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こどもみらいフォーラム おおさか

 生きづらさを抱えるこどもやその親を支えようと活動する大阪府内の団体が集まり、課題について話し合う「第2回こどもみらいフォーラムおおさか」が11月23日、大阪市中央区の「オービックホール」で開かれました。今回のテーマは「こどもの居場所づくりへの貢献」。参加者は支援の在り方や相互交流の重要性について意見を交わし、理解を深め合いました。

《基調講演》こどもの生きる力を育む関わり方 ~これまでとこれからと~

講師 辻 由起子(社会福祉士/保育士/こども家庭庁参与)

 私は高校を卒業後、すぐに結婚・出産しました。実家からは勘当され、元夫は働かずに暴力を振るう人だったので、一人で子育てをしながら働かなければいけませんでした。勉強も部活も頑張ればうまくいったけれど、誰からも教わらなかった子育ては、どんなに頑張ってもうまくいきませんでした。

 どうしたら愛情を持って子育てを楽しめるのか、答えを知りたくて通信大学で教育と福祉を学びました。わかったのは、環境が人をつくるということと、人は一人では生きていけないということでした。群れで生きる人間は、本能ではなく、群れの先輩に教わることで環境に応じた子育てができるよう進化してきました。孤独で不安を感じている親に必要なのは、一方通行の指導ではなく、一緒に子育てをしてくれる人、子育てのやり方を教えてくれる人です。ヤングケアラー・貧困など、こどもの問題は全部、親の問題。だから私は子育て支援に取り組むとき、親をどうサポートしていくかを大事にしています。

 社会と適切につながるには、精神的に自立すること、そして他者に助けを求め、快くサポートを受け止める「受援力」を身につけることが大切です。“仲良しの他人”を増やしていきましょう。縁のない者同士が助け合うのって、一番理想の社会だと思っています。大人でもこどもでも、しんどい時に「しんどいよ」って互いに言える間柄をつくり、安心して困れる街にしていく。相談ではなく雑談から始め、互いに知り合い、仲良くなる。そして人として当たり前に助け合う。そんな社会が広まったら、こどもの生きる力もおのずと育まれるのではないでしょうか。


辻 由起子
(つじ・ゆきこ)18歳で結婚、19歳で出産、23歳でシングルマザーに。仕事、育児、家事をこなしながら、通信教育で大学を2回卒業。リスクだらけの子育て経験と、小・中学校の相談員の経験をもとにこども・家庭・若者サポートをしている社会福祉士。こども家庭庁参与。

《パネルディスカッション》こどもの居場所

パネリスト
大森 真友子(一般社団法人 LFA Japan代表理事)
木曽 稔之(シェアリンク茨木 副代表)
田中 梓(大阪市生野区 田島中学校 養護教諭)

コーディネーター
辻 由起子

地域と協力し、行動する大切さ

辻󠄀 こどもにとって必要なのは、その子自身の良さが発揮できる〝環境を整えること”と考えます。そのために、様々な側面からこどもの居場所づくりを実践している事例を紹介してもらいます。

木曽 親との関係や経済面などで困難を抱える若者向けに、大阪府営住宅を借りてシェアハウスを運営しています。今は大学生を中心に13人が入居し、入居者同士、また地域の人やこどもたちと交流しています。物理的な場所というより、人と人との関係の中で安心できる、いつでも帰ってこられる場所をつくりたいと思っています。今後も同じ課題に取り組む人たち、地域にいる“いい人”とつながりながら支援の輪を広めていきたいです。

辻󠄀 「お帰り」は最強の言葉です。そう言って帰りを待つ人がいる場所は、生きていく上でとても大事だと思います。
 次は、学校をこどもたちの「心の安全基地」にするため、大阪市生野区の小学校で「生きる教育」を実践してきた教育現場最前線のお話です。

田中 こどもたちの荒れた状態が続いていた過去に学び、国語教育と性教育を柱とした独自のプログラム、「生きる教育」を開発しました。自分の思いを言葉で伝えられるこどもを育てることを目指しました。その他にこどもへの取り組みとしては、コロナ禍後に不登校が増えたので、校内に支援室をつくりました。どんな形でもいいから来ていいんだよという保証ができた意義は大きいと思っています。支援室でもトラブルは起きますが、その中でもう一度人間関係を紡ぎ直す手立てをつけ、学校を安全で安心な居場所にしたいと考えています。

