早稲田大学の教育・研究・文化を発信 WASEDA ONLINE

RSS

読売新聞オンライン

ホーム > 教育 > スタディ・アブロード―世界から早稲田へ―

教育

▼スタディ・アブロード―世界から早稲田へ―

Charles Bourgault

From France to Waseda

Charles Bourgault/別科日本語専修課程修了(2007年)

有機栽培の農家でのボランティア活動

 来日する前に1年間日本語を学んでいたので、早稲田に留学した時にはすでに日本語の基礎能力は備わっていた。「でも日本語は難しいですね。とくに漢字を覚えるのが大変です」と苦笑する。それでも別科日本語専修課程で週に20時間ほど集中的に日本語を学んだおかげで、日常会話はかなり上達したという。

生まれはル・マンだが、10歳から湖のある風光明媚なアネシーで育った

 なぜ日本へ?という質問には、「西洋とは全く異なる文化に接してみたかった」と説明する。シャルルさん本人は、日本に留学することに何の抵抗もなかったというが、さすがにご両親は「遠すぎる」、「時差がある」と当初は反対していたらしい。「でも日本に来て、言葉を学ぶ以外にも大きな収穫もあったんですよ」と身を乗り出して楽しそうに話す。

 「四国で1週間ほどですが有機農業のボランティアを経験したんです」。これはWWOOF(Willing Workers On Organic Farms)というイギリスで発祥した活動で、有機農場でしばらく手伝いをしながら、その国の文化や生活習慣を体験し、有機農業の普及を進めたい農家を支援するという国際的な活動だ。ボランティア期間中の滞在費は無料。日本も含め、世界各国に非営利団体であるWWOOFの組織本部があるという。「日本の小規模農業も体験できましたし、いい友だちもできました。ついでに四国でお遍路さんもしてきました」

日本と異なるフランスの大学制度

 母国フランスでは、名門のパリ政治学院(Institut d'Etudes Politiques de Paris/略称Science-Po)で学んでいる。同国には、いわゆる一般の国立大学と、グランゼコールと呼ばれるエリート養成専門学校がある。前者は入試もなく、授業料は無料。18歳で受験する共通試験「バカロレア」の成績で入学できる大学が決まる。一方、グランゼコールは、入学時の成績のハードルも高く、卒業するのも非常に難しい。それに授業料もかなり高い。「日本の私立大学のようなものです。でも早稲田と違って、定員も1,000人規模と小さく、授業も難しいですね。僕は大学院に進んで法律を学び、EU全土を舞台に働きたいと思っています」

CPE反対のデモにも参加

CPE反対のデモの模様。警察が築いたバリケードの近くで

 今やフランスの高校生の70~80%は大学に進学するが、大学を出てもなかなか就職先が見つからないという。「20~25歳の失業率は、20%を超えています。事態はかなり深刻で、僕もCPE(初期雇用計画)に反対するデモに参加しました」。このCPEとは、日本でもかなり報道されたが、若年層の失業問題の改善を目的に、企業が26歳未満の労働者を雇用する場合に2年間の「試用期間」を置くことを認め、その期間内であれば理由なしの解雇を認めるというもの。デモは約1年間続き、パリを皮切りにフランス全土まで広がり、結局、2007年4月にCPEは事実上、撤回された。

 「EUになって、身分証明書だけで域内を自由に旅することができるようになり便利になりましたが、職を求めての移民や不法滞在者が増え、フランスでも大きな社会問題になっています」。ヨーロッパの情勢が、国境が海である日本とはかなり事情が違うことを、留学中に実感したというシャルルさん。「日本で過ごした時間は、僕にとってかけがいのないものになりました」と、帰り際に笑顔で話してくれた。

(提供:早稲田ウィークリー