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留学生と日本人学生をつなぐ仕組み 「Watashi-Waseda-World」で総長賞!
黒田 千滉(くろだ・ちひろ)/W3 ~W-Cubed~ (ダブルキューブド)代表 国際教養学部 4年
2017.6.13
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全ては実現のため。『総長賞』しか考えていませんでした
早稲田大学の中長期ビジョン「Waseda Vision 150」の中から、学生が自由にテーマを選び、大学側へ具体的な施策を提案する「Waseda Vision 150 Student Competiton」。5回目となる2016年度は、32チームがエントリーし、8チームが決勝大会に進みました。その中で、論理的なプレゼンテーションを展開し、金賞(総長賞)を受賞した「W3 ~W-Cubed~」。黒田千滉さん(国際教養学部 4年)、倉林鮎子さん(国際教養学部 4年)、ヨアキム・エリック・グッナル・ラーソンさん(国際教養学部 4年)、イ・ヨンアさん(教育学部 4年)の4人のメンバーの代表である黒田さんに、提案内容や大会への思い、ご自身の今後について話を伺いました。
――まず、「Watashi-Waseda-World」の内容を教えてください。
4人の思いが詰まった「W-Class」と「W-Mentor」の提案が評価され、32チームの頂点に!
早稲田(Waseda)をプラットホームに、学生一人一人(Watashi)と世界(World)を密接につなぐため、「W-Class」と「W-Mentor」の二つを提案しました。
「W-Class」は、学部・国籍に関係なく、日本人学生と留学生が一緒に受ける必須授業。日本人の1年生と来日したばかりの留学生によってクラス編成する、ゼミ形式の授業です。最初は、ジェスチャーなどを使って交流しながら、ディスカッションを通じて多様な価値観を理解します。最終的にはPV(プロモーションビデオ)制作や商品企画など、学生一人一人が強みを生かして、チーム内で主体的に考え、行動する力を身に付けます。
「W-Mentor」の目的は、日本に頼れる人がいない留学生のサポートを日本人学生(メンター)が行うことと、日本人学生と留学生の長期的な交友関係を築くことです。来日前の6月から、日本人学生と留学生が連絡を取り始めるのがポイントです。実はこれは、チームメンバーの倉林さんの経験が基になっています。倉林さんがアメリカへ留学した際、大学の寮に入れず、メンターの学生にアパート探しを手伝ってもらい、とても心強かったようで、早稲田大学にもその制度を取り入れたいと考えていたそうです。
――「W-Class」と、「W-Mentor」を提案した背景は?
早稲田大学は、留学生の在籍数が国内No.1で、「グローバルリーダーとなる人材育成」を目指しています。でも、本当に日本人と留学生が密接に関わっているでしょうか? 国際教養学部の授業ですら、留学生と議論を交わすことは少ないのが現状です。そこで、520人の早大生にアンケートを実施したところ、日本人とほとんど話をしない留学生や、留学生と話したことがない日本人学生が多数いました。早稲田にはICC(異文化交流センター)のイベントなど、交流の機会はたくさんあります。それでも交流が少ない理由を聞くと、お互いに話したいと思っているけれど「ちょっと怖いな」「同じ国の人といる方が楽だな」という気持ちから、前に一歩踏み出せないということが分かりました。双方の間に「心理的な壁」があると感じ、その壁を超える仕組み作りが必要だと考えました。
――大変だったことは何ですか。
一番大変だったのは時間です。2次予選のビデオ提出の際は、10分という限られた時間内に提案内容をまとめるのに試行錯誤しました。3月の決勝大会の前は、ゼミに加えて就活も始まり、全員で集まる時間がなかなか取れず、夜中にSkypeなどを使用して話し合うこともしばしばでした。メンバーはそれぞれ意見を主張するタイプなので、一つにまとめるのも大変でした。譲れない考えがあれば、メンバーに対してプレゼンし、全員が納得できた部分を採用するといった方法も取りました。時間はかかりましたが、丁寧に進めたことが、メンバー全員の総長賞への思いを強くし、実際にこのような結果を導いたのだと思います。
