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日本女子ショートトラックの星
強い気持ちが、勝負を決める!

桜井 美馬/スポーツ科学部3年

 1周111.12mの小さなトラックで、4~6人の選手がレースを展開するショートトラック。タイムではなく着順で勝敗が決まることから、“氷上の競輪”と言われている。抜いたり抜かれたり、転倒したり、最後まで何が起こるか分からず、ハラハラ、ドキドキ。同じ氷上スポーツのフィギュアスケート等に比べればあまりなじみがないかもしれないが、一度観戦すれば夢中になる人が多いのではないだろうか。

 その面白さに魅せられ、なんと6歳のときからショートトラック一筋の人生を歩んできたのが、桜井美馬さん。日本女子のエースとして、世界中で活躍している。

取材中はこのビバスマイル

 「ショートトラックの一番の魅力は、“かけひき”なんです」といたずらっぽく笑う。「抜くのが苦手な選手は最初から先頭を走りますが、風の抵抗を受けて体力を使います。私は中盤にポジション取りをして、ちょっとした隙間を利用して抜くことが多いです」。抜く瞬間にコツはあるのかという質問には、「頭で考える前に体が反応しているので、説明しにくいですね」とのこと。小さいときからの努力の積み重ねがトップアスリートとして天性の勘を育んだのだろう。「人混みを歩くときは前を歩いている人の動きを読みながら、ついつい追い越してしまいますね」。日常生活でも常に競技中のシーンをイメージしてしまうという。

 数々のタイトルを持つ桜井さんだが、常に勝ち続けてきたわけではない。「高校3年で日本一になって、翌年に連覇できなかったときは、初めて悔しさを味わいました」。しかし、スランプのときも、しっかり自分に向き合い、技術だけでなくメンタルも鍛えてきた。最初はうまく関係が築けなかった韓国人のコーチとも言葉の壁や価値観の違いを乗り越え、積極的にコミュニケーションをとって、心を通わせた。自分とも他人ともポジティブに真正面から向き合う。それが桜井さんの強さを生み出している。「ショートトラックの勝負を決めるのは、最終的には気持ちの強さ。もっと言うと、周りに振り回されずに、自分が一番! と思えると強いんです。このままこの競技を続けて、性格が悪くなったらどうしよう…」。いえいえ、今のところそんな心配は一切無用だ。むしろ、少し話しただけでも、周囲に気配りができる気立ての良さ。心の奥に秘めた芯の強さを隠すことはできないが、それは桜井さんを輝かせる魅力の一つだ。

 合宿や遠征が多く、スケートと大学の両立は大変だ。それでも本学に進学したのは、一流のスポーツ選手が多く在籍し、刺激をもらえると思ったから。キャンパスでは、同世代のアスリートたちと近況を報告し合い、モチベーションを高めあっている。悩みの腰痛を研究しようと、ゼミはスポーツ医学を専攻した。「身近に強い選手がいる早稲田の環境は励みになります。スケートのためになることをしっかり学びたい」。

 2010年には、子供のころからの夢だったオリンピックに出場した。しかし、バンクーバーはあくまで通過点。「次回は、余裕を持って臨みたい」と頼もしい一言をくれた。「私が世界で活躍すれば、ショートトラックの面白さをもっと多くの人に知ってもらえる。頑張って結果を出したいです!」。そこにあるのは、かけひきとは無縁な“スケートが好き”という一途な思いだけだ。

勝負を決めるのは絶対に勝ちたいというメンタルだ

ゴールの瞬間、安堵の表情

ロンドンでは頂上へ!

(提供:早稲田ウィークリー

桜井 美馬(さくらい・びば)/スポーツ科学部3年

1989年大阪府生まれ。武蔵野高等学校卒業。スポーツ科学部3年。6歳のときに、スケート教室でスカウトされ、ショートトラックを始める。日本女子のエースとして期待され、2010年のバンクーバーオリンピックにも出場。「美馬」という名前は、馬が好きなおじいさんが名付けたもの。子どものころは珍しい名前があまり好きではなかったが、世界で活躍するようになってからは、すぐに名前を覚えてもらえるので気に入っている。気分転換するなら買い物と映画。元気になれるラブコメディが好き。最近はまっているのは、ピラティス。今年の目標は、「腹筋割ります!」。