日体大総合研究所 所長
日本体育大学 特別招聘教授
日本転倒予防学会 理事長
武藤 芳照氏
早く始めて長く続けたい
転倒予防
今回のテーマは「転倒予防」です。年齢を重ねた女性が転倒事故を起こしやすい理由や、転倒予防に有効な日々の対策などについて、日体大総合研究所所長の武藤芳照氏に聞きました。
「骨折・転倒」で要介護状態に
人間は3つの理由により、年をとるに連れて転びやすくなっていきます。1つ目は運動機能や感覚機能などの衰え。2つ目はそれらを促す重い病気にかかりがちになることです。そして、3つ目が最も大きな影響を与える運動不足。日常的にしっかり体を動かしていないと、転倒のリスクが高まります。
女性は男性に比べてもともと運動能力が劣るうえ、閉経によって骨量を維持する女性ホルモンの分泌が減少し、骨粗しょう症などになっていることが多いため、転倒して骨折するケースが目立ちます。実は、「骨折・転倒」は女性が要介護になる原因として「認知症」に次ぐ第2位。頭部を打つなどして死亡する「転倒・転落死」も増加しており、いまやその数は「交通事故死」より多いのです※。
※ 厚生労働省 平成27年人口動態統計より
転びにくい体と環境を
体に異常をきたしている時に起こりやすい転倒は“命の黄信号”。逆に考えれば「万全の健康状態なら、転倒を予防できる」とも言えるわけなので、生活習慣を見直して栄養バランスの良い食事と適度な運動を心がけましょう。もしもの場合の骨折を防ぐために、カルシウムやその吸収を促進するビタミンDを摂って骨を強化しておくことも大切。ビタミンDは日光を浴びることでもつくられます。これらの対策は、できるだけ早く始めて長く続けることが肝心です。
外的な要因として「濡れた場所」、「階段や段差」、「片づけられていない部屋」は特に転びやすいので注意が必要。それぞれの頭文字などを合わせて「ぬかづけ」と覚えてください。
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