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教育

▼こんな授業! どんなゼミ?

Acoustics and Auditory Phonetics
「百見は一聞にしかず」の音声学

フィリッポワ・タチアナ/日本語教育研究センター 別科日本語専修課程
吉澤 佑未/国際教養学部4年

 この授業では、物理的な音や音響のしくみ、身体の発声器官、音の単位などと言った初歩的な知識の復習をすると共に、主にPraatというプログラムを使用して、コンピューター上に音波やスペクトログラムとして表れる言語の音の特徴や分析方法を学んでいる。

 受講しているのは言語学に興味のある学生がほとんどで、少人数の講義で雰囲気がとても良いのがこの講義の特徴である。国際教養のほかの授業と同様、授業は英語で行っており、事前に音韻論等の講義を受講していることが前提となっている。近藤先生は音声学を専門とされているせいか、とてもはっきりとした綺麗な声で講義を進められ、見やすい図や演習のおかげで、授業の難易度よりもかなり理解し易い授業になっている。また、指定の教科書がないこともこの講義の特徴である。先生が用意したハンドアウトから幅広い基礎的な知識が得られる。その中の特別なテーマに興味を持ったら、参考書のリストから適当なものを選んで知識を深めることができる。ハンドアウトの難解な専門用語には和訳もついており、そこに先生の優しさが見受けられる。不明なところがあれば、日本語も交えて説明され、日本語の本も勧めてもらえる。これこそが国際教養で日本人教授から英語で教わる利点である。何故なら英語で勉強・研究を進めていく学部だからといって、自分の専門を母語で語る事ができない、という訳にはいかないからだ。

 スペクトログラムとは音波を解読し、音の周波数や強さなどを時間軸のグラフに表し、音の物理的情報を目で見て分かりやすく表したもので、そのパターンからその発話者の性別・年齢・母語、発話の内容等を読み解くことができる。よって、医学や音楽、警察の声紋調査や外国語学習者の発音矯正にも使われている。講義は実践的な録音や実験のデータ分析・研究方法の話にも及ぶ。コンピューターの発達以前は物理や数学の知識をかなり要した分野だが、最近はインターネット上から無料でソフトをダウンロードすることで誰でも簡単に自分の声を分析することができる。自分の声を録音し、音波がスペクトログラムとして表れた時にはなんとも言えぬ嬉しさがあった。「百見は一聞にしかず」と言われている音声学だが、やはり目で見て確認することで明らかになる情報も多々ある。技術が進歩すると共に発展してきた分野だけに、今後さまざまな分野や問題に応用できる可能性が期待される。

(提供:早稲田ウィークリー