2017年3月13日(月)に、「小野記念講堂」で行われた決勝大会
――学生が大学運営に参画できる「Waseda Vision 150 Student Competiton」をどのように思いますか。
大学の運営に、学生目線の意見を取り入れるのはとても有効だと思います。学生にとっても貴重な機会です。例えばゼミなどで考えを提案する機会はあっても、それを実現までもっていくのは限界があるので、大学の協力は大きいです。また、提案止まりではなく実現するとなると、実際に導入されたときのことまで想像力を働かせなければいけませんし、提案内容もより濃くなります。
私たちは、最初から総長賞しか考えていませんでした。総長賞を受賞すれば、「提案」が「実現」になるからです。そこで、実現した後のことを大事に考えました。「W-Class」では実際のシラバスを作成し、「W-Mentor」では運用のタイムスケジュールを作り、メンターとなりうる学生の数も細かく計算し、導入可能と結論付けました。「Waseda Vision 150」も全員で読み込み、アンケートの回収数にもこだわりました。提案だけだったらここまでしなかったと思います。
――総長賞を取ったことで成長できたと思うことは? 現在就活中ということですが、将来はどのような道に進みたいですか。
「学生時代に頑張ったことは何ですか?」と聞かれたら、留学より何より「Waseda Vision 150 Student Competiton」に参加し、目標通り、総長賞を受賞したことを挙げます。早稲田での私の集大成だと思っています。優勝に向かって自ら動くことができましたし、チーム内で相反する意見を否定せず、受け入れることで、イノベーティブな力が生まれることを身をもって感じることもできました。社会人になっても、違う業界や、海外や地方と関わって成長し続けたいです。あとは、プレゼンテーションを通じて、人に論理的に訴え掛けること、自信を持って堂々と伝えることができるようになりました。人に何かを伝えることがとても楽しいと思えたことも、今回の取り組みの成果だと思います。大学では統計分析を勉強しているので、社会人になったら、本当に人が必要としているものを提案できる人になりたいと思います。
「W3 ~W-Cubed~ (ダブルキューブド)」のメンバー。左から黒田さん、イ・ヨンアさん、倉林鮎子さん、ヨアキム・エリック・グッナル・ラーソンさん(「総長招待 学生の集い」にて)
目標であった「総長賞」を受賞!
――今回の提案が実現するのは卒業した後になりますね。どんなことに期待しますか。
留学したアメリカのケンタッキー大学では、毎日現地の学生と話し、友情を深めた
この提案によって、日本人と留学生が楽しい学生生活を送ること、そして学生が目標に向かって一歩踏み出すパワーや自信につながるといいなと思っています。それは国際交流だけではなく、何かやるかやらないか迷ったときに、ひるむのではなくやるという選択をすることです。
早大生には、熱い情熱があります。私は、泥臭い情熱や人間臭さみたいなことが個人的に好きなんです。今回発表している仲間たちを見ても、熱い魂を持って自分たちの思いをぶつけていました。そんな情熱が自然と育つ大学は素敵だなと思います。
(提供:早稲田ウィークリー)
黒田 千滉(くろだ・ちひろ)/W3 ~W-Cubed~ (ダブルキューブド)代表 国際教養学部 4年
【プロフィール】
東京都出身。女子学院高等学校卒業。チーム名の「W3 ~W-Cubed~」は、「Watashi-Waseda-World」の頭文字から取った。国際教養学部のプログラムで1年間アメリカのケンタッキー大学へ留学し、早稲田大学から同大への派遣留学第1号として実績を作った。ゼミでは統計データ分析を学び、好きな授業は第二外国語で受講した中国語と語る。メンバーの倉林さんは、学部もサークル(公認サークル「Waseda Inernational Festival(W.I.F)」)も同じ友人。