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対談企画「せんいの未来を語ろう。」(第1回)
せんいが導くアパレル業界の未来とは?

 使われた衣服や繊維くずが原料となって、再び衣服に生まれ変わる。この循環を繰り返して資源の無駄づかいやごみの量を減らし、リサイクルの動きを加速させるための技術開発が進んでいます。環境問題への対応と快適・機能性素材の技術開発にいち早く向き合ってきた「帝人フロンティア」の平田恭成社長と、アスリートの視点から社会課題の解決に取り組む元ラグビー日本代表キャプテンで起業家の廣瀬俊朗さんが語り合いました。

「いらないもの」を「なくてはならないもの」に

元ラグビー日本代表キャプテン・株式会社HiRAKU代表取締役CEO
廣瀬 俊朗 氏

廣瀬 現役引退後、ラグビー以外の新しい世界に飛び込み、次世代のために何かできないかと思い立ち、いろんな活動に挑戦してきました。アフリカで生産したアパレル商品の収益で現地の子どもたちを支援する企業と一緒に活動したり、環境問題に目を向けるきっかけにとリサイクル繊維でTシャツを作ったり。どれも環境にやさしい製品の重要性を思い知る体験ばかりだったので、今日の対談を楽しみにしていました。

平田 ありがとうございます。当社は繊維業界では珍しく、研究開発から製造に至るメーカー機能と、人・モノ・情報を紡ぎ合わせて新たな事業を創出する商社機能をあわせ持ち、その強みを生かして市場ニーズに素早く対応した製品づくりにこだわってきました。アパレル業界でも近年、資源循環や環境配慮への意識が高まってきましたが、私たちは以前からこれらの課題に取り組んできました。1995年には業界に先駆けて、再生ポリエステル繊維「エコペット」を発売しました。原動力は、「いらないもの」を「なくてはならないもの」に生まれ変わらせたいという思いでした。使用済みペットボトルを原料にしてプラスチックの廃棄量削減に挑み、この一歩からエコ素材の本格的な研究開発への歩みがスタートしました。

廣瀬 ポリエステルやペットボトルの原料になる石油には限りがあり、歴史的にみても世界各地で利権争いにつながるなど様々な問題の原因になってきました。地上資源ともいえるプラスチックごみを有効利用して循環させていければ、地下資源の使用量を減らすことができ、脱炭素化など地球環境の改善につながるだけでなく、世界の平和や安定にも貢献できますね。

「エコペット」の進化

帝人フロンティア株式会社 代表取締役社長執行役員
平田 恭成

平田 その通りです。2000年にはペットボトルからだけでなく、古着や繊維くずを化学的に分子レベルまで分解し、石油由来と同等品質の原料に再生できるケミカルリサイクル技術を確立し、さらに機能性に優れた再生ポリエステル繊維や生地の開発が加速しました。いまでは「エコペット」は、スポーツウェア、カジュアルウェア、スーツやシューズなど、幅広い用途で採用されています。また、リサイクル繊維は品質がいまひとつというイメージは一変し、見ても触ってもまったくわからないと驚かれます。

廣瀬 格好良さや着心地で選んだら、実は環境に優しい素材だったなんて一番の理想ですね。成功するのか、収益が出るのか、何の保証もないなかで挑んできた開発の道のりは並大抵の苦労ではなかったと思います。リサイクルを進めるには作り手側だけでなく、消費者側の気づきも重要だとつくづく感じました。興味のある人だけが参加するリサイクルでは循環型社会はつくれません。ボールやユニフォームを再生素材にしたりするなどして、スポーツをきっかけにリサイクルへの関心を高め、行動につながるような仕掛けを僕自身も考えていきたいです。

広がる環境配慮素材

平田 リサイクルとは別のアプローチでも環境配慮素材の開発を進めています。例えば、海洋マイクロプラスチック問題に着目し、起毛せずに温かさを発現し、従来の起毛品よりも洗濯時に流出する繊維くずの抜け落ちを軽減する生地「サーモフライ」は、多くのスポーツ・アウトドアブランドで採用いただいています。また、村田製作所との合弁会社が提供する「ピエクレックス」は、人の動作で繊維が動くことによって発生する電気で抗菌機能を発揮し、有機溶剤の使用を削減できるだけでなく、原料に植物由来の「ポリ乳酸」を使用しているので環境にも配慮された素材なのです。

廣瀬 いろいろなエコ素材があるんですね。「サーモフライ」はマイクロプラスチックの元になる繊維くずが抜け落ちにくいだけでなく、この軽さで保温性もあるなんて驚きです。「ピエクレックス」は前から気になっていたんです。体を動かすモチベーションになりますよね。動けば動くほど抗菌作用が増すなんて、スポーツをする人には抜群の素材だと思います。