辻󠄀 今回のテーマとアレルギーの関連にピンと来ていない人もいるかもしれませんが、周囲の子と同じことができない、人と異なるという状況は生きづらさにつながる可能性があります。重度の食物アレルギーを持つお子さんの子育て経験を生かした活動についての紹介です。

大森 「食物アレルギーのために何かを諦めないといけない社会を変えたい」という思いで活動しています。患者会は、こどもたちに「そのままでいいよ、アレルギーを持っていることは悪いことじゃないよ」ということを教えると同時に、知識を身につけて外に出せるよう育てていく場所だと思っています。知識を持った大人を増やそうと、アレルギー対応についてまとめた防災ハンドブックを作って全国に配布するなど、啓発活動も行っています。ハンドブックはLFA Japanのホームページから無料でダウンロードできるので、ぜひ広めて欲しいです。

辻󠄀 それぞれが各分野で色んな取り組みに励んでいますが、「一人で頑張らない」ことが私たちの基本的なルールです。居場所やメニューをたくさん用意できるよう、今日のような出会いの機会、色々な人との関わりを大事にしています。


大森 真友子
(おおもり・まゆこ)長男が重度の食物アレルギーがあり、当時の日本でほぼ実例のなかった経口免疫療法を行う。アレルギー児の子育て経験を生かし、“患者会LFA”を運営。地域や子育て現場にてアレルギー対応策の提案を行う。厚生労働省アレルギー疾患対策推進協議会委員。


木曽 稔之
(きそ・としゆき)22歳からジャズミュージシャンとして活動していたが、2021年、コロナ禍で失われた若者の居場所づくりをきっかけに若者支援に関わり始め、辻由起子氏と出会いシェアリンク茨木に所属。現在は公営住宅を活用した若者向けシェアハウスを運営する。


田中 梓
(たなか・あずさ)幼稚園や小学校での勤務を経て、2018年より田島南小中一貫校大阪市立田島中学校指導養護教諭としてこどもたちと関わる。生野南小学校勤務時代に自身も開発に携わった『生きる教育』や、文部科学省の「生命の安全教育」の実践を行っている。

大阪府内で活動する団体と参加者が対話

 パネルディスカッション終了後には、こどもや親子支援に取り組む団体による四つの分科会が開催されました。来場者はそれぞれ関心のある分科会に参加し、ワークショップや意見交換をしながら、自分にできることを考えました。

■分科会①
学校現場をハブとした連携づくり

担当団体:大阪市総合教育センター

 居場所を必要とするこどものために、学校現場、支援団体、地域社会はどう連携できるのか。異なる立場の参加者が五つのテーマに分かれて討議し、それぞれの制約や現状への理解を深め、課題解決のヒントを探りました。


■分科会②
地域発の連携づくり

担当団体:FAIRROAD、やんちゃまファミリーwith、守口市立さつき学園、ここからKit

 連携して動き出した地域活動について、かっとうを含めた実体験を座談会形式で紹介。制度の隙間からこぼれ落ちるニーズをかなえ、人と資源の好循環を生むためには、どのような“寛容性”が必要なのかを考えました。


■分科会③
ヤングケアラーへの支援事例から学ぶ

担当団体:もくせい会ケアハウスきんもくせい、大阪府福祉部地域福祉推進室地域福祉課

 支援に際し多機関が連携することの重要性を学ぶため、福祉施設と教育現場が連携して取り組んだ事例を紹介。同じ事例で自分たちにできることを考えるグループワークを通し、ヤングケアラーへの理解を深めました。


■分科会④
家庭への支援

担当団体:こどもになる、こもれび、八尾隣保館ルフレ八尾、み・らいず2

 こどもとその家庭を支援する団体の事例紹介を通し、親と子の心情、その関係性など家庭の現状へ理解を深めました。さらに、スペシャリストでなくても課題解決のために一人一人にできることは何かについて学びました。


フォーラム終了後、登壇者および各分科会の担当団体など運営スタッフ全員による集合写真を撮影

主催:一般財団法人住友生命福祉文化財団、読売新聞大阪本社