HUG youは、国内外にてスキースクールの運営及びスキー選手の育成に携わるスタッグインターナショナル(本社:山梨県南都留郡山中湖村)が展開する、生理中のアクティブライフを送る全ての女性をサポートする為の新事業。今回は、HUG youのプロジェクトマネージャーである山口恵理さんに話を聞きました。
娘を思う気持ちと自身の経験から生まれた吸水ショーツ
—— 「HUG you」という素敵なブランド名には山口さんの思いが詰まっていると感じました。ご自身の経験などをもとに開発に取り組まれたのでしょうか。
HUGには抱きしめるという意味があります。シンプルですが、すべての女性に安心して過ごしてほしい、安心を着用してほしいという思いを込めました。
最初に「吸水ショーツを開発したい!」という思いに至ったきっかけは、娘が過多月経だったことです。私事なのですが、その娘が留学をすることになり母親としてなんとかしてあげたいと思ったことから解決策を模索し始めました。
—— 娘さんを思う親心から「HUG you」はスタートしたんですね。
そうですね。娘の過多月経には、漢方を使用しての体質改善を試みたり、ピルを使用したりすることも検討しました。ピルについても私自身が不勉強だったので、ピルや生理に対して初めて向き合い、勉強することから始めました。ただ、親心としては薬に頼らず何とかしてあげたいという気持ちもありました。
また、私が長年アルペンスキー競技をしており、トレーニングや競技中に生理で苦労することが多かったこともきっかけの一つです。ゲレンデでは生理中でもトイレに行ける回数が少なく、なかなかナプキンを変えることが出来なかったので、ウェアを汚してしまったことがあります。激しい動きの中では常に不安や問題が生じます。これはアルペンスキーだけでなく、他の競技でも同様かと思います。こうした自分自身の経験にも耐えうるモノであれば、すべての生活に安心して取り組むことができる!と考えアスリートの課題解決にもつながるプロダクトがあればいいな、とも思っていました。
—— いろいろな可能性の中から、どうして吸水ショーツにたどり着いたのでしょうか。
ちょうどそのタイミングに、海外で吸水ショーツがはやり始めていたので取り寄せてみました。吸水ショーツは、サニタリーショーツの進化版で「私の求めていたモノだ!」とうれしく思いました。ただ実際に手元に届くと、私のイメージとは少し違っていて、アスリートが競技で安心して使用するには少し機能が足りないと感じました。そこから、アスリートも安心できる吸水ショーツをつくろう、と思ったんです。そういった思いから「HUG you 吸水サニタリーショーツ active」は約2年をかけて製品化に至りました。
アスリートの声から生まれた「ハグユープロジェクト」
—— 女性の学生生活やアスリートの競技生活をサポートするための「ハグユープロジェクト」はどのようにスタートしたのですか。
私たちの吸水ショーツは、アスリートが競技で使用できるレベルというのを目標としてきたので、当然アスリートが実際に使用したレビューが欲しいと思っていました。たくさんのアスリートに協力してもらっている中で、個人の生理に関する悩みや競技中の問題などの声もたくさん届きました。そういった経験は誰にでもあって、逆に悩んでない人はいない程でした。使用感についてのレビューだけではなく、こういった生の声も届けてほしい、というアスリートからの希望もありプロジェクトとして発信していくことにしました。特にこういった声は個人で発信しても届きづらく、私たちとしても積極的に発信していくべきだと。
—— アスリートの声から生まれたプロジェクトを学校との協業など、学生たちへ届けるプロジェクトにしたのはどうしてですか。
アスリートたちの声から誕生したプロジェクトですが、声を集める中で「学生のころからこのプロダクトがあったらどんなに良かったか」や「もっと早く自分の身体について知っていたかった」という声がたくさんありました。生理について自分の身体について、もっと早くから知っていれば、もっと今を快適に過ごせていたかもしれない、という強い思いが伝わってきました。まずは私の知人である学校の保健の先生にお話をして、直接性教育に入るよりプロダクトを通したほうが今の生徒達には伝えやすい、ということからスタートしました。
—— 具体的にはどのようなアプローチで伝えているのですか。
まずは、生理は恥ずかしいことではないと知っていてほしいと思っています。例えば、「おなか痛い」という症状は男女問わず共通なので、みんな分かり合うことができます。ただ生理は、たとえ女性同士であっても様々な症状があり、理解し合うのはとても難しいです。
このプロジェクトは、大きな枠組みで取り組んでいるので、選択肢はひとつじゃなくていいと思っています。アロマテラピーや漢方についてなど正しい情報を生徒たちに伝えて、その中から自分に合うものを選択してもらうことが重要なので、そこを意識して伝えています。
地道ですが、未来ある学生たちに正しい知識を届ける、自分の身体について理解してもらう活動はさらに広げていきたいと思っています。
—— 大手企業の参入などで吸水ショーツの注目度は高まっていますが、業界を取り巻く現状についてはどのように思われますか。
吸水ショーツは女性を助けるアイテムなので、いい方向に進めばいいなと思っていますし、各社にそれぞれのコンセプトがあることで、女性たちの選択肢が広がると思っています。ただ、吸水ショーツは魔法のアイテムではないということも合わせて伝えていく必要があります。吸水できても大量の水分を含んだショーツを長時間着用することは、使用者にとって不快であることに変わりはないのです。
HUG youの吸水ショーツでは、アスリートの運動レベルでも漏れやズレに強く、快適に使用して頂けることを目指しました。経血は一定に真下に落ちていくわけではないので、ナプキンなどを使用しているときも、横モレが気になってしまいます。HUG youの吸水ショーツでは、逆U字型構造を採用することで、太ももの内側までカバーすることができます。ヒップまでしっかりとカバーすることで、経血が漏れる不安を減らすことができ、安心感やストレス軽減にもつながります。もちろんショーツ自体に経血を多く吸わせることは可能ですが、経血を吸収してショーツが重くなることは女性にとってストレスにもなりますし、衛生的ではありません。HUG youでは、サポートパッドを着けることによってより快適に過ごしていただくことを目標としました。多くの女性の快適な生活に貢献できれば、と思っています。
自分を大切にするために持つ、かかりつけ婦人科医
—— 私たちのプロジェクト「かかりつけ婦人科医を持とう」という呼びかけをそのままプロジェクトタイトルにしています。山口さんはかかりつけ婦人科医についてどのようにお考えでしょうか。
私もかかりつけ婦人科医はいますし、皆さんにもかかりつけ婦人科医を持つことをお勧めしてます。しかし、学生たちは誰かに相談する前にとりあえず我慢を選び、婦人科にいく人が少ないように思います。生理痛で激しい痛みを感じるなど、我慢ができなくなってからようやく婦人科を受診するケースが多く、痛みを感じにくいPMSや生理の出血量が多いといった段階で診察に行くことは少ないようです。学生たちが自分自身の身体のサインに気づき、婦人科での診察に向かうことも重要ですが、私たち親世代も含めて婦人科への抵抗感はまだまだあり、払拭するための啓蒙活動も今後は必要だなと思っています。
※肩書等は取材時のものになります。