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よみうり女性と健康プロジェクト よみうり女性と健康プロジェクト

生涯を支える医療で
女性がより輝ける社会へ

10月18日~24日は“メノポーズ週間”です

 10月18日が「世界メノポーズ(閉経)デー」であることにちなみ、女性の医療に関わる6人の専門家による座談会が行われました。女性が更年期に生じやすい心身の様々な変化とうまく付き合い、さらなる活躍を遂げるために、医療従事者や女性自身が取り組むべきこととは―。それぞれの立場から多彩な意見が交わされました。

女性の一生を見据えたサポートを

理事長あいさつ

「メノポーズ週間」
10年目に寄せて

一般社団法人
日本女性医学学会 理事長
水沼 英樹 先生

平成11年に開催された第9回国際閉経学会において、毎年10月18日が「世界メノポーズデー」と定められました。女性の健康に大きな影響を及ぼすことが明らかになった閉経や更年期に関する正しい情報を、社会に発信して共有するためです。平成18年からは、10月18日からの1週間を「メノポーズ週間」とし、各国では様々な活動が行われています。今年はその「メノポーズ週間」が制定されてから10年目という節目の年です。
 「日本更年期医学会」は平成23年、「女性の健康支援は一生を通じて行う必要がある」という考えから「日本女性医学学会」へと名称を変更しました。私たちは女性特有の疾患に悩む方々を支える活動に取り組むとともに、超高齢社会において女性がいつまでも健やかに生活を送れるようなサポート体制を整えるべく、今後も尽力していきます。

女性医学の発展を通じて 日本社会に貢献したい

産婦人科

福島県立医科大学
ふくしま子ども・女性医療支援センター センター長
日本女性医学学会理事長
水沼 英樹 先生

心と体をトータルに支える “コンシェルジュ”を目指して

産婦人科

もちづき女性クリニック院長
獨協医科大学 特任教授
望月 善子 先生

望月:
日本では「女性活躍推進法」が制定され、社会全体で女性の活躍を盛り上げる動きが広がっています。その活躍の前提となるのは健康です。更年期にとどまらず、生涯にわたる女性の健康支援について、いかがお考えでしょうか。
秋吉:
私は管理栄養士として、若いうちからの栄養教育が必要だと考えています。多彩な器官の健康維持には「エストロゲン」という女性ホルモンが役立っているのですが、20、30代の過剰なダイエットはエストロゲンの低下を招きかねません。さらに、更年期以降はエストロゲンが急激に減少し、やがて分泌が止まってしまいます。若いうちから正確な知識を学んで適切な生活習慣を身に付け、将来に備えておくことが欠かせないのです。思春期の保健教育と健康・栄養教育が一体となって実施できれば、より効果的な教育が実現できるのではないでしょうか。
須賀:
予防医学の観点から、女性の皆さんには、更年期に関する情報を自ら得て、健康づくりに活かす力「更年期リテラシー」を高めていただきたいと思います。一般女性に対するアンケート調査の結果、更年期障害がどのようなものかは理解されていますが、日常生活に支障を来すほどの症状を抱えていても、4人に1人程度しか病院を受診していないことが分かりました。若い頃から気軽に相談できるかかりつけ医を持つことで、正しい知識と情報を持って対処できるようになると思います。
村島:
更年期に起こるトラブルの1つは、不定愁訴を招きやすい甲状腺機能異常です。中高年女性の約1割が、甲状腺関連の病気にかかっているといわれています。全身の乾燥状態や倦怠感、関節痛などが生じる場合は、シェーグレン症候群である可能性も。更年期に関節症状を訴える人は多く、症状が急に出て驚かれる人もいます。ほとんどは一時的なものですが、リウマチや変形性関節症のケースも見られます。一般的な内科医はいまだ更年期障害に関する知識が十分だとはいえないので、この分野についてもっと勉強していくことが必要だと思います。
土井:
いまは日本人女性の約11人に1人が乳がんになる時代。食生活の変化などの影響で、最も発生することが多い悪性腫瘍となりました。罹患率で考えると、45~50歳にピークがあり、更年期世代に多いです。乳がんを減らすためには、若いうちから検診を受けることをおすすめします。また、低下した女性ホルモンを補充する「ホルモン補充療法(HRT)」と乳がんの関連性についての偏った情報により、HRTを敬遠している人が少なくありません。しかしながら、HRTをすることによって必ず定期的に乳がん検診を行いますので、むしろ早期発見、早期治療につながります。
ホルモン補充療法(HRT)

 更年期障害の原因の一つとして、急激なエストロゲンの減少があります。減少したエストロゲンを補充するホルモン補充療法(HRT=Hormone Replacement Therapy)は、ホットフラッシュや発汗、動悸など血管運動神経症状の改善、イライラや睡眠障害といった精神神経症状の改善、閉経後骨粗しょう症の改善などに効果があります。お薬は錠剤、貼付剤、塗布剤の3タイプです。子宮を有する場合には、黄体ホルモンを一緒に投与します。