ワンチームで目指す循環型社会

平田 リメイクやリユースを経て、それでも不要な古着は着実にリサイクルにまわしていく。そのためには廃棄衣料の回収と分別の仕組みづくりが必要です。古着をリサイクルする上で重要な事前準備は、ペットボトルの分別回収のように材料を単一素材にすることです。しかし、衣服は複数の素材が組み合わされていることが多いため、異素材の分離技術の開発に注力しています。また、素材情報を入力したICタグを衣服につけて、使用後の古着を回収する時に、「レコピック」などのセンシング技術で情報を読み取り、素材の判別に役立てれば効率的ですね。将来的には、古着の分別や素材の分離をしたのちに、素材別にリサイクルできる専門企業同士が連携し、無駄なく繊維をリサイクルし循環させる、そのような循環型社会の実現のために、業界全体でワンチームとなってそれぞれの役割を果たしていくことが求められています。

廣瀬 スクラムを組む人、ボールをさばく人、司令塔役を担う人など全員に重要な役割があり、全員が必要とされているところがラグビーの素晴らしさです。同じように繊維業界でも各企業が循環型社会の実現という大きな目標を共有し、タッグを組んでいるんですね。

平田 これまでも繊維にこだわり続け、横道にそれずにやってきました。最前線の社員たちはお客様の困りごとに常に耳を傾け、そこから見えてくる市場のニーズを会社全体で共有し、解決方法を一生懸命に模索してきました。繊維に関して困ったことが出てきた時、真っ先に頼られ、相談してもらえる会社であり続けたい。それが会社の存在価値につながり、地球環境の未来に貢献できればうれしいですね。

元ラグビー日本代表キャプテン・株式会社HiRAKU代表取締役CEO
廣瀬 俊朗(ひろせ・としあき)
大阪府出身。慶應義塾大学理工学部卒業。5歳からラグビーに打ち込み、東芝ブレイブルーパスでは主将として2年連続日本一に。日本代表の主将も務め、2015年のワールドカップを最後に引退。現在は株式会社HiRAKUを起業し、スポーツの普及や教育、食、健康に重点をおいたプロジェクトに取り組む。

帝人フロンティア株式会社 代表取締役社長執行役員
平田 恭成(ひらた・やすなり)
広島県出身。神戸大学農学部卒業後、日商岩井に入社。合併や統合を経て、2012年に発足した帝人フロンティアで繊維資材本部長などを務めた後、20年に取締役常務執行役員産業資材部門長、21年4月から現職。座右の銘は後漢書が由来の「疾風に勁草(けいそう)を知る」。

【商品紹介】
軽量で高い保温性、発電による抗菌作用―続々と生み出される高機能なエコ繊維


 使用済みペットボトルや繊維くずをリサイクルさせる「エコペット」は発売以来、2020年3月までに累計で50万トン以上を生産しました。これはペットボトルに換算すると250億本、Tシャツに換算すると25億枚に相当します。技術改良が進み、様々な形状や太さの「エコペット」を生産できるようになり、多彩な機能や質感を持ち合わせた繊維、生地、製品づくりが可能に。ファッションやスポーツ衣料をはじめ、ユニフォームや雑貨、寝装品、インテリアなど幅広い用途で利用されています。

 このほか、アウトドアウェアで採用が広がる「サーモフライ」は、中空で歯車のような断面をもつ糸「オクタ」の特性を存分に生かし、吸水速乾機能で発汗時のべとつきを防ぐ一方で高い保温性と軽量性を兼ね備えたテキスタイル。フリース素材の多くで採用されている起毛加工を施さないことで、洗濯時に流出する繊維くずの抜け落ちを軽減させることができ、海洋マイクロプラスチック発生の抑制につながるとして注目を集めています。

 さらに、電子部品大手「村田製作所」との合弁会社が提供する「ピエクレックス」では、植物由来の樹脂「ポリ乳酸」の圧電性に着目。人の動作で繊維が動くことによって微弱な電気を発生させ、においの元となる菌などの増殖を抑えることに成功しました。薬品由来の抗菌剤をつかわなくても半永久的に抗菌性を発揮でき、洗濯を繰り返しても効果が持続するとして、Tシャツや靴下、マスクなどで活用が進んでいます。


「エコペット」を使用したエコファーのベストの手触りを確認する廣瀬さん
繊維くずやペットボトルからリサイクルされた
「エコペット」の糸