早稲田大学の教育・研究・文化を発信 WASEDA ONLINE

RSS

読売新聞オンライン

ホーム > オピニオン > 文化・教育

オピニオン

▼文化・教育

田中 博之(たなか・ひろゆき)/早稲田大学教職大学院教授  略歴はこちらから

ドローン・プログラミング教育のすすめ

~小学生の協働的課題解決力をどう育てるか?~

田中 博之/早稲田大学教職大学院教授
2020.01.14

 2019年は、これまでコンピュータやインターネットの教育利用法を研究テーマにしてきた筆者にとって、特別な年になった。なぜなら、ドローンを用いた小学生向けの先進的なプログラミング教育を実施するよい機会に恵まれたからである。それは、本学早稲田アリーナの地下1階にある多目的運動場で行われた小学生向けのプログラミング教室であった(ドローン・プログラミング教育研究所代表田中博之主催、キッズ向けプログラミング教室STEMONを運営するヴィリング代表中村一彰氏による指導協力、2019年8月28日実施)。

 この事例を紹介しながら、ドローン・プログラミング教育の意義と可能性について解説してみることにしたい。

小学校でのプログラミング教育とは

 2020年度から新しく実施される小学校学習指導要領のもと、まもなく小学校でのプログラミング教育が必須となる。

 文部科学省が平成30年11月に取りまとめた『小学校プログラミング教育の手引き(第二版)』を参考にすると、これからの小学校でのプログラミング教育のねらいは、コンピュータやインターネットなどに関わる情報通信技術が、第4次産業革命の中でどのように有効利用できるかを考えるとともに、子どもたちにプログラミング的思考を育てることにあるといえる。 

 かつて中学校や高等学校で行われていた、BASICやFORTRANを用いたプログラミング言語教育とは異なり、技術者養成を目的とするのではなく、どの子にも21世紀社会で必要なプログラミング的思考を育てるとともに、情報通信技術を用いてコンピュータ上のソフトウェアやロボットなどを操作することのよさや価値を実感させる新しい教育である。

 では、プログラミング教育のねらいの中核をなす「プログラミング的思考」とは何だろうか。それは、前出の「手引き」によれば、次のように定義されている。

 自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力
(同、p.13)

 具体的には、小学生にも使いやすいインターフェースをもつプログラミング言語(Scratchなどが代表的なソフトウェア)を用いて、自分の意図の実現のためにコンピュータ画面上のオブジェクトやロボットなどの操作方法を、論理的かつ試行錯誤的にグループで協働的に思考していくことが、小学生のためのプログラミング教育に求められているといえるだろう。

なぜ、今ドローンなのか?

 ではなぜ、私がドローンという新しいテクノロジーにこれからの教育の可能性を感じているかといえば、それはドローンが、①簡易さ、②楽しさ、③社会とのつながりという3拍子そろった素晴らしい教材だからである。

 これまでのプログラミング教育で使われていた教材は、学校では買えないほど高価なロボットであったり、コンピュータ画面上を小さく動くキャラクターであったり、学習意欲がわきにくい無機質な図形が描かれるものがほとんどであった。

 もちろん、ドローンが軍事利用されている事実もあることから、ドローンの教育利用にあっては平和的な利用の大切さを学ばせることが欠かせない。そういう配慮のもとであれば、1台が1万円程度のトイ・ドローンを8台程度用意するだけで、ドローン利用の社会的価値(災害地の撮影、過疎地での配達・輸送、商業的な映像撮影など)を実感させるとともに、ドローンを用いたプログラミング的思考を楽しく身につけることができるのである。

 子どもたちにとっては、ドローンが空中に浮くことの楽しさを感じられるだけでなく、空中を自由自在に飛び回るドローンの動きをタブレットで簡単にプログラミングできるおもしろさがある。授業では、総合的な学習の時間で2時間程度とれば、小学校5年生や6年生ですぐに実施できる簡便さも大切なことであろう。学校にあるタブレットをグループに一台ずつ配れば、WiFiで簡単に接続できる。

 そして、ただドローンを飛ばして楽しむだけでなく、カラーコーンの周りを一周して帰ってくるとか、フラフープを置いてその中に着地するようにするといった課題をクリアするために、メジャーで距離を測ったり飛行高度を考えたりといった、ゲーム感覚で楽しい創造的な課題解決活動を体験することができる。

冒頭でSTEMON代表の中村一彰氏より、ドローンが未来社会でどのように使われていくか、そしてどのようにしてプログラミングするかを学ぶ

トイ・ドローンとタブレットをWiFiでつなぎ、DroneBlocksというソフトウェアを使ってプログラミングをする

ドローン・プログラミング教育のねらいと特徴

 教育的な観点からみてみると、ドローン・プログラミング教育のねらいと特徴は、次の7点にあるだろう。テクノロジーの活用技術だけでなく、人との関わりの中で、協働的に課題を解決する力や創意工夫を通して創造する力などが大切にされている新しい教育手法なのである。

  1. 新しいテクノロジーが、どのように未来社会を平和的に創造していくかを具体的に実感させる
  2. プログラミングにおいて、グループでの協働的な試行錯誤が大切であることを実感させる
  3. グループでの協働的な課題解決力を、プログラミングの過程で身につけるようにする
  4. ブロック型・ビジュアル型のソフトウェアを用いたプログラミング的思考に慣れ親しむようにする
  5. ドローンの動きを多面的・多角的にデザインし、意図通りの動きを定義することができるようにする
  6. ドローンの動きを、要素的な動作を組み合わせながら創造的に作り出すことができるようにする
  7. ドローンが社会の中でどのように有効活用されているかに関心を持ち、そうした未来社会の実現に積極的に関わろうとする態度を育てる

 ドローン・プログラミング教育は、明日にでも始められる。すでに、小学生でも操作できるトイ・ドローンがインターネットで通信販売されている。

 子どもたちがプログラミング的思考を身につけながら、楽しくわくわくする思いを感じて、友だちと協力して創造的な動きを生み出していく、そうしたドローン・プログラミング教育が普及していくことを願っている。

グループで友だちと協力して、プログラムの構想を練ったり、修正したりしている

試行錯誤をしながら、やっと飛び回るようになったドローンを見つめる子どもたち

参考ウェブサイト

ドローン・プログラミング教育研究所(代表 田中博之)
https://dronelearning.org/

田中 博之(たなか・ひろゆき)/早稲田大学教職大学院教授

1960年北九州市生まれ。大阪大学人間科学部卒業後、大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程在学中に大阪大学人間科学部助手となり、その後大阪教育大学専任講師、助教授、教授を経て、2009年4月より現職。1996年及び2005年に文部科学省長期在外研究員制度によりロンドン大学キングズカレッジ教育研究センター客員研究員。

【主要著書】
田中博之編著『ヒューマンネットワークを開く情報教育』高陵社書店、2000年
田中博之編著『共同交流型カリキュラムを創る』明治図書出版、2001年
田中博之編著『ケータイ社会と子どもの未来ーネット安全教育の理論と実践ー』メディアイランド、2009年
田中博之著『アクティブ・ラーニング実践の手引き』教育開発研究所、2016年
田中博之著『新全国学テ正答率アップの法則』学芸みらい社、2019年