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高木 秀雄(たかぎ・ひでお)/早稲田大学教育・総合科学学術院教授  略歴はこちらから

ジオパークの持続的発展に向けて

高木 秀雄/早稲田大学教育・総合科学学術院教授
2019.6.10

1.ジオパークとその目的

 ジオパークは2004年にヨーロッパや中国で始まった活動で、地質や地形(ジオ)の見所を巡り、その成り立ちなどのストーリーを楽しむことができる「大地の公園」である。2015年にはユネスコの正式プログラムとなり、ユネスコ世界ジオパークネットワーク(UGGN)のメンバーは38カ国140地域(2018年4月時点)となっている。ただし、ジオの要素だけではなく、ジオと生態(エコ)、さらにはジオと文化や歴史、産業とのつながりも学べることが重要である。その活動は、ジオの遺産の保護・保全、教育への利活用、さらにはジオツーリズムを通じた地域の活性化を目的としている。

 国内におけるジオパーク活動は、2008年に日本ジオパークネットワーク(JGN)が設立されてから今年で11年目を迎えている。これまでに国内版ジオパーク(JGNメンバー)は44地域を数え、そのうちユネスコ世界ジオパーク認定地域は9地域にのぼる(詳しくはJGNのホームページを参照されたい)。国内のジオパークがわずか10年で全都道府県に近い数に増えたのは、2つの理由が考えられる。その一つは、日本列島はジオの多様性(geodiversity)があり、44地域それぞれに特徴的なジオの見どころを有する。ジオの多様性は、生物や環境、文化や歴史の多様性とも深く関連する。もう一つの背景として、国内の少子高齢化に伴う地方の過疎化が一気に進んでいることが挙げられる。ジオパークの運営の担い手である自治体にとって、地域の活性化は喫緊の課題である。ジオパークの目的は地域の持続的発展であるが、それは経済効果も重要であるが、むしろ地域住民の誇りや郷土愛の醸成、子供たちや住民への教育、特に地域学、郷土史、野外体験などを学ぶ機会の増加に結びつくことが重要である。

2.ジオツーリズム

地震隆起の証拠を探るジオツアー(室戸ジオパークにて)写真提供:室戸ジオパーク推進協議会

 ジオパークでは、国立公園や世界遺産と異なり、エリア全体が見所ではなく、見所を設定し、それをつなぐジオツーリズムの設定が重要となる。地質や地形が重要な見所はジオサイトと呼ばれ、そのほか生態が重要なエコサイト、文化や歴史が重要なカルチュラルサイト、ヒストリカルサイト、なども盛り込むことにより、訪問客の様々なニーズに応え、充実したジオツーリズムを設計することが可能となる。ガイド付きジオツーリズムコースを設定する場合、一つのジオパーク内でも多様なサイトが存在することから、テーマごとにジオツーリズムコースを設定し、ジオサイトに加えてその他のサイト(またはジオ以外の要素)をうまく配合することが重要であろう。そのコースに地元の食材を生かした料理を盛り込むことも望まれる。コースを設定する際には、外国人も含めたモニターツアーやガイド養成ツアーも重要な活動である。すでにこのような試みは多くのジオパークでなされているが、もしテーマを意識したジオツーリズムや質の高いガイド養成がきちんとなされていない場合は、4年に1回の再認定審査で厳しい評価を得ることになろう。 

3.ジオパークの持続的発展に向けて

図 ジオパーク活動で重要な、人のネットワークづくり(例)

 ジオパークは、地質や地形で重要な見所であるジオサイトの質と量の確保が前提として必要であるが、さらに重要なのはジオパークの活動の基盤をなす「保護・保全」と「教育活動」、さらにジオツーリズムで欠かすことができない「ガイド養成」と、ジオパークを運営する上で鍵となる「専門員」の配置、が挙げられる。ジオパークは「場所」よりも「人」が重要、と言われる所以である。事業計画、予算計画を立てるために国内では運営母体が自治体である場合が 大部分であるが、自治体はともすると縦割り行政に陥りがちであり、人事異動も頻繁である点が課題として残されている。ボトムアップの活動であるジオパークにとって重要なことは、地域における人のネットワークを構築することであり、そのネットワークを自治体が継続的に支える仕組みができていれば、ジオパークの持続的発展につながるにちがいない。

高木 秀雄(たかぎ・ひでお)/早稲田大学教育・総合科学学術院教授

名古屋大学理学研究科地球科学専攻博士前期課程卒、理学博士(名古屋大学)。日本地質学会ジオパーク支援委員会委員。専門は構造地質学。著書に『三陸にジオパークを―未来のいのちを守るために』2012年、『年代で見る日本の地質と地形』2016年、共著として『地球・環境・資源―地球と人類の共生をめざして』2008年(第2版:2019年)等がある。