ポーズを決める横山剣、山田博文社長,山田翔平専務 談笑する横山剣、山田博文社長,山田翔平専務1 談笑する横山剣、山田博文社長,山田翔平専務2

1960~70年代の高度経済成長期に整備された道路や橋などのインフラ(社会基盤)の老朽化が深刻な社会問題となっている。そんな中、愛知県東海市に本社を置くヤマダインフラテクノスの取り組みが注目を集めている。橋の腐食予防や耐久性向上を目的とした塗装工事を独自の工法で手がけ、有害産業廃棄物の排出量を従来の40分の1まで抑えることに成功。土木事業の垣根を超えた人材確保やイメージアップにも力を入れる。合言葉は「ゴミを減らして世界を変える」。そうした志を共にする山田博文社長と山田翔平専務に、同社のアンバサダーに就任した「クレイジーケンバンド」の横山剣さんも加わって、日々の暮らしと直結する「インフラの未来」について話し合った。

横山剣

横山剣さんが 「熱く、ブレない志」に感銘、 アンバサダー就任!

ヤマダインフラテクノスは名古屋市出身のレーシングドライバー古賀琢麻選手をスポンサードしている。彼を通じて横山さんとの交流が始まった。山田社長も専務も音楽とクルマをこよなく愛す。その中で、老朽化するインフラに維持管理に黙々と取り組む二人と横山さんが意気投合。作業を支える職人たちの存在にも光を当てようとしているヤマダインフラテクノスの思いも通じて今回のアンバサダー就任につながった。

築50年以上の橋が4割も。 日本中に迫る更新期

「若いころ、道路工事のアルバイトをしたことがある」という横山さん。その時、作業員の熱心な働きぶりが記憶に残っていることもあって、鼎談は近年の日本のインフラ整備についての課題と現状報告から始まった。「道路や橋といったインフラの多くが1960~70年代に造られ、それらが今、更新期を迎えています」と山田社長が話す。「もちろん、老朽化が深刻になる前に補修や保全を行わなくてはなりません。ただ、近年は少子高齢化の影響もあって、作業員の人材確保が年々難しくなってきているのが実情です」と山田専務が言葉を継いだ。「事業をいかにサステナブルなものにしていくかが、私たちの業界の大きな課題になっています」という説明に横山さんも何度もうなずいた。

深刻化するインフラの老朽化

土木インフラの耐用年数は一般に50年間と言われている。そうしたインフラの中でも道路にかかる橋の老朽化対策は急務だ。国土交通省の推計によると、築50年以上となる橋は今年、全国で約4割、2030年には6割を超える見込みだからだ。全国で約70万か所ある橋のうち、5万か所以上は早期や緊急の補修が必要とされている。一方で作業にあたる人材の高齢化が進んでいることもあって、担い手不足が深刻化している。

老朽化が進み錆びた橋梁の一部の写真01 老朽化が進み錆びた橋梁の一部の写真02 老朽化が進み錆びた橋梁の一部の写真03
老朽化が進み錆びた橋梁の一部
山田博文社長

安全なドライブの足元に潜む、 「思いもよらない」実情

クルマ好きとしても知られる横山さんはそうしたインフラの実情を知り、少し驚いた様子。「プライベートでもドライブをよくするのですが、橋を走っていてもスムーズで、その足元で老朽化が進んでいるとは思いもよりませんでした」。スムーズに安全に走行できるという「当たり前」を、裏方で支えてくれているヤマダインフラテクノスの業務内容に話は自然と進んでいった。「先代が愛知で塗装業を始め、現在では橋梁を中心としたインフラの補修と保全に取り組んでいます。大げさかもしれませんが日本の橋を守り抜くことが我が社の使命だと思って、さまざまな挑戦を続けています」と山田社長が力強く応えた。「『橋を守り続ける』ことは自分にとっての志」と山田専務も言葉を続ける。その言葉を忘れないよう、スーツの上着の裏地に縫い付けているほどだ。

