作曲家ショパンを産んだ東欧・ポーランド。この国では今、主に輸送手段の電動化という追い風を受け、eモビリティや半導体産業の発展が勢いづいています。背景には、EUの規制強化やエンジン車が環境に及ぼす悪影響についての意識の高まりがあります。
eモビリティのキープレーヤーとしてのポーランド
eモビリティはポーランドのモビリティ分野を形成する重要な要素となりつつあります。ポーランドではすでに、欧州で製造される自動車用バッテリーの30％が生産されています。近年、国外企業（LG化学、メルセデス、SKネクシリス、ユミコアなど）がポーランド国内での生産体制を相次いで強化し、包括的なバリューチェーンが形成されています。
半導体市場のキープレーヤーとしてのポーランド
eモビリティ産業の発展には、半導体部門での潜在力が不可欠です。欧州半導体法をはじめとする新しい規制により、ポーランドはハイテク分野の主役となる可能性があります。西部・ヴロツワフ近郊に計画中のインテル半導体工場のように、ポーランドにはハイテク工場建設の準備が整っていると多くの専門家が指摘しています。
好景気に沸く北部ポモージェ県
ポーランド北部のポモージェ県（ポメラニア）は、fDiインテリジェンスによって「2023年FDI（海外直接投資）戦略分野で未来を担う欧州中規模地域TOP5」に選出されました。県都グダンスクおよびその周辺都市は合計160万人の人口を擁し、バルト海南部最大の都市圏です。ビジネスに適した環境と沿岸部の魅力的な立地により、世界中から移民が集まっています。ポーランドの民主化運動をリードした「連帯」を率い、初代大統領を務めたレフ・ワレサの遺産は、グダンスクを自由と文化的多様性を象徴する都市にしています。
ポモージェ県の経済は多様性に富んでいます。エレクトロニクス、モビリティ、海運、ロジスティクス、シェアードサービスなどが主要な分野です。経済は活発で、アマゾン、ノースボルト、フレックスといったブランド企業を誘致しました。日本企業のリコーや富士フイルムも拠点を置いています。
グダンスクには、インテルの欧州最大の研究開発センターがあり、3,500人のエンジニアが雇用されています。ここでは、マイクロプロセッサー用ソフトウェアや、半導体・eモビリティ産業向けソフトウェアの開発が行われています。
ポモージェ県の経済的成功の基盤となっているのが、優れた高等教育です。毎年2,500人の学生が、ナノテクノロジー、データ工学、フォトニクスなど、エレクトロニクス産業が求める分野を専攻し、ポモージェ県の大学を卒業しています。エレクトロニクス、数学、物理学関連の学部では、アジアからの学生も多く、その大多数が卒業後もポモージェ県に留まっています。
ポモージェ県の優れた交通網は、ビジネスにも生活にも便利です。グダンスクは、ヨーロッパ東西および南部への陸路でのアクセスがよく、空港からもミュンヘン、フランクフルト、アムステルダム、コペンハーゲン、ロンドン、ワルシャワへのフライトが多数あります。
グダンスクとその近郊都市には、中国の光陽、上海、寧波、塩田への直行便が毎週運航する港が2か所あります。
インベスト・イン・ポモージェが半導体開発を支援
ポモージェ県のインベスト・イン・ポモージェは、国際的な業界団体SEMI（国際半導体製造装置材料協会）にポーランドから初めて加盟しました。インベスト・イン・ポモージェは、ポモージェ開発庁が主導する地方政府の非営利団体で、同地域の投資家へのサービス提供を目的としています。SEMIへの加盟は、ポーランドが半導体生産で新たなサプライチェーンの形成に協力する用意があることを示す重要な指針です。
6つのエネルギー特区が設立計画中
ポーランド政府は、ポーランド北部に6つのエネルギー特区の設立を計画しており、そこでは現在、洋上風力発電所およびポーランド初の原子力発電所が建設されています。これらの特区での工場の設置を決定した投資家には、電力コスト削減の恩恵を受けられます。年間消費量が100GWhを超える大口の電力消費者や、エネルギー貯蔵施設の建設を計画する企業を対象としています。