かかりつけ医に相談し 更年期リテラシーを高めて

予防医学

東京慈恵会医科大学 環境保健医学講座 准教授
須賀 万智 先生

45~50歳は 乳がん罹患率のピーク 検診で早期の発見へ

乳腺外科

湘南記念病院 かまくら乳がんセンター センター長
土井 卓子 先生

水沼:
閉経後の女性に特有な疾患のベースにあるのが、それまでの疾患や生活習慣。無月経は骨粗しょう症につながりますし、妊娠高血圧症候群は将来的に高血圧症が発症する可能性を高めます。つまり、若い時からそうしたリスクに注意を払い、それらが疾患として発症しないように生活習慣を改善していくことが重要なのです。月経異常や月経痛、妊娠や不妊症など、婦人科は受診する機会が多いため、ぜひ気軽に相談ができる主治医を見つけていただきたいですね。
望月:
女性特有の疾患のみならず、日常よく見られる体調の変化に柔軟に対応し、ライフステージに応じた健康チェック・健康教育を行うことが大切ということで、女性の心と体をトータルで支えられるコンシェルジュのような医師が増えることを期待したいですね。
 さて、更年期女性の食事については、どのようなアドバイスをされていますか?
秋吉:
特に気を付けてほしいのは、脂質異常症と骨粗しょう症。これらを予防するため、〝一汁三菜〟のような、日本の伝統的な食事をおすすめしています。具体的には「主食を中心とした食事」で、「肉・魚・大豆を偏らないように摂る」「野菜をたっぷり摂る」といった当たり前の食事を、誰かと「美味しいね」と話しながら食べることです。
望月:
大豆といえば、エストロゲンとよく似た働きを持つ「エクオール」が注目されていますね。大豆イソフラボンに含まれるダイゼインが、腸内細菌によって代謝されることで作られるのがエクオールですが、その腸内細菌を持っている日本人女性は約半分に過ぎませんから、サプリメントを活用するのもよいかもしれません。
エクオール

※体内にエクオールのある人=エクオール産生者。体内のエクオールレベルは、尿中のエクオール排泄量で測定。(福岡県栄養士会 更年期・閉経後女性46名のデータより)
出典:内山成人:COSMETIC STAGE.,10(1): 59-66,2015

 大豆イソフラボンから腸内細菌によって作られるエクオールは女性ホルモンに似た働き(エストロゲン様作用)をする成分です。エクオールが作れる人は、作れない人に比べて更年期症状が強く出るリスクが100分の7というデータが得られています。ただ、このエクオールを作れる日本人女性は約50%で、20代女性に至っては約20%となります。更年期症状を和らげるだけでなく、肌への効果も期待されます。エクオールを作れない人や更年期のセルフケアを考えている人は、エクオールのサプリメントを活用するのもよいでしょう。

領域越えた医療従事者の連携が課題

様々な診療科を巻き込む 女性医学の広がりに期待

内 科

国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター
主任副センター長
妊娠と薬情報センター センター長
村島 温子 先生

安易な食事制限は危険 まず専門家に相談を

栄養指導

文教大学健康栄養学部 准教授
東京医科歯科大学周産・女性診療科
管理栄養士
秋吉 美穂子 先生

土井:
現在、乳がんに罹患した女性の6割は、女性ホルモンを抑える治療を受けており、ホットフラッシュや関節痛など更年期様症状が出現して悩んでいらっしゃいます。これは乳がんの治療効果が上がっているしるしでもあるのですが、乳腺外科医もこれらの悩みに対して適切なセルフケアを指導し、患者さんがきちんと乳がん治療を続けられるようサポートすることが必要です。
水沼:
更年期は乳がん世代と重なりますから、HRTに詳しい産婦人科医と乳腺外科医がタッグを組むのは望ましいことです。日本女性医学学会では現在、女性のヘルスケアに対してより幅広く対応できる医師を養成すべく様々な取り組みを行っています。
須賀:
女性の健康の問題は、月経や妊娠・出産に関することから、更年期、そして老年期へと、年齢とともに変わっていきます。それに対して医療は、各種の学会や診療科が縦割りになっていることもあり、女性の人生全体をサポートすることが十分にできていないのが現状です。今後は女性医学の観点から、中高生への教育も含めて、生涯を通じたケアを提供していくことが求められると思います。
村島:
診療科ごとの縦割りの問題は非常に大きいですね。内科医にしても、女性医学に接する機会はまだほとんどありません。今後は日本女性医学学会から様々な診療科の先生との連携を図るなど、よりオープンな取り組みを行っていくべきなのではないでしょうか。
水沼:
そうですね。例えば、HRTには更年期症状の改善だけでなく、閉経後骨粗しょう症や脂質異常症などの改善効果が期待できますから、服用する薬剤の種類を減らすことも可能です。そうしたメリットを有効に活用するためにも、領域を超えた連携が欠かせません。日本女性医学学会としては今後も様々な領域の専門家との連携を図りながら、女性の一生にわたるヘルスケアを応援できる体制をさらに強化していきたいと思います。
望月:
女性の皆さんには、専門家による適切な治療と正しい知識に基づいたセルフケアで、人生をより健やかで豊かなものにしてほしいと願います。

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