環境を守る“リサイクル工法”。 特許を取らずに公開

そんなヤマダインフラテクノスの「挑戦」の一つが「環境への配慮」だ。橋の補修・保全を目的とした塗り替え工事で、削減が難しいとされていた有害な産業廃棄物の排出量を従来の40分の1まで減らすことに成功した。山田社長が開発した「循環式ブラスト工法®︎」と呼ばれる方式により、それまで廃棄していた研磨材を飛散しないように工事現場を覆い、回収して再使用。「10年ほど試行錯誤を繰り返して、やっと実現にこぎ着けました」と山田社長。

そんなヤマダインフラテクノスの「挑戦」の一つが「環境への配慮」だ。橋の補修・保全を目的とした塗り替え工事で、削減が難しいとされていた有害な産業廃棄物の排出量を従来の40分の1まで減らすことに成功した。山田社長が開発した「循環式ブラスト工法®︎」と呼ばれる方式により、それまで廃棄していた研磨材を飛散しないように工事現場を覆い、回収して再使用。「10年ほど試行錯誤を繰り返して、やっと実現にこぎ着けました」と山田社長。しかも、その独自技術を、特許を取らずに公開した。「自分たちの会社だけが儲かればいいというのでは、企業としての社会貢献を十分に果たすことはできません。私たちはこの工法を業界に広め、ゴミを減らすことで世界を変えていきたいと本気で思っているんです」。横山さんもその話を聞いて、感心した様子。

豊田大橋(愛知県) 国道8号線米山大橋(新潟県) 名港西大橋(愛知県) 開運橋(岩手県)
ヤマダインフラテクノスが手掛けてきた橋梁

しかも、その独自技術を、特許を取らずに公開した。「自分たちの会社だけが儲かればいいというのでは、企業としての社会貢献を十分に果たすことはできません。私たちはこの工法を業界に広め、ゴミを減らすことで世界を変えていきたいと本気で思っているんです」。横山さんもその話を聞いて、感心した様子。

循環式ブラスト工法®︎ とは…

ブラスト工法とは、粒子状の研削材を老朽化の進んだ橋に吹きかけ、サビを落としたり、塗料を塗りやすくしたりする加工方法。従来、砂や高炉スラグなどの安価な非金属系の研削材を使っていたが、それらが大量の産業廃棄物になることから、小さな金属の球を研削材として使い、それらをリサイクル。山田社長が1997年にそのための装置を考案、開発し、2010年に「循環式ブラスト工法®︎」として国土交通省の新技術提供システムに登録している。

循環式ブラスト装置 研削材を循環再利用できる循環式ブラスト装置
循環式ブラスト装置の比較表

「安心できる地球を、 未来の子どもたちに残したい」

「『次世代に環境問題のツケは残さない』という思いを、私を含め、スタッフ全員が共有しています」と山田専務が社長の話を受けた。先に紹介したブラスト工法と、鋼材の疲労強度を向上させるショットピーニングという工法を同時期に行える「エコクリーンハイブリッド工法」も新たに開発し、文部科学大臣表彰を受けている。しかし、どうしてこうした革新的な技術を次から次へと開発できるのか? 「できそうもないと思考停止をするのではなく、よりよいサービスを提供することが経営者の使命だと思って可能性を探り続けてきたからです」と山田社長。「その原動力となっているのが、未来の子どもたちが安心して生活できる地球環境を残さなければという親としての素朴な思いなんです」

ショットピーニング とは…

刀鍛冶が金属を大槌でたたいて鍛えるように、直径0.8~1ミリの無数の金属の球を、橋などの鋼材に当て、その疲労強度を高めること。ヤマダインフラテクノスでは、ブラストによる腐食予防とピーニングによる疲労亀裂予防を同時にできる「エコクリーンハイブリッド工法」を独自に生み出した。工事用の足場を併用でき、ピーニングに使った金属球も回収して再利用ができるため、環境に配慮した工法として高く評価されている。

