため、ロープの途中に「中間シンカー」を取り付け、たるみをなくして姿勢を安定させるなどの工夫を凝らしています。
同社事業創生本部の土屋星さんは「東京は波の穏やかな内海がある。水路や内海が多い。設置するのに相応しい場所はたくさんある」と強調します。
【舗装式太陽光発電】
太陽光発電パネルを設置しようとするのは洋上だけではありません。東亜道路工業株式会社(東京都港区)が手がけようとしているのは、道路や駐車場などの舗装路面に直接、表面を特殊樹脂でコーティングしたパネルを貼り付けようという取り組みです。
土地の広さに関係なく設置でき、景観を邪魔することなく、街灯や監視カメラなどの電源としても活用できます。すでに電動キックボードの充電用や災害時非常用電源として導入実績があります。東京ベイeSGプロジェクト令和4年度先行プロジェクトにおいて、「Wattway」を60枚設置しています。
同社執行役員技術営業部長の阿部長門氏は「トラックを使用して耐久性はチェック済み。自然に優しく、学校に設置すれば子供たちの環境学習にも活用できます」と話してくれました。
“海の森”という広大なフィールドに展開される、最先端テクノロジーに触れよう
「SusHi Tech Tokyo2024 ショーケースプログラム」は4つの会場で開催されますが、そのうちの「海の森エリア」は5月12~21日の期間中、<陸・海・空>を活用して様々な最先端テクノロジーを実演・体験・展示する場となります。
会場では、公式アンバサダーである「僕とロボコ」が今回紹介した5企業を含め、最先端テクノロジーをわかりやすく解説します。また、現地で発電した電気を一部使用したDJ機材に触れられる体験コーナー「エレキテック~DJ体験会~」、実際にドローンを制作・操作する「ドローン☆ワークショップ」、日本科学未来館の「おばけレストラン」で紹介されるメニューを体験できる「テック☆バーガーショップ」など、みんなが楽しめる<エンタメコンテンツ>も充実しています。
期間中は近隣駅と海の森エリアとを結ぶシャトルバスなどを運行予定。最新情報は公式ウェブサイトへ。スマートフォンでチケット予約が簡単にできる公式アプリもあります。