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小林 学(こばやし・まなぶ)/早稲田大学データ科学センター教授  略歴はこちらから

早稲田大学における全学データサイエンス教育の展開

小林 学(こばやし・まなぶ)/早稲田大学データ科学センター教授
2022.11.21

 近年AIやIoT、ビッグデータ、DXと言った言葉が広く使われており、企業においてデータサイエンス・AIの様々な導入事例が注目を集めている。また政府の統合イノベーション戦略推進会議において「AI戦略2022」が策定されている。大学及び高等専門学校の教育分野においては文部科学省が2021年に「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」を開始しており,データサイエンス教育の重要性は増え続けている。より具体的には、この「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」には2021年に認定が開始された「リテラシーレベル」及び「リテラシーレベル プラス」と、また2022年に開始された「応用基礎レベル」及び「応用基礎レベル プラス」の4種類がある。早稲田大学ではデータ科学センター(以下DSセンター)が提供する全学データサイエンス教育の一部正規科目群に対して、2021年に上記認定制度の「リテラシーレベル」に選定され、さらに2022年に「応用基礎レベル」並びに「応用基礎レベル プラス」に選定された。特に、認定開始年である2022年に"大学等単位"として「応用基礎レベル プラス」に選定された大学は6校(北海道大学,東北大学,電気通信大学,九州大学,早稲田大学,久留米工業大学)のみである

 このようにデータサイエンス教育が注目を集めているが、早稲田大学では学部や研究科を問わず誰でも、いつからでも、学生それぞれの学ぶ目的や興味に応じて自由にデータサイエンスを学ぶことができる教育プログラムの提供を行なっている。ここでDSセンターが提供している教育プログラムには(1)正規授業科目、(2)社会人講座、(3)教育的インターンシップ、(4)データサイエンスコンペティション、(5)セミナー・ワークショップ、(6)大学院生用自学自習コンテンツ、など様々なものがある。以下では(1)〜(4)について紹介する。

 正規授業のカリキュラムはA群からD群までの4つの科目群に分かれており、それぞれの科目群の目的と科目例を図1に示す。データサイエンスを初めて学ぶ学生はまずA群から学ぶことを推奨しており、その後C群、D群へと進む。B群は基礎科目群であるが、他の科目群の前提とはせず、より深く学びたい学生を対象としている。より詳しくはDSセンターのHPを参照されたい。

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図1 データサイエンスを学ぶ4つの科目群

早稲田大学データ科学認定制度

 さて、早稲田大学ではデータサイエンスの学びに対する明確な目標を提示するために、独自のデータ科学認定制度(以下早稲田DS認定制度と略す)を設置している。早稲田DS認定制度では履修者のデータサイエンスに関する能力を保証するために4つの級を設置し、級毎に到達目標を明示することで、各学生の興味関心に合わせたデータサイエンスの学習機会を提供する。各級の定める要件を満たした学生に対して証明書を発行している。この認定制度における4つの級とそれぞれの到達目標並びに取得条件を図2に示す。

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図2 早稲田大学独自のデータ科学認定制度における4つの級

早稲田大学データサイエンス社会人講座

 さて、早稲田大学では社会人教育事業としてこの教育カリキュラムを社会人向けに再編成し、さらに新規内容を追加したデータサイエンス実践講座を2022年秋から提供している。この社会人講座ではデータサイエンスの「理論」とビジネス領域で活用できる「スキル」を同時に学ぶことにより、データサイエンスの実践的な活用能力を身につけることを目的としている。なお修了者には学校教育法に基づく「履修証明書」を授与する。

インターンシップとデータサイエンスコンペティション

 一方企業と大学双方にとって連携のメリットの大きい取り組みのひとつがインターンシッププログラムの展開である。企業におけるデータサイエンス活用の現場に学生を派遣することで、学生のモチベーション及びデータサイエンス活用能力の向上や将来のキャリアプラン形成に役立つ。企業からすると通常学生からは見えにくい社内の具体的なビジネスや技術等を紹介する機会となり、企業イメージの向上につなげることができる。早稲田大学では「キャリアセンターIS連携プログラム『データサイエンスコース』」として、派遣先企業の募集、学生の募集、保険契約等の各種手続き、実施前後のフォローアップ、など統一的に実施できる仕組みを作ることで、安定的に学生を企業に派遣する体制を構築している。

 最後に、早稲田大学で2019年度から毎年開催しているデータサイエンスコンペティションについて述べる。学生は提示された大枠のテーマと与えられた実データ(場合によってはオープンデータを自身で取得する)に対して、チームで分析の目的や問題設定を行い、分析や提案を行い、当初の目的をどの程度達成できたかの評価を行ない、最終的にプレゼンテーションを行う。学生はチームでコンペ開始から最終プレゼンまで約4ヶ月間データ分析に取り組む。早稲田大学の教員並びに企業におけるデータサイエンスの専門家が審査員となり、分析の新規性や有効性、プレゼン等の評価を行い、学生へのフィードバックを行なっている。第4回となる2022年度はみずほ銀行の統計データ販売サービス「Mizuho Insight Portal(呼称 Mi-Pot/ミーポット)」のデータを用い、43チーム146人が参加している。

 以上のようにDSセンターでは様々なデータサイエンス教育を展開しているが、その対象はデータサイエンスを学びたい早稲田大学の学生のほか、社会人にも及ぶ。またインターンシップやコンペティションは様々な企業にご協力をいただいて、初めて成り立っている。少子高齢化が進み労働人口が減少していくなか、産学が連携し高度な人材を育成することは重要な課題である。なかでもデータサイエンス分野は人材が多く必要とされているだけでなく、分野として産学の垣根が比較的低く、連携がしやすい領域でもある。今後も各企業と協力しながら様々な人材育成の取り組みを実践していく予定である。

小林 学(こばやし・まなぶ)/早稲田大学データ科学センター教授

1994年早稲田大学・理工・工業経営学科卒。
2000年同大学院機械工学専攻経営システム工学専門分野博士後期課程了。博士(工学)。
1998年早稲田大学理工学部助手、2002年湘南工科大学情報工学科講師、2008年同大学准教授、2014年同大学教授を経て2018年より早稲田大学データ科学センター教授。

主に統計的学習理論、情報理論、協調フィルタリングに関する研究に従事。電子情報通信学会、情報処理学会、日本経営工学会、IEEE各会員。

著書として「データ科学入門I」(サイエンス社)、「入門パターン認識と機械学習」(コロナ社)などがある。