ショットピーニング画像1 ショットピーニング画像2
無数のピーニング用特殊鋼球を高速で叩きつけ疲労強度を高めている
山田翔平専務

人材確保と地位向上へ、 「ウシワカプロジェクト」始動

もっとも、実際の工事を行う作業員の高齢化が進み、若手を中心に人材不足は深刻化している。「きつそう」「つらそう」「汚そう」という、この業界独特のネガティブなイメージもつきまとう。そうした課題に土木インフラに関わる企業全体で取り組もうと、山田専務も新しいプロジェクトを21年3月に発足させた。「ウシワカプロジェクト」と題して、これまでに仕事を紹介するドキュメンタリー番組を制作したり、一般向けに様々な啓発活動を行ったりしている。「活動の目的は人材確保だけでなく、業界全体の地位向上を図ること。橋を守るために黙々と働いている職人の仕事ぶりを知ってもらい、リスペクトしていただけるようにPRに力を入れてきました」。さらにヤマダインフラテクノスでは今、山田専務が中心となってベトナムに学校を設け、未来の技術者を育成する計画も進めている。

「横山さんも現在の地位を築くまでには、人知れず汗を流してきたはず。それがかっこいいです。その意味で、現場で汗を流して働く職人だってかっこいい」と山田社長。それを多くの人に知ってもらいたいと思いながら仕事に取り組んでいるという。「私自身、幼い時か

ら、父を含め、どんな時も逃げ出さず仕事に取り組む職人たちの姿を身近に見てきました。だから、私も逃げない。お客様に対して誠心誠意向き合い、命をかけるつもりです」と山田専務も話す。二人の「志」はあくまでも熱く、ブレることがない。

「横山さんも現在の地位を築くまでには、人知れず汗を流してきたはず。それがかっこいいです。その意味で、現場で汗を流して働く職人だってかっこいい」と山田社長。それを多くの人に知ってもらいたいと思いながら仕事に取り組んでいるという。「私自身、幼い時から、父を含め、どんな時も逃げ出さず仕事に取り組む職人たちの姿を身近に見てきました。だから、私も逃げない。お客様に対して誠心誠意向き合い、命をかけるつもりです」と山田専務も話す。二人の「志」はあくまでも熱く、ブレることがない。

現場の職人たちの写真1 現場の職人たちの写真2 現場の職人たちの写真3 現場の職人たちの写真4

日本の根底を黙々と守りつつ、 未来への「挑戦」は続く

音楽と橋梁の塗装工事――。ジャンルはまったく違っているが、人の日常に深く関わり、物事に真摯に取り組もうとする姿勢が似ているようで、横山さんも山田親子の熱意に自らの思いを重ねる。「今日はお二人からエネルギーをたくさんいただきました。生涯現役で活動を続けていこうという気持ちになりました」と横山さん。「世の中の『当たり前』を、橋を中心としたインフラ整備を通して、声高にではなく黙々と守ってくれているのがかっこいいじゃないですか。そんなヤマダインフラテクノスの取り組みを、様々な場面で紹介することができたらと思っています」。同社と横山さんのパフォーマンスがこれからどのような化学変化を引き起こすのか。豊かな日本の根底をインフラ整備によって支えるヤマダインフラテクノスの「挑戦」から、これからも目を離せなくなりそうだ。

横山剣、山田博文社長,山田翔平専務のイイネポーズ

横山剣

クレイジーケンバンド・リーダー/作曲・編曲・作詞・Keyboards・Vocal。1997年春、地元本牧にてクレイジーケンバンドを結成、翌98年アルバム『PUNCH! PUNCH! PUNCH!』でデビュー。2005年に『タイガー&ドラゴン』が同名ドラマの主題歌として大ヒットした。数多くのアーティストとのコラボ、楽曲提供も行う。9月には23枚目の最新アルバム『世界』をリリース。23年クレイジーケンバンドはデビュー25周年のアニヴァーサリーイヤー。

ヤマダインフラテクノス

ヤマダインフラテクスロゴ

現社長の父親、山田外吉氏が「山田ペンキ」を1953年に創業、主に造船の塗装を手がけていた。75年から、高度な防食性を求められる原子炉塗装へ参入。97年には山田博文氏が社長に就任し、建築や橋梁部門も手がけるようになった。2015年に社名を「ヤマダインフラテクノス」に変更。次男の翔平氏は13年に同社に入社し、20年、専務に就任。現在、東北から関西まで全国に8支社を構え、従業員計約120人が日本のインフラ整備に取り組む。