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教育

▼スタディ・アブロード―早稲田から世界へ―

From Waseda to Holland

大平 匡徹/法学部卒(2008年)

 私の留学したライデン大学は、オランダは南西部に位置し商業の中心地アムステルダムと政治・司法の中心地ハーグとに挟まれたライデン市にある。オランダでは最も古い大学で、その創立は1575年にまでさかのぼる。

世界各地から集まる著名な教授陣

 ライデン大学は伝統的に国際法に強いことで有名だ。かつて「国際法の父」グロティウスが教鞭をとり、長年にわたって国際司法に携わる研究者や実務家を数多く育ててきた。私もここで人権分野を中心に国際法を勉強したのだが、とても充実した「学び」の環境に浴することができたように思う。教授陣は世界各地から集まった著名な国際法の学者からなり、実務の場で経験を積まれた先生もおられた。講義の外では、各国大使や外交官からお話を伺ったり、国連職員が集うパーティーに出席させてもらったりと、国際政治・司法のフルコースをご馳走になったようなぜいたくな1年だった。

ライデン市内のカフェで法学部のクラスメートと一緒に(右から5番目が筆者)

日本との関係が深いライデン市と大学

 私の留学のもう一つの目的は、日蘭交流の軌跡をたどることだ。ライデン大学は日本とのゆかりが深いことでも知られている。江戸時代末期、オランダに派遣された幕府留学生のうち、西周と津田真道がここで法学と政治学を学んだ。またライデンは日本を離れたシーボルトが、晩年日本研究に取り組んだところでもある。日蘭交流の足跡は大学の施設のみならず、ライデン市内の随所に残されていた。市内の博物館には膨大な日本関係のコレクションが収められており、町を歩いていても、広場に日の丸が掲げられていたり、芭蕉の句が建物の壁面に書かれていたりと、ただならぬ日本との関係をうかがい知ることができる。

ライデン大学日本学科の学生と留学仲間と(筆者は前列右)

日本学を専攻する学生たちとの交流

 シーボルトを建学の祖として仰ぐライデン大学日本学科は、世界でも指折りの日本学研究機関だ。先生方は第一線で活躍する研究者だが、同時に大変刺激的な授業を展開されていた。私は時間を見つけては、頻繁にこの日本学科の授業を聴講し、日本の文化や歴史についての新たな知見を得た。一方で、日本学を専攻する学生たちとの交流もあった。普段、法学部で知り合う学生のほとんどが留学生であったため、オランダ文化に親しむことができたのは、彼らのおかげだ。休日に、実家に招いてもらったり、聖ニコラス祭や女王祭と言ったお祭りを一緒に祝ったりと、忘れがたい思い出がたくさんある。

オランダと日本の若者の交流の活性化を

 空前の日本ブームに沸くヨーロッパ。ライデン大学にも、日本学を志す学生がオランダ中から集う。日本への留学を希望する者は少なくないが、派遣人数や奨学金などの制約のためにその希望には十分に応えられていないのが現状だ。私は若者を中心にオランダと日本の交流を活発にする試みを考えている。互いの国の文化や社会を知るようなイベントを企画し、留学や就労、インターンシップを支援するなど、そこには様々な可能性があるように思う。オランダでの素晴らしい出会いや経験を得たことに感謝の念を深めつつ、日蘭交流のさらなる発展のために力を尽くしたい。

(提供:早稲田ウィークリー