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多様な性への理解と尊重 誰もが安心できる医療現場を目指して「LGBTQと医療」学生座談会レポート(1/2)

 性のあり方を含め多様な価値観を尊重し合う社会づくりが広がる中、「LGBTQ(※1)と医療」学生座談会が4月29日、読売新聞大阪本社で開かれ、医学部と看護学部の学生が参加しました。LGBTQの人たちが偏見や差別により抱える健康リスクや、性の多様性に関する知識や配慮の欠如が適切な医療へのアクセスを妨げている可能性などについて意見交換。医療従事者側が認識や知識を深める必要性や、大学教育にLGBTQ当事者を交えた学びの場を求める声が相次ぎました。

LGBTQへの無理解 受診控えや病状悪化の一因に

 座談会の冒頭、医師、LGBTQ当事者として診療や研究、啓発活動を行う吉田絵理子さんが、LGBTQの人たちは差別を背景にうつ病などのリスクが高く、特に10代は自殺を考える割合が同年代より高い調査結果を報告。トランスジェンダーの約半数が「医療機関で嫌な体験をした」と答えるなど、無理解な言動がトラウマになって受診を控え、さらに病状がひどくなる悪循環が起きている実態について説明しました。
 その後、当事者の経験談をまとめた動画を上映。例えば、乳がんと診断されたノンバイナリー(※2)の患者は、入院手続きの際に家族のサインを求められ、同性パートナーのサインでもよいか窓口ごとにカミングアウトする必要があった経験や、女性であることを前提にした質問にストレスがたまったり、性別で色分けされた病院のパジャマに不快感を覚えたりした心情を語っています。
 視聴後、動画の制作を手掛けた認定NPO法人虹色ダイバーシティ代表の村木真紀さんが、「企業や病院での多様性に関する研修も増えてきたが、対象は人事担当や管理職にとどまり、情報が現場に共有されていない場合が多い。当事者の声から実情を知り、現場でどうすればいいか議論するきっかけにしてほしい」と呼びかけました。

吉田 絵理子 さん
村木 真紀 さん

意思疎通や大学での学び 学生が活発に議論

 この後、吉田さん、村木さんを交え、学生同士で解決策について話し合いました。
 治療に関連し、医療従事者が患者の性自認や性的指向を知る必要がある場合、学生からは「AI(人工知能)を駆使し、アプリなどに入力してもらえば、対面よりも伝えやすいのではないか」というアイデアが出た一方で、「(伝える)ハードルは下がるかもしれないが、差別的な医療者に入力内容を見られると思うと、結局怖くてためらってしまうのでは」と危惧する声も。「医師が知った際、入院などで適切なケアができるよう、看護師らとも情報共有できるシステムが大切だと思う」という意見も出ました。
 吉田さんは「問診をアプリで行ったとしても診察は必要となるため、打ち明けても大丈夫という安心感をLGBTQの患者さんに抱いてもらうことが何より大切。医療者側が理解を深め、思い込みや無用な詮索をやめ、いつでもサポートするという姿勢をみせることが必要」と指摘。村木さんは「病院職員の中に知人がいるケースもあり、自分のセクシュアリティが噂話になることを恐れ、隠したいという患者さんもいる。院内でどこまで情報を共有して良いかは、患者本人に確認すべき」などと話しました。

病院の対応や大学での学び方など、各グループで話し合った解決策が代表者から語られ、全員で考えを共有しました。

 文部科学省が公表している「医学教育モデル・コア・カリキュラム」では、LGBTQへの不平等をなくすために積極的な行動をとれるようなカリキュラム編成を求めています。
 一方、学生からは「教養の授業でLGBTQについて学んだが、あまり覚えていない」「1、2年時に概念だけ教わっても、座学の詰め込みで終わってしまう」など率直な声が上がりました。
 そのうえで、「LGBTQの模擬患者に対応する医療面接実習を行い、実用的な学びで身近に考えられるようにしたほうがいい」「リアルな声には関心が湧く。LGBTQ当事者を交えたグループディスカッションなど、主体性をもって学べるカリキュラムを授業に組み入れてほしい」などの要望が出ました。

誰もがアクセスしやすく、安心できる病院づくりを

 吉田さんは最後に、無意識の偏見で悪意なく投げかける差別的言動「マイクロアグレッション」、偏見によって臨床的判断に影響が及ぶ「クリニカル・バイアス」の二つの言葉を紹介。「自分にとってはささいな言動であっても、受け手にとっては多大なストレスになっていることがある。また、医療者として大切なことは、どうしてもネガティブな感情を抱いてしまう場合に、個人的な感情はいったん脇に置き、あくまでも医療のプロに徹すること。それが難しければ、信頼できる他のスタッフにつなぐのが医療者としての役割」と強調しました。
 また、学生の発案でLGBTQに関する授業が広がった大学の実例を挙げ、「若い世代には柔軟にアクションを起こす力がある。まずは、現状を知り関心をもってほしい。多様なセクシュアリティを理解し、尊重することは、LGBTQだけでなく、ひいては、あらゆる人が公平に医療にアクセスでき、安心できる医療機関づくりにつながる」と力を込めました。

医療現場だけでなく 社会全体で解決していく問題

 国や民間の研究機関などによる調査では、LGBTQの割合は回答者の3~9%に上りますが、周囲にカミングアウトしているケースは非常に少ないとされます。吉田さん自身も職場に打ち明けるまで、相当の不安や葛藤がありました。学生生活や医師として働く中で、先輩たちの同性愛やトランスジェンダーの人々に対する偏見や差別的な言動を目の当たりにし、「ばれてしまったら、まともなキャリアは築けないとひた隠しにしていた」と振り返ります。
 日本ではカミングアウトがしにくく、「見えないから存在しない」という認識につながり、「うちにはLGBTQの患者さんはいないから、対策は必要ない」という対応につながっている。吉田さんはそう分析したうえで、「患者さんや職員の中にLGBTQの人はすでにいると考えて、あらかじめ環境を整えておくことが求められている」と学生たちに語りかけました。
 助産師を志す看護学部の学生は「女性の患者さんに当たり前のように旦那さんはいますか、と聞いていたかもしれない。自身の考え方や価値観にどんな傾向があるのか把握したうえで、思い込みからくる言葉遣いで嫌な思いをさせないよう、意識してコミュニケーションを図れるようにしていきたい」と思いを定めていました。
 また、今冬から実習が始まるという医学部の学生は「LGBTQの人たちが感じる、受診すること自体への壁は、医療現場だけじゃなく、社会全体で解決していかなければならない問題。あらゆる人に医療を提供していけるよう、医療に携わる全員がこの問題に理解を深めるため、大学の授業などでしっかりと学ぶことが必要なのではないか」と話しました。

※1:「LGBTQ」は、Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)、Queer(クィア)あるいはQuestioning(クエスチョニング)の頭文字をとり、性的指向や性自認を表す言葉の総称の一つとして使われている。
※2:「ノンバイナリー」とは、自分の性自認・性表現に男性、女性といった枠組みをあてはめようとしない人。

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「挑むKANSAI」は、大きな変化に直面する関西の姿とその針路を多角的に伝える読売新聞のプロジェクトです。今回の学生座談会は読売新聞大阪本社が企画し、趣旨に賛同したバイエルの協賛を得て実施